68/68
It’s alright
曇り空。
もうすぐ雨が降るかもしれない。
車窓から外を見ていると、頬を撫でられた。
鬱陶しくない。むしろ嬉しい。
「迎えに来なくていいって言ったけどな。」
「用があったんだよ。」
僕は肩をすくめた。
「まあ、ありがとう。」
景は微笑んだ。穏やかな安心感が僕の胸の内にわいてくる。全身にじわじわ広がり手足が麻痺していくみたいな感覚だ。なんだか照れ臭くなって前を向いた。ふと口をついて出た。
「このままどこか行かない?」
「どこに?」
「...さあ?なにも考えてないけど。」
「けど?」
「2人でゆっくりしたいんだよ。」
「いいね。近いうちに行こう。」
「うん。」
僕は約束をする。はじめは寂しくないようにしたかったからだ。死にたくなくなるように。もちろん自分ではもう死にたいとは考えてはいない。でも僕は心配症だから。いつかこの日々を失うのではないかと恐れてしまう。
「楽しみだね。」
そう。きっと全てうまくいく。
そうすれば幸せになる。
景と。
僕は目を閉じて、静かな運転に身を任せた。




