魔導の真髄
ーーーーーーーーテューンーーーーーーーー
「フリージア、敵は鳥型の魔物だ!囲まれてる!」
「とにかく赤い光の正体を掴みたい。予定通りにいくよ!」
フリージアの手から閃光が走り、空中で弾け眩い光を解き放った。
そして、私の目が群がる鳥の魔物をはっきりと捉えた。だが、目的は赤い光の正体を探ること。先程目撃した地点を中心に目を走らせる。
光の魔術が消え去る瞬間、それを見つけた。
小さい、とても小さな生物のようなものだったが、あれがドロテアの作品であることは一目で理解できた。見てくれは小鳥だが、顔は苦しみ悶えた人間の造形をしていて、見るからに異様な姿だった。その目が赤く光っていて、空を飛んで移動していた。
「捉えたよ!」
認識を共通のものにしたのも束の間、より一層高い鳴き声を上げて魔物の群れが襲いかかってくる。
その一匹一匹を剣で切り落とし、あるいは振り払いながら突き落とされないようにしっかりと足場を踏みしめる。フリージアも接近してくる敵に目掛けて魔術を連続で発動させる。その淀みない動きは魔物を全く寄せ付けない。
私も吸血鬼になってから身体能力が向上している。かつての私なら物量で押されたであろう場面でも踏み止まることができた。
「埒があかない!」
「相手にしてる時間ないよ!賭けにでる!もう一度光を放つから、あの赤いやつをまた見つけて!」
「……わかった!」
あの赤いやつを倒してこの襲撃がやむ確証はあるのか、見つけたところで射線をほぼ遮られている中確実に仕留められる方法があるのか、様々な問いが頭を巡ったが、私はその全てを振り払い、フリージアの言葉に従った。
どの道そうするしか方法がない。それにドロテアのてがけた作品である以上なんらかの意図があるはずだ。それに賭けるしかない。
「いくよ!」
フリージアの合図とともに神経を張り巡らせる。閃光が走り、少し離れたところから光が全体に広がっていく。私は目が慣れるのを待ってすぐさまあの影を追った。だが、見つからない。飛翔する敵と応戦しながら無数の敵の向こう側を探す。先程とは比べものにならない難易度に私は焦りを募らせる。
どこだ。どこにいる?
ここを駆け抜けてあの祭壇へ向かうことも可能だ。だけど、フリージアはその可能性すら示唆しなかった。聡い彼女がそこに頭を回さないわけがない。そもそも選択肢に入れなかったのだ。後ろにいる下級冒険者たちに死の危険が及ばないように当たり前にフリージアは判断した。
私はその姿勢に私は感銘を受けた。だから、なんとしても私たちでこいつらを倒さねばならない。
「テューン!」
「だめだ! もう少しだけ待ってくれ!」
光の魔術が一回目よりも長く空中に留まっている。自分の手から離れた光を維持するのは相当の集中力が必要のはずだ。この世界の魔術は持続性に乏しい。私が見つけるしかない。
悪態をつきたい感情を抑え、冷静さを取り戻すために呼吸を整える。だか、見つからない。段々と光が弱まっていくのがわかった。焦る気持ちに拍車がかかる。
早く、早くみつけないと!
そこに、ふと一匹だけ他とは違う動きをしている魔物に目が止まった。猛然と迫る魔物たちに比べ、その羽はゆったりと羽ばたいていて私たちと一定の距離を保っている。その魔物の背中に……。
「いたぞ!左前方高めの位置!一匹だけ横移動してる魔物の背中の上だ!」
「オッケー、確認したよ!それじゃー、名誉挽回といこっか!」
フリージアは目視した瞬間、拳と拳を合わせ目標めがけて跳躍した。その予想外の行動に私は目を見開いた。普通の魔術師は接近戦をしない。だが、フリージアは違った。認識はすぐに改められた。彼女の本当の得意な戦闘距離は近接なのだと。




