【番外編2】決意
side ピア
シロキさんとアドちゃんがいなくなり、村にはいつも通りの日々が戻って来た。
冒険者たちが相変わらず威張り散らしているものの、平穏な日々だ。
何しろゴコウのおじいちゃんがいるだけで、そこらにいるの冒険者より頼りになる。おじいちゃんがいるだけで魔物が本能で察知して近づかないのだから相当なものだろう。
それを今身をもって体感したところだった。
眼前にはきれいな青空が広がっている。お腹に力を入れて体を起こすとおじいちゃんは困ったような表情で私を見つめていた。
「もう一度お願いします!」
ふらつきながらも立ち上がり、木刀を構える。
「無理に強くなる必要はないと思うんじゃがなぁ。そもそもあの二人はそこまで強い冒険者というわけでもないぞ? 冒険者ならこれまでもいくらでも見てきたじゃろう?」
「そう、ですね」
最初に助けてくれた時は冒険者にボコボコにされていたことを考えると、シロキさんは強くはなかったのだと思う。アドちゃんも小人族だ。非力であり、普通は冒険者に向いていない。
「私は、……きっと強くなりたいわけじゃないんだと思います」
「ほう?」
「私はお父さんに言われるがまま、この村に来ました。学校をやめて、町を離れ、友達と別れなくちゃならない。なんで? そう思いました」
でも。
「そう思うだけでした」
きっとお父さんは私がはっきりと嫌だと言えば、この町に来ることを断っただろう。だけれど、そうしなかった。
「冒険者が私を触ってくるとこもいやでした。でも、触られるだけで終わるならそれでしょうがないと思って、我慢してやり過ごしていました。私はこれまでもこれからも、そうやってやり過ごしてくと思っていたんです」
それが力のない町娘の処世術だから情けないとは思わない。でも、
「あの二人は私と違いました。弱くても冒険者や魔物に立ち向かう勇気がありました」
怖いことから逃げることしかできず、いやなことから目を背けることしかできなかった私には、二人のありようはまぶしく見えた。
「アドちゃんのほうはともかく、シロキのほうはゴブリン退治に渋っていたようじゃがのう」
「別に、シロキさんが臆病者ならそれはそれでいいんですよ」
私の言葉におじいちゃんは不思議そうな顔をする。
「二人に触発されたことはただのきっかけで、私自身が変わろうと決意したことが大事なんです」
誰かに言われたからだとか、周りに流されてということから抜け出そう。そう決めた。だから二人がどんな人であろうと関係ない。
「なるほど。そういうことならわしが教えられることを教えるとしよう」
おじいちゃんが木刀を構える。
わずかに回復した体力を振り絞り、私はおじいちゃんに挑みかかる。
これから先私がどうなるかわからない。冒険者になるかもしれないし、ウェイトレスに戻るかもしれない。それでも、これまでのように流されるだけの日々はもう終わりだ。
それだけは確かだった。
前話のあとがきで
『もう一話番外編を書いたのち三升となる予定です。
ただし三升開始までしばらく間が空くかと思われます。ご容赦ください。』
などと書いておきながら、番外編を投稿するまでですでに一か月以上たつという、体たらく。
本当に申し訳ありません。次はもう少し早く投稿できるかと思います。




