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第50話 原因

 原因究明のため、再び森の前まで俺たちは訪れていた。

「……やっぱり何かいますね」

「もういなくなってるとか期待しなんだけどダメか」

「それは冒険者としてどうかと思いますよ」

 異変がなくなったらなくなったで手間がなくていいじゃないか。

 なんにしても引き受けている以上何らかの結果を持ち帰りたいところだ。

 未知の魔物ということで警戒しながら森の中を進んでいく。

 アドが察知している魔物がこちらに気づいて逃げたりしていなければいなければ、間もなく遭遇するだろう。

「かなり近くに来ています。何かいたらすぐに対応できるように、……ミントちゃん?」

「ん? ミント?」

 アドのいう通りミントが俺の体から出てきていた。

「なんで出てきたんだ?」

 魔法で俺の意思を伝えることはできても、ミントたちの意思を読み取ることはいまだできていない。

 そのため精霊たちは身振り手振りで意思疎通を図るが、個体差があり、精霊によっては何を言っているか全く分からなかったりする。特にミントは寝てばかりいるせいか、何を伝えたいのかさっぱり分からないことが多い。

 今回も俺の体から出てきた後、何か言いたげに進行方向のほうを指さしただけだった。ただし、

「何か不機嫌なようですね?」

「アドもそう思ったか?」

 呑気なミントにしては虫の居所悪いように見えた。

「この先に何かあるとミントも感じているわけだ。ミントが警戒を促すってことは植物関係か?」

「未知の魔物に、謎の植物。本当に何なんでしょうね」

 情報は増えたが、精霊のことは秘密にしているため、アドが察知した情報とは違い、ギルドに報告はできない。

 つまり、この先に何があるか確認しないと戻れない。

「行くしかないか」

「ですねー」

 警戒をさらに強め進んでいく。

「匂いが、甘い匂いがします」

「……本当だな。毒じゃないよな?」

 この匂いの正体が毒物の正体か? シャンディーが知らせていない以上、あまいにおいそのものに毒はないだろう。

「近いです」

 息をひそめ、アドが知らせるそれは、匂いの元ではなく、魔物のことだろう。

 しかし、匂いも強くなってきている。甘く魅惑的な匂いだ。

「居ない……けど、いる……?」

 アドは自信なさげにつぶやくが、足を止めて周囲を警戒を続けていた。

 俺も警戒をしているが、生き物の気配は感じられない。

 どれくらい、動きを止めていただろうか。

 俺には周りの木々が風に揺れているだけで、何かがいることを感じられない。

 時間が経てば経つほど、俺には何もわからない。何か動きを見せて反応を見ようかと考え始めたところで、アドがピクリと動いた。

「……前方から魔物が来ています。ただ、これは普通の魔物だと思います」

「じゃあ、俺がやる。アドは警戒を頼む」

 俺には未知の魔物のほうを感知できない以上、適役は俺だ。

「対処できそうになければ逃げるということで」

「はい」

 息をひそめ、前方から現れる魔物を待つ。

 木々の影からそれは姿を現した。

 三匹のゴブリンであった。

 何やらギャギャと鳴いて喋っているところ悪いが、一瞬で近づいて剣を振るう。横薙ぎに振るったそれは容易く胴体を上下に分けた。

 レベルが上がった今。ただのゴブリンでは相手にならない。

 数秒とかからず、全てのゴブリンを倒し、戦闘を終えることとなった。

 アドのほうを確認するが何も変わった様子はない。

 未知の魔物を釣ることはできなかったようだ。

 仕方なく、ゴブリンの解体をしてみるか、そう思い死体に目を向ける。そこでゴブリンの傍らに球状の何かが落ちていることに気づいた。

「なんだ? 果物?」

 ソフトボール位の果実で中に小さな粒が入っており、ザクロと似ている。顔を近づけると甘いにおいが強まった。ザクロの匂いにしてはどろりとした甘い匂いだった。

「匂いの元はこれか……」

 一度気づいてしまえば、この周りに生えている木々にこの実がついていることがすぐに分かった。

「アド、この実が何かわかるか?」

「この実ですか? いえ、見たことないですね」

 木にぶら下がる実を見て首を横に振る。なるほどそうなると。

「毒殺騒動。これが原因じゃないか?」

「この果物が?」

「そうだとすればある程度説明がつく。とりあえずサンプルとして数個確保して戻ろう」

 未知の魔物がいる中で長々と説明するわけにも行かない。

 革袋に数個果物を詰め込み俺たちはその場を離れた。



 森を抜け、背後を振り返るが何も追ってきていない。そこでようやく一息つくことができた。

「全く追ってくる気配はありませんでした」

「ならいいんだが、それはそれで不気味だな」

「ひとまず、魔物の件に関しては置いておきましょうか。その果物が事件の原因ってどういうことです?」

「調べてもらわないと分からないが、まずこれが原因の毒物だと思う。ミント、これに毒はあるか?」

 周囲に人がいないこと確認し、ミントに問いかける。

 答えはイエス。毒があるとうなずいた。そして俺の中に戻る前に袋に蹴りを一発入れていった。

 この果物が気に入らないらしい。

「ほぼ確定だな」

「そもそもなんでこの果物が毒だって、分かったんですか?」

「もしこれがただの果物だったら、市に並んでておかしくないだろ。でも昨日まで市を巡っても一つも並んでなかった。毒がなかったとしても何かあるだろ」

 まあミントが事前に警告してくれたから気づけたというのもあるんだが。

 後は今回の事件の毒と一致するかどうかだ。

 そうすればいろいろと見えてくるはずだ。

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