13話 『森の奥に眠るもの』
今日で二回目の投稿です。一回目の投稿を見ていないなら、前話をお読みください
あれから何度か魔物と戦闘をして、ようやく奥地にたどり着いた。
体感時間にして一時間以上はかかっている。もしかしたら、二時間も経っているかもしれない。やっとたどり着いたという解放感から、今までの苦労が吹き飛んだような気分になる。
だが、目の前の光景を見てしまえば灰は驚きのあまり開いた口が閉じない。
森の奥はかなりの広く、広場に位置する部分は木々は生えていない。外周部に木々が大木と呼べるほどに成長しており、天を覆い隠すほどだ。
しかし、不思議と昼間のように明るい。木々が成長し、天を覆い隠して日の光を防いでいるというのに。
森の最奥、広場を抜けた先にあるのは、石の壁だ。一面に広がる石の壁はこの森の中での異物感があり、その壁には魔法陣のような模様が大きく描かれている。
その模様は竜の顔のようにも見え、あれがリベレッサの言う封印なのだろうと察した。
石の壁は所々にヒビが入っており、そのヒビの隙間から瘴気のようなものが漏れ出している。あれが魔物を強くしている根源だというのが、見て理解する。
リベレッサが、エルフが倒さずに封印するという事も灰は納得した。
石の壁を見た瞬間、灰は存在感とでもいうべきか、プレッシャーというべきか、何か重圧を感じた。似たものを一度、灰は感じていた。それは四階層で戦ったオオサンショウウオの魔物と最初に出会った時。
その魔物を思い浮かべた時、灰は真由の言葉を思い出す。
どうしてネームドが強い魔物に狙われるのか、戦うのか質問した時、彼女は灰にもう戦う運命なのよ、とまるで言い聞かせるように教えてくれた。
オオサンショウウオの魔物との戦いが終わり、当分は平和だ。そう思っていたのだが、まさかこうも早く訪れる事を灰は予想していなかった。
来てしまったものは仕方がない。戦うしかない、と意識を切り替えてもう一度広間の方を見ると、丁度魔物が現れた。
ゴブリンやオークの混成が森の奥、石の壁を狙って進むが木々の上に乗るエルフ達が弓や精霊魔法を使って倒している。
「あれは何を?」
「魔物達は石の壁を目指してるの。正確には瘴気なんだけど。その瘴気を多く取り込もうと、石の壁を壊そうとするからそれを防いでいるだけ。もしも防げなかったら、封印が壊れちゃうから」
あの瘴気は魔物の餌なのだ。それに釣られてのこのこ現れた魔物は餌欲しさに石の壁を壊し、そして封印がなくなると。封印された魔物は、それを狙ってやっているのか、少し気になる所だ。
普通、封印されれば何も出来ないはず。だが、中から魔物の餌である瘴気を流しているという事は、封印がなくなりかけ、自由に動くことが出来る証拠なのではないだろうか。
灰が思考に耽っていたが、それが現れた事で意識を戻した。
新しく魔物が現れたのだが、先程とは気迫というものが違っている。
出てきたのは、オークだ。豚が人のように二足歩行している魔物だ。ピンク色じみた肌で人と同じほど高さに、丸々に太った腹。右手には根本から折れた、人の腕の太さと同じくらいの若い木を握っている。
腰は動物の皮を剥いだ物を巻いており、ずんっずんとゆっくり歩いて石の壁に向かって歩いていた。その様は薬を求めて動く中毒者のようだ。
それだけなら問題なかった。オークの集団で一体だけ、明らかに格が違う魔物がいた。
同じオークなのだが、一回り身体が大きい。身体の周りから赤いオーラが流れ、握っている武器である木も、普通のオークのよりも大きく頑丈そうだ。
「あれは……」
「上位種。オークが一段階、進化した姿。私達はハイオークと呼んでる」
憎しむように、怨嗟の声を漏らすように、リベレッサは教えてくれる。よほど、嫌な事があったのだろう。
そう思った時だ、木々から矢の雨がオークの集団に向かって降り注ぐ。
先程までだったら、矢に撃たれてハリセンボンのようになって倒れたのだが、今回のオークは頑丈のようだ。
矢や精霊魔法を浴びても、平然として石の壁に向かっている。
中には持っている武器、木を投擲して攻撃していた。エルフ達が呼称するハイオークも勿論その中に入っており、矢や精霊魔法を使うエルフを見つけると、どの獲物に狙いを付けるか探し、決めたら投擲した。
ハイオークの膂力から放たれた木は、木の質量もあってか車が一般道路を走っているのと同じ速度を出し、一瞬にして青年のエルフに迫る。
狙われたエルフは、警邏を任されてそう歳を取っていない若いエルフだった。故に戦闘経験が不足していることもあってか、矢を撃つ事に集中して、投擲された木に気づくのが遅れた。
仲間のエルフが呼びかけて気づいたが、既に遅い。
射的で当たった標的が落ちるように、投擲した木に当たったエルフは木々から落ちた。
それが遠くからでも見え、さらに灰とリベレッサの目にはもう一つの情報が視界に入る。
落ちるエルフに、オーク達が腹を空かした犬のように群がっているのだ。何をしているのか、言うまでもない。
ハイオークは落ちたエルフを見て、高笑いするように雄たけびを上げている。
落ちたエルフに何が起きているか、考えただけで思わず顔を背けたくなるが、リベレッサは違った。
同胞を失い、怒りで顔が歪んでいる。
「灰、すみませんが付き合ってもらっても良いですか?」
リベレッサが何を言いたいのか、すぐに理解した。確かに、あのまま舐められっぱなしだというのも癇に障る。
「いいですよ、どこまでも付き合いましょう」
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