14 エピローグ
・・・ああ、また暗い。いつものことだ。目を開けているのか閉じているのか、それさえもわからない。
どうなるのかね。これ。
遠くに一点の光が見える。
あら、新しい。たまには変化がなくっちゃやってられないね。
光の方から声がした。
「ドリー、ドリー!、ドーリー!!」
その声を誰が間違えるものか。
「ジェーイーク!」
光の方に向かって駆け出す。
「「ああ、やっと会えた。」」
光の中にいたジェイコブの腕の中に飛び込んだ。
これって何かのトリックかしら。でもこの腕の中から出てなんかやるもんか。
「迎えにきたよ。」
うん、ありがとう。
「随分待ったよ。」
うん、ありがとう。私も待ったよ。
「ずーっと座り込んで待ってると、頭がぼんやりしてくるんだ。」
うん、ごめんね500年も待たしちゃって。
「ぼーっとして、何を待ってるのか忘れちゃうんだよ。」
うん、そうだよね。
「でも、そうなると、いつも誰かが来てくれてね。ドロレスのこと思い出させてくれた。」
うん?
「最初はね、子供達がやって来たよ。ドロレスがどんな暮らしをしてたか、いろいろ話してくれた。でね、あの子たちがまた旅立たなきゃいけなくなった時に、言うんだよ。『父さんたら、私たちに究極の親不孝をさせたんだからね。子供が親より先に行くなんて、ホント親不孝だよね。だからね、父さんはちゃんと母さんが来るまで待ってなきゃだめだよ。』ってね。」
そうか。あの子たちは皆、再び旅立ったのね。元気でやっているかね。
「いろんな人が来てくれたよ。顔に大きな傷がある騎士さんと、髪の毛にいっぱいピンをさした奥さんも来てくれた。」
あはは。モモとモーリスさんだ。モモったら、元の髪型に戻っちゃったのかしら。
「騎士さんがこぼしてたよ。子供4人みんな女の子だったって。しかもみんな魔力持ちだったから、大騒ぎで子育てしたって。」
まあ、魔女先生の孫で、モモの娘だ。多少はね、その可能性があるかと思ったけど、全員かい。そりゃ大変だったろうね。
「メガネの優しい薬師さんが、なんかピンクのふわふわの髪の毛の奥さんとお礼にきてくれたし。」
ハロルドさん、無事奥さんと一緒になれたか。
「奥さんが、『この人が私にばかりかまけているから、娘がすっかり拗ねちゃって。』って、薬師さんを叱ってたね。」
うーん、あれを拗ねると言いますか。
「おかげで、娘さんは、お友達と一緒に、探検家になって、あちこち自由気ままに旅してるそうだよ。『絶対孫は期待できないわよ!』って、薬師さん、なんだか嬉しそうに奥さんに怒られてた。」
あら、ライラさんとアナさんたら・・・国には戻らなかったのね。まあ、いいか。そんな人生も。
「なんだかいっぱいハーレムみたいに女性を引き連れた若い男性にも会ったよ。一緒にきていた子供が、飛び跳ねながら、ドリーと一緒に悪女退治をしたことを教えてくれたんだ。」
ヴァン!私のヴァン!そうかい、タークィン先輩と会えたかい。
「すごいねぇ。僕なんて、ぼんやりしてるばかりだったのに。ドリーったら、色々な人に会って、いろんなことしたんだね。」
私は、ちょっとだけジェイコブの腕の中から顔を出し、得意そうにジェイクの顔を見る。えへへ。
「ジェイクが待っててくれたからだよ。いつの日かジェイクに会える時に、ちゃんと話せる人生を送らなきゃと思ってた。」
ジェイクが私の髪に頬を擦りつけた。
「うん。」
時間はきっとたっぷりある。いざとなったら冥王様に頼み込んで、二人でしばらくここにいさせてもらおう。そんなにすぐに転生なんかしてやるものか。ゆっくりジェイコブと語り合うのだ。私は私のやってきたことを。そして、ジェイコブは私の子供たちがどんな風に生きてきたのか、教えてくれなくちゃ。
きっとそのうち、ラ・ロッシの皆や、トッドとレベッカ様にも会えるだろう。あの子たちはどんな人生を送るのだろう。あのお魚がどうなったかジェイコブに話したら、きっとびっくりするだろうな。
お迎えが来る日まで、子供たちは、きっと皆足掻きながら、それでも精一杯生きていくのだろう。ああ、会える日が楽しみだ。
私はジェイコブの手を取った。指を絡め取る。
「その日まで、いっぱい話をしようね。」
「ああ。」
私たちは遂に共に歩き始めた。
この暗い話を最後まで、諦めずにお読みいただき、誠にありがとうございました。おかん主人公では需要がないのではないか、という心配の中、感想、評価、ブックマーク本当に心の支えになりました。誤字のご指摘、ありがとうございます(きっと現在進行形)すぐに訂正させていただきました。ここで改めてお礼申し上げます。
では、また新しいお話でお目にかかれましたら。今度はちょっと年齢下げよう。うん。