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異世界不死者と六人の弟子  作者: かに
第二章 天空城の住人と王家のダンジョン
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闇に潜むもの

――――――――テューン――――――――


 「この先は多層構造になってる! 足場が非常にわりぃからずり落ちるんじゃねえぞ?」


 ジョルジュの言ったとおり私たちが進んだ先の道は今までの道とは違い、あまり人が踏み入った形跡がなく地面がでこぼことしていてそこらじゅうに穴があった。さきほどのドロテアが鎮座していた空間より狭く奥行きがある道だ。灯りがカンテラしかないため慎重に先を確認しながら進む必要があった。


 「おい、もしかしてここ……」

 「あんましわしも探索したことがないとこだ。こんな危険なとこより安全性が確保された場所が他にあるんでな」

 「そういうことだとおもったよ!」


 所詮は国の事業でやっていることだ。一定の収益さえあげられればリスクを冒す意味などないに等しい。このダンジョンにはそれほどのうまみがある。この場所も一度か二度調査した程度で細部まで調べ上げてはないのだろう。

 足場の悪さと所々に空いている穴も相まって、私たちはもたつくことを余儀なくされた。

 負傷したフリージアはディランが背負っている。あの短時間で傷口はすっかり塞がっていて、むしろ貫かれた痕跡が残っていないほどキレイだった。それでも、彼女が目覚めていないのは生死を彷徨う怪我を負ったせいか、それとも流れ出た血を補えるだけの血を満足に供給できてないせいか。

 ソフィアがトモエの治癒術師の師匠となってまず初めに教えたのは、製血術という血を魔力で生成する治癒魔術だった。

 彼女の持論では、どんなに高度な技術を持っていても相手が死んでいたら意味がない、とのことだ。治癒魔術はただ治癒するだけではなく、延命の方法にも長けている。そう、錬金術でも魔術でも、最高峰にあたる治癒魔術でも、ただヒールしただけでは大量に流れた血は戻ってこないのだ。

 だからこそ、彼女の治癒魔術は傷を治すと同時に血を与える。魔術によって体を綺麗にすることができても、血がなければそのまま死に至ることもあるらしい。正直言って目から鱗だった。冒険者の一般常識ではそういう時、間に合わなかったと割り切ってしまうものだから。

 腹に穴が開いてドバドバと血を垂れ流していた時よりも血色がよくなったフリージアの顔を見て、私はまだ彼女の生存に希望をもった。

 だが、ほんの僅かな安堵も許されなかった。

 暗闇の向こうから風を切る音がする。それも一つじゃない。その一つが私の耳をかすめた。それが何なのか把握する前に敵の攻撃だと理解する。空中を蛇のようにうねりながら走るそれは、化け物に改造されたオオカミの眼孔から生えていたあの触手だった。ただ、先に付いているものが目玉ではなく、硬く鋭利なものに変わっていた。


「次から次へと……!」

 

ソフィアが光の魔術を唱えた。彼女は基本的に治癒魔術しか使えないはずだから、これも治癒魔術の応用なのだろう。

ゆらゆらと揺らめくその光がゆっくりと闇に潜むものを照らし出す。盾のようなものを背負った小男が天井にへばりついていた。


「亀……?」


トモエの口から聞いたこともない生物の名前が出る。姿形はわからないがあれそっくりなんだろう。亀と呼ばれたそれの盾の部分が割れ、その隙間から七、八本の触手が伸びてきた。

そして、瞬間。


「あっ……」


予想を遥かに上回る速度で飛んできたその触手の先端がソフィアの胸元に突き刺さった。崩れ落ちるソフィアを支えようと手を伸ばすが、その手は触手によってズタズタに切り裂かれた。そして、ソフィアは穴の一つに吸い込まれていった。

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