交易商隊
サリーダさんは、キモチワルイけど良い人。
「あのね、ちょっと提案があってね。」
サリーダさんが言い出した。
「今二週間に一度交易に来てもらってるけど、その間そちらでは素材の採取が出来てないでしょう。正直モンスター素材はあまり使われていなかったけど、定期的に入手出来るなら、扱ってみたいっていうお店が出てきたのよね。」
うん。今うちで扱っているのは、ワンオフ専用素材だ。でも、ワイバーンに代表されるような、高級モンスター素材がある。
「特に新進気鋭のデザイナーが何人か、モンスター素材を使った新しいデザインに興味があるみたいで、仕入を頼まれているのよ。」
あら、これは意外。モンスター素材は防具か武器専用だと思ったのに。
「いつも仕入れている角とか牙とか骨とかじゃないの。欲しいのはいろんなモンスターの皮なのよ。」
皮ですと?強度の高いものは防具として人気がありますが。
「最新のファッションショーで、稀少なレインボードラゴンの皮を使ったマントが発表されたのよ。その反響は凄まじく、今ファッション業界ではモンスター素材の皮が注目の的なの。」
「でも、大概のモンスターの皮は、地味な色合いですよ。」
「そこが良いのよ。裏地として合わせるには、シックで丁度いい。表面は毛皮製でも、裏地はモンスター皮製で強度が高いなんて、これからの最高のトレンドになるわよ。」
「なるほど、分かりました。それでは私達は何をすればいいのでしょう。」
「相変わらず飲み込みが早くて手っ取り早いわ。モンスターの皮を集めてきてちょうだい。材質は、何が人気になるかわからないから、とりあえず種類は問わず。解体前なら解体料は頂きます。」
「価格は取り敢えず、委託販売扱いが良いですかね。」
「まー、流石ツグちゃんね。価格の相場が決まったら、高めに仕入れてあげるわよ。でも、品質はよろしくね。」
「採取過程で、品質の低下してしまったものも出ると思います。でも、委託販売ですから、そんな商品も取り扱って下さい。」
「実験的な商売だから、委託販売の間は良いわよ。三カ月後に契約を見直しましょう。ところで、本命はこっちなんだけれど。」
はあ?他にもなんかあるのか?
「商品の輸送を、こちらで担当しようと思うのよ。そちらは精鋭揃いだけど、人数が足りない。こちらには、今西方が安定した分戦力に余裕がある。輸送量も、軍馬を使えば全然多いわ。輸送に人を使わない分、そちらも採取に人手を回せるでしょう。輸送の手数料を払っても、損な話じゃないと思うけど。」
サリーダさん、本当に有能な人だ。まるで提案に文句はない。でもこちらから一つだけ条件がある。
「取引の開始まで、三週間ください。ランプータンで解体の出来る人を探さなきゃいけない。素材も集めて来ないと。なんと言っても、パーティーメンバーの心が回復するまでには、最低三週間かかるでしょう。もちろんその間の分の素材は、今日全部置いていきます。」
「三週間かー、流行は時間との勝負なんだけどね〜。」
「今日置いていける素材には、ベヒモス角以外一式と、マンティコア素材一式が入っていますけど。」
「ななな、なんですと〜〜〜〜。今すぐ一級素材鑑定人に連絡を。急げ、全ての業務より優先よ。ツグさん、こっちの低温倉庫で素体を出して頂戴。」
サリーダさんの人を疑わない所は、こっちもサリーダさんを信じようっていう根拠になってくれるよな。
サリーダさんと、アーサーさんの連絡を着けないと。




