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【番外編1】フォーの村にて

 今日も昼間からギルドのに併設された酒場で子分どもと酒を飲む。

 雑魚のゴブリンやコボルトだけ倒しているだけで、こんな特権を得られるんだから安いもんだ。

 この間は流石にサボりすぎて、ただ働きさせられるはめになった。まさかあんな短期間で変異種が発生するとは思ってもみなかったぜ。しかも新しい冒険者がしゃしゃり出てきたせいで俺たちの特権が奪われるところだった。

 だが、あの時いた二人の冒険者はどこかに行っちまった。

 おかげでギルドの奴らは俺たちに酒を貢ぐしかない。俺たちが討伐しなきゃまた変異種が発生するからな。代わりを探そうにもこんな稼げない辺鄙な村に来る冒険者はいない。薬屋のくそ爺は強いが冒険者としては引退してるから代わりにはならないことは分かっている。

「あのー、そろそろコボルトのほうを狩りに行ってもらえないでしょうか」

 いい気分で飲んでいたところにギルドマスターに声をかけられる。

「ああん? なんだ。ついこの間狩って来てやっただろうが」

「いえ、前回からもう二週間くらいたって……」

「ああそうか、文句があるなら俺たちはこの村から出ていくことにするか」

 そういうとギルドマスターは黙り込む。

「いいから黙って酒を出せよ。明日には行ってやるからよ。それとも何か? 俺たちの代わりがいるってのか?」


「おう、代わりなら用意したぞ」


 背後から声を掛けられる。

「ああ? 誰だ?」

 生意気な声に振り返る。そこには見知った男が立っていた。

「……てめえ、何でここにいやがる」

 マルケアの町いるとき、所属していたクランのクランマスターのルワーカがいた。

 勝手に空いている席に座る。

「元クラン員がサボって迷惑をかけたと聞いたからには、出てこないわけにはいかんだろ」

「ケッ! その顔でいい子ぶりやがって……」

「兄貴! こいつ一人なら俺たち全員でかかればどうにか――」

「ならねえよ」

 どうにかなるなら、町にいたときにクランを乗っ取っている。

 最近はゴブリンコボルトばかり相手にしているので、こいつとの差が詰まっているとは思えない。むしろ広がっていることだろう。

 しかも代わりを用意したというなら、この町の冒険者がいなくなるという弱みにも付け込めない。

 つまり詰んだといっていい。

 無駄な抵抗をしても、寝ている間にマルケアに着くだけだが、せめてもの抵抗を示す。

「ここにある酒だけは飲んでからにさせてもらうぞ」

「ああ、いいぞ」

 せめて最後の酒をゆっくりと味わって……、っておい。

 こいつ、いいぞと言っておきながら、最後の一ビンを一気に飲み干しやがった。

「さて、行くか。荷物をまとめる時間くらいはやるよ」

「くそったれが……」

 結局悪態をつくのが精一杯の抵抗だった。




 side ギルドマスター


 ふう。これで厄介な冒険者を追い出すことができた。

 代わりに来たクラン”マルケアの子”は評判がいい。ようやくこのギルドに平穏が訪れる。

 粗暴な冒険者に振り回されるのはこれでおしまいだ。

 今日の夜はゆっくりと眠ることができるだろう。

「すっきりしてるところ悪いけどちゃんと、ギルドマスにもペナルティがあるニャ」

「え?」

 いつの間にか私の隣に並んで立っている人がいた。

「マルケアの冒険者ギルドサブマスターのソーシャニャ」

 フォーの村はマルケアの町の支部にあたるので、何度か会ったことがある。

 私はギルドマスターではあるが、地位は圧倒的に低い立場になる。

「ペナルティ? なんで……」

「何でも何も、ギルドが毅然とした態度をとらニャかったことが、冒険者が増長した一因ニャ」

「いや、ですが……、脅されてしかたなく……」

「なるほど、マニュアルを読んでないことがよくわかったニャ」

 ソーシャさんは受付の中に入っていき戸棚の中を確認する。

「あったニャ。どこのギルドも同じ作りだから探すのも簡単だニャあ」

 そこから取り出された本は丁寧に製本されていた。ソーシャさんは積もった埃をきれいに払い机に乗せる。

「これがマニュアルニャ。全てを暗記する必要はニャいけれど、ギルド運営で困った時に読むように言われているはずニャ。憶えていニャいかニャ?」

「そ、そんな説明受けましたかねえ……。もしかしたらそんな説明されていなかったかも……」

 しどろもどろに答える。

「このギルドマニュアルの最後のページには、きちんと引継ぎをしたことを証明するために、署名する欄があるニャ。それは当然最初のギルドマスターも署名することになっているニャ」

 嫌な汗が流れ出る。

「署名がないといいニャあ?」

「すみませんでした! すっかり存在を忘れていました!」

 ソーシャさんが署名のページを開く前に私は頭を下げたのだった。開かれたページには私の直筆の署名がしっかりと書いてあった。


 ギルドマスターの資格は取り消されなかったものの、減俸が決まった。当然次はこんなものでは済まされないと念を押されることになった。

 そしてマニュアルをしっかりと読み込むよう言い渡された。

 しばらくの間、寝不足になりそうだった。

もう一話番外編を書いたのち三升となる予定です。

ただし三升開始までしばらく間が空くかと思われます。ご容赦ください。

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