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第66話 中身

 アドがギルドに行った時にはすでにいい依頼は残っていなかったということなので今日のところは、依頼を受けずに過ごすことにする。

 依頼が全くないわけではないのだろうが、昨日丸一日消火活動に当たっていて疲れていることを考慮して休むことを提言したのだろう。

 もっとも寝て過ごすというわけにもいかないのだが。

「シロキさん、しっかり拭っておかないと錆びますよ」

 部屋に戻りアドの指導の下、武器の手入れを行っていた。

 命を預ける物なので欠かすことができないことだ。アドのほうはすでに昨日使った解体用ナイフを拭い終えている。

「そういえば、昨日は空間収納から網を出したけど他には何が入っているんだ?」

 昨日だした網の他には、野営に使う鍋やテントなどが一式入っていることは知っているが、他に何を入れているか聞いていなかった。

「そうですね。中に入れているものも整理しましょうか」

 そういって最初に取り出したのは金属製のボウガンと矢。

「そんな武器も持っていたんだな」

「小人族は力が弱い上にリーチが短いですからこういった武器が向いているんですよ」

 空間収納があるのならば遠距離武器を準備しておいて損はない。だから持っていることは不思議ではない。

「弓じゃないんだな。弓のほうが便利な印象があるんだが」

「ボウガンのほうが扱いやすく威力が出るので重宝しました。レベルを上げることを制限されていたので、弓だと威力が出せませんでしたから」

「金属製で重そうなんだが、大丈夫なのか?」

「私の空間収納だと乾燥してゆがみが出るんですよ」

「なるほど」

「後はこんなものもあります」

 取り出したのは金属製の鉤爪付きのロープ。

 武器としては使えそうにないがあれば便利そうだ。

 次に取り出したのは、ひし形の刃先を持った小さな金属片。さらに取り出したのは刃が付いた平べったい板と先のとがった鉄の棒。

「クナイに手裏剣が。こっちは棒手裏剣か……。アドは忍者だったのか」

 クナイが一つ。手裏剣と棒手裏剣は十ずつある。

「いえ、知り合いの忍者マニアに押し付けられました」

「押し付けられたとはまた辛辣な物言いだな」

「クナイは近接戦闘用に使えますけど、これは切るんじゃなくて突くんですよ。一撃で敵を仕留める技量があれば使えるんでしょうが、素人の私には手に余ります」

「確かに素人なら剣を振り回したほうが怖いな」

「手裏剣にしてもボウガンほどの射程もなく、威力も使い手次第となるとどうしても使い勝手は落ちます」

 実際クナイも手裏剣も俺とあってから、活躍する場面はなかった。

 ゴブリン相手の時は数が多く手裏剣は足りず、トレント相手には弱点に当てなければダメージは期待できなかっただろう。

「ならレベルが上がった今ならどうだ? 見たところものは悪くない、というかいいだろこれ」

 重厚感のあるそれは安物には見えない。そしてきちんと手入れをしているように見える。

「そうですね。自在に使いこなせるようになれば武器になるとは思います」

「その忍者マニアの人も使ったほうが喜ぶんじゃないか?」

「そりゃあ、あの人は泣いて喜びそうですけど……。そうなると練習しないといけないですね。シロキさんの後頭部に手裏剣が生えることになりますね」

「ぜひとも練習してくれ」

「まあ、武器になりそうなものはこれくらいです」

「忍者刀や鎖鎌なんかはないのか」

「あの人は『忍者と言ったらクナイと手裏剣だろ!』なんて言ってましたよ」

 ずいぶんと偏った知識を持っているような気がするが、異世界に忍者の知識が正確に伝わっている訳もないか。

 それにアドに押し付けた、という話からするとお金を取っていないことになる。そうなると忍者刀や鎖鎌にするほどの材料が手に入らなかったのかもしれない。

 しかし、忍者……。くノ一か……。

 アドの忍び装束衣装を想像し、思う。

 色気が足りないな。

「何か失礼なことを考えませんでした?」

「いや何も」

 鋭いアドの視線から逃れるように俺は武器の整備に向き直ったのだった。

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