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魔法使いになりました ~酒とケーキの魔法使い~  作者: 鯨七号
第三升 異世界都市スメント
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第69話 ナゴヤを作った理由

 瓦屋根に漆喰の壁。

 遠目から見てはそれがはっきりと分かった。

「こっちの世界でこんな風景を見ることになるとは思ってもみなかった」

 いや、アドにクナイや手裏剣を見せてもらったときに、こちらの世界に古い文化が伝わっている気づくべきだった。

「もしかして、ナゴヤの町も同じように作ってあるのか? それとも元となる名古屋を再現してるとか言わないよな」

「まさか。ナゴヤの外見はマルケアの規模を大きくしただけですね。中身は異世界人の趣味が反映されてどんどん新しくなっていますけどね」

 そりゃそうか。名古屋城やテレビ塔、オアシス21などを再現しても何の意味もないだろうからな。

「しかし、なんでまた新しい町を作ろうと思ったんだ?」

 一か所に集まらなければならないと言う気はないが、わざわざ新しく作る必要性も感じない。

「いろいろ理由があったみたいですけど、その一つはトイレが我慢できなかったことみたいです。ナゴヤの町を作った人たちはボットン便所は我慢ならなかったそうです。水洗式のトイレを作るためには水路を一から作るほうがいいと判断したみたいです」

「詳しいな」

「以前行った時に体験しましたからね。こっちの世界ではスライムに処理させるのが一般的なんですが、スメントは肥料にしているそうですよ」

「ああ、肥溜を作って肥料にしているのか。そりゃあ、臭うし水洗式に慣れた現代人には厳しいな」

「他には、昔からの住人と新しく来た人との相性が悪かったということも大きな理由だったとか。まあ、好んでこの町に来る異世界人もいるので一概には言えないですけどね」

 なるほど、この町に合わない者たちが、自分たちのためにナゴヤの町を作ったというだけのことだったのか。

「さて、そろそろ村に付きますよ。ほら、入り口のところで首を長くして待っている人がいますよ」

「……なるほどな。いきなりスメントの町に放りこまれたら、面白い反応しただろうな」

 アドのいう通り入り口のところに武器をもって周囲を警戒している兵士がいた。御者にあいさつをした後その兵士は俺たちにも声をかけてきた。

「はいはい、いらっしゃーい。お客さんたちは日本語喋れますか? ってあれ、君は前にこの村に来たことあったんじゃないかな?」

「はい、何度かこの村に来ています。こっちのシロキさんは日本人なので喋れますよ」

「はっはっは。君は同郷の人か。そっちは初めて見る顔だから最近こっちに来たのかな?」

「ええ。この春にこっちに来ました」

「そうかい。異世界人と仲良くできているようでうらやましいよ。僕はこんな見た目だからね。なかなか異世界人とは仲良くできないのさ。もっとも元の世界から来た人ともなかなか仲良くなれないけどね。そっちでは僕みたいなのは見かけないだろう?」

 フレンドリーに顔を近づけてくる。人懐っこい笑顔を振りまいているけれど、その距離感に少し引く。

「……ええ、あなたみたいな人……とは初めて会いますね」

 特徴的な見た目に突っ込みを入れるか迷いつつも、無難な返事を返す。

「さて、面倒な入国手続きは必要ないんだけれど、これに息を吹きかけてくれるかな?」

 石のようなものを差し出してくる。言われるがままに俺たちは石に息を吹きかける。

「はい。大丈夫。君たちは問題なしっと。村を自由に見て回ってくれていいよ。っと説明不足だったね。これはちょっとした魔道具でね。これが反応した人たちには悪いけど村の北側には進入禁止にしているのさ。ああ、進入禁止になっても大丈夫。どうしてもこの村を見学したいっていうなら二日後なら許可を出せるから安心してね。そうそう、そこの団子屋でお茶をしていくといいよ。おいしい団子とお茶をいただける店だよ」

「そうですね。小腹も好いていますし、いただいていきましょう」

「そうだな」

 よくしゃべる兵士に勧められるままに、茶屋に行くことにする。

 茶屋の店先には長椅子が一つ置かれていた。そこに先客が一人座っていた。ソーシャさんと同じような猫耳があり、しっぽがプラプラ揺れていた。

 この村の住人なのだろう。無警戒にうとうとと眠っている。

 失礼だがプラプラ揺れるしっぽについつい目がいってしまう。視界に入らないようさっさと店の中に入るとこれまた特徴的な男性店員だった。

 ツルッとしている。

「いらっしゃい。お二人様ですね。こちらの席へどうぞ」

 俺の内心を知ってか知らずか店員は無表情で俺たちを案内する。

「お団子とお茶を二人分お願いします」

 店員は店の奥に入っていく。奥の厨房には他の人影は見えない。今の店員が団子を作っているのだろうか。

「あ、お客さん。意外そうな顔してますね。私こんな顔してますけど、うちの団子はおいしいって評判なんですよ」

 店員は楽しそうな口調でそんなことを言う。自分の表情は全く読ませないが人の表情の機微を察することができるのは、さすがというしかない。

 出てきた団子とお茶をいただくと確かにおいしい。

 醤油で味付けされた団子と暖かいお茶が、異世界にいるということを少しだけ忘れさせる。

「シロキさん。スメントはどうですか?」

「そりゃあなぁ。うん。驚いたよ。そりゃあこっちに来た現代人がスメントが合わないわけだ」

 住民に会うたびに驚かされた。うまい団子を食べ、暖かいお茶を飲んでいてもまだ落ち着かない。

 なにしろ兵士も店先の猫耳も茶屋の店員も特徴がありすぎた。

「首が長い。しっぽが二尾。顔がねえ。ろくろ首に猫又にのっぺらぼう。全部妖怪じゃねえか!」

次回の更新は未定です。少なくともゴールデンウィーク後になると思います。

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