第45話 レッツクッキング
さて、うまい料理を食わせてやるぜ! と張り切ったのだが、材料がなかった。
この町に着いたのは夕方ですでに日が沈んでおり、すでに店は閉じていたので外に出て食材を確保することはできなくなっていた。仮に店が開いていても、日が沈んでから町に出るのは危険だろう。ここは日本ではないのだから。
ダメもとで宿屋の店主に材料を融通してもらえないかと聞いてみたところ、快く引き受けてくれた。
ただし、市場価格より割高ではあったが。
ちなみに毒云々の話がギルドからあったため、宿を選ぶ際に台所を貸してもらえる所を選んでいる。
「さて、食材は肉がなくて野菜だけか」
パッと見たところ肉が保存されているようには見えなかった。
こちらの世界に冷蔵庫に類するものは普及していない。魔法で氷を出す、凍らすという手段はあるため冷蔵の技術はある。ただし氷の魔法を使える人が少ないのであるところにある、というだけだ。当然宿屋にはない。
「調味料もないしな」
こっちの世界に来た一番の問題は食に関することかもしれない。
日本酒で味に幅を持たせているが、こっちの世界の味付けの基本は塩しかない。
醤油。
味噌。
お酢。
ソース。
マヨネーズ。
ケチャップ。
焼き肉のたれ。
日本の調味料が恋しい。
いつか醤油か味噌を仕込みたい。
そう思っていたのだが、今回の事件のことを考える断念せざるを得ない。味噌、醤油など呑気に仕込んでおいてそれに毒を盛られたなどとなったら目も当てられない。材料を探すまでもなく断念せざるを得なかった。
「発酵食品が恋しい……」
などと言っている間にも、時間は過ぎていく。台所を借りられる時間も限られているのでさっさと食材を確認しよう。
「つっても根菜が中心で、出汁になりそうなものが、って肉あるな」
ニンジンやジャガイモのほかに平べったい肉の塊があった。ただし、生の肉ではなく乾燥された干し肉だった。
「スープにすればいい味が出そうだな」
干し肉があれば味に深みが出よう。しかし、この肉大丈夫だろうか? もしこの肉に毒が入っていたらと考えるとなかなか使う決心がつかない。
「別に使ってもいいんじゃないですか?」
アドは平然といった。
「だって、私たちはまだDランクになっていませんし、夕方にこの町に来たばかりです。毒を盛ったとすればこの宿しかありえないですからね」
もし毒が入れられていれば調べれば犯人が分かるとまで言い切れないが、何に毒が混入されたかほぼ特定できるわけか。これまで犯人を特定することができなかったことを考えるこれであっさりと特定されるとも思えない。
パナシェ、ミントに毒が確認出来るか聞いてみるがどちらも首を横に振った。肉は専門外のようだった。
安全策をとるなら、肉抜きの野菜スープを夕飯にして、明日以降の食事に力を入れるのがいいのだろう。しかし、明日以降も肉に対する毒物の確認ができないことを考えると、しばらくの間肉が食べれないことになる。
しばし悩んだ結果。
「使うか」
食欲が勝った。
一応、理由というか、言い訳はある。
一つ、いまだ俺たちはDランクなっていない。Eランクに被害が及んでいれば、さすがに俺も危険かもしれない食材を使わない。安全な食材のみを使うだろう。ただ、俺たちはまだEランクであり狙われる対象にはまだなっていない。ギルドにもいつランクを上げるかを言っていないことから今から狙われるとは考えづらい。
二つ目。このブロック肉に毒が入っているという仮説は無理がある。このブロック肉は宿屋にあったものだ。これに毒を盛っていたとするならばどう考えても宿屋は事件に関与している。そうでなければ間違って毒の燻製肉を食べてしまう可能性がある。冒険者のランクに関係なく不審死が出てしまう。
もし宿屋が関与しているとしたら、ギルド側が気づかないということもないだろう。
さて、そうだとするとこの肉が危ないケースは非常に低い。
「あ、スープに出てきたら、毒があるかはパナシェ分からないか?」
俺の疑問に少し考えた後、分かるという結果を出してくれた。
食事に毒を入れられる心配がほぼなくなったな。
肉をできるだけ小さく切って、作った根菜のスープは出汁が出てなかなかうまかった。幸いなことに毒が染み出すということはなかったようだ。
精霊は結構チートです。
日本語が変なような気がします。意味不明でなければいいのですが。




