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ダンジョンの魔物使い  作者: 佐藤龍
第二章 林間学校と災厄
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14話 『オーク』

 オーク達が灰に気づいたのは、距離にして二百メートル弱。歩いてくる灰の姿を認識したからだ。

 もしこの距離を縮めるために走るとすれば、常に全力で走ったとして二十秒ほど。だがここはダンジョン、その時間は短縮できる。

 

 既に交戦距離に入ったにも関わらず、灰は歩いたまま。敵を見据えていた。

 

「ヤークト、最初からONE FOR ALLを使う。暴れろ」


 了解、と言うように短く吠えたヤークトが迂回していく。それに数体のオークの視線が釣られていくのが見える。

 オークは数にして十一体ほど。そして、ハイオークが一体の編成。数では明らかに負けている。連携、そしてリベレッサが勝利の鍵だ。

 

 木々の上に立つエルフにも助力を求めたい所だが、魔物は他にもいる。そちらで手一杯だろう。手伝ってくれたら嬉しいが。

 

「さて、行きますか。スラ参、準備はどう? いける?」


 盾に貼り付くスラ参が一本の触手を伸ばすと、サムズアップした。いつでもいけるぜ、と教えてくれるスラ参に灰の顔が綻ぶ。

 

「そう。じゃ、始めようか。『ONE FOR ALL』」


 灰はスキルを発動した。

 鉛でも身に着けているかのように身体が重くなる。それでも、動けない訳ではない。戦えない訳ではない。

 

「さあ、行こう!」




 灰とオークの戦いが始まった。

 一人と一匹、対して相手のオークの数は十一体。ハイオークは戦わず、後方で観察している。明らかに、相手の力量を図ろうとしているのだろう。

 後ろに位置するリベレッサが出来ることはただ一つ、援護だけ。灰とオークの戦いは、互いの距離が零になった時ではない。

 

 敵だと認識した時から始まる。灰が走ったと同時、リベレッサは弓を番え、放った。

 走る灰の隣を通り過ぎた矢は、まっすぐにオークの心臓、魔石のある所に吸い込まれる。魔石は魔物の心臓。

 砕かれれば、強力な魔物だろうと身体を維持することが出来ず倒れる。心臓を撃ち抜かれたオークは、どさりと地面に崩れ落ちる。

 

「まずは一体」


 オークを倒した事で、倒したという余韻にリベレッサは浸からず次のオークを仕留めようと動く。

 二発目の矢を番えている時、オークの集団は魔石を撃ち抜かれ、倒れたオークを見ていた。

 先程まで動いていた仲間、それが一瞬にして殺された。思い浮かぶのは憎しみ、ではなく敵と戦えるという単純な戦闘意欲のみ。

 

 ただ戦いたい。そして、相手を凌辱したいという欲望のみ。仲間のオークが倒れた事で、彼らはスイッチが入ったかのように灰に向かって走り出した。

 互いが走った事で、距離は一瞬にして詰まり交戦する。

 オークの武器は木の幹で出来たこん棒。その場にある物を折る、拾っただけの武器で、それは武器と呼べるものではない。

 

 だが、原始時代に遡ればそれはれっきとした武器であり、そんな原始的な武器が灰を襲う。

 人であるならまだしも、魔物が持つ事で原始的な武器でもその脅威は何倍にも跳ね上がる。一撃でも受ければ骨が折れると、錯覚するほどにこん棒の速度は早い。


 それは灰のスキル『ONE FOR ALL』を行使した事で、動体視力が落ちたせいかもしれない。ただ、灰はそれでも難なく避ける。

 一体の攻撃を避け続ける灰だが、オークは一体だけではない。二体三体と灰に対しての攻勢が増していく。

 それでも灰は避け続けられた。避ける事が出来たのは、真由との特訓があったからだ。

 

 オオサンショウウオの魔物を倒した後、灰は真由と特訓を行った。実戦形式で行われたそれは、容赦なく灰を襲う。

 彼女のスキルで無数に生み出された銃から全方位に放たれる銃弾を避けないといけないのだ。

 それに比べれば、オークの攻撃は風に等しい。もし当たったとしても、スラ参がカバーをしてくれる。

 

 ただ、常に避け続けても戦いは勝利することが出来ないため、灰は時折避けつつ余裕があるときは切りつけた。その傷は非常に浅く、肌の表面しか斬れていない。

 そんな浅い傷でも、傷は傷だ。オークは灰に攻撃が当たらない事に対して、苛立ちが募る一方だ。

 

 さらに苛立ちが膨れ上がる要因が、一つあった。スラ参だ。灰が避け続ける間、スラ参は何もしていない訳ではない。

 灰が避けれるようにと、妨害行動を取っていた。オークの顔に溶解液を吐き出したり、こん棒を受け止めたり、それを別のオークに当てたり。

 

 お蔭で十体のオークに灰は大立ち回りをする事が出来ていた。その大立ち回りも、すぐに終わっていたのだが。

 今まで、灰が時間を稼ぐ間はヤークトが戦っていた。この戦法も弱点があり、ヤークトに注意が向いてしまう事だ。

 しかし今はリベレッサが、いる。灰が時間を稼いですぐ、リベレッサの援護射撃がオークの集団を襲った。

 

 互いがまるで競争でもするように、ヤークトとリベレッサのお蔭でオークの数は見る見る内に減っていき、残りは一体となる。

 最期に残ったオークは、渾身の一振りで灰を攻めたがそれに合わせた灰のカウンターで首を斬り裂かれ、血を吹き出すことなく倒れた。

 

 灰の目の前にはオークの死体が広がっており、奥にはハイオークがいる。獰猛な笑みを浮かべるハイオークに、灰は剣先を突き立てる。

 

「後はお前だけだ、豚野郎」

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