第41話 マルケアの街へ
第二升に入る前に大幅に第一升を変更していたりします。
詳しい修正情報は活動報告その3に記載しております。
馬車に揺られ、目指すはマルケアという町だ。ゴコウさんの村から馬車で丸一日掛かる場所に位置し、それなりに大きな町らしい。
もうすぐ見えるということなので、アドにどんな町かと聞いてみると、鶏肉のおいしい町だという答えが返ってきた。
おう、食事の情報は大事だな。でもそういうことが聞きたいわけじゃないんだが。
「わかってますよ。でも実際に特徴のある街ではないですよ」
アドいわく、中途半端に大きな都市ほど特徴がなくなっていくという。
その土地の特徴というのは確かにあるはずなのだが、大きくなればなるほど不足していた部分が補われる。そうすると本来特化していたはずの特徴が見えにくくなるという。
「魔物もどこにでもいる魔物ばかりですし、ここでしか食べられないっていう名産品もないですね」
「あー、そうなると食事情なんかも村とあんまり変わらないか」
村での食生活を思い返すと、とても充実していたとは言えない。俺には日本酒があるとはいえ、醤油や味噌ほどの万能な調味料ではない。そもそも料理酒ではないので調味料として使うには限界がある。
そこらへん考えると、むしろケーキに乗っかったイチゴのほうがいろいろ応用が利くかもしれない。何かできないか考えておこう。
「村よりは流通がいいので、食材なんかはあるんですけどね。あ、見えてきましたよ」
壁に囲まれた街が見えてきた。がっしりとした城壁は高く、隙間がない。村の時のように魔物が入ってくることはないだろう。
はてさて、マルケアという町では何が起こるのやら。
☆
俺たちは町に着いた後、乗せてくれた馬車の主人に代金を払い、冒険者ギルドの前にいた。
「ここがマルケアの冒険者ギルドです」
「……あの村のギルドの建物と全く一緒に見えるんだが」
小さな村には不釣り合いな三階の建物がここにもあった。どうにも同じような建物に見える。
「最近このギルドの建物が増えてるみたいですね。ついでに聞いてみましょうか」
中に入るが、やはり村の建物と同じ作りをしていた。酒場のカウンターがついているのも一緒だ。
日が沈んできた時間帯のためか、飲んでいる冒険者もいた。ただし、飲んでいる冒険者たちに悪酔いをしているもの一人としていなかった。
ランクがどの程度かはわからないが、見慣れない俺たちを観察しているのだろう。魔法を使ってステータスを確認するほどのことは誰もしていないが、立ち振る舞いで正確な実力を計られているような気がする。
少なくともあの村にいたチンピラたちよりはよっぽど有能な冒険者だろう。
しかしまあ、ギルドで俺がやれることはやはりない。言葉が通じないということはやはり不便だ。
アドに任せるしかない。
「あ、シロキさん。ここ日本語通じる人がいますよ」
「って通じる人いるのかよ」
予想外だがありがたい。通訳のアドに負担がかかるし、細かいニュアンスが違う可能性もあるからな。
「マルケアの冒険者ギルドへようこそニャ。担当するソーシャだニャ。よろしくニャ」
猫耳の生えた女性が受け付けてくれた。当たり前のように猫の獣人がいる。さすが異世界だ。
それにしても語尾にニャが付いているが、かなり流暢に喋ることができている。アドもそうだが若いのにすごいな。
「こちらこそよろしく」
「ここで話していると目立つニャ、奥に来るニャ」
案内された場所は机といすがいくつもあった。この場所は会議などに使うのだろう。
ソーシャさんに促され、相対して座る。
「アドさんとシロキさんでいいかニャ? フォーマの村でのことはずいぶんと噂にニャってるニャ」
ああ、あの村フォーマっていうのか。わざわざ確認してなかったからずっと村って言ってたな。
「村に侵入したプチコボルトに真っ先に気づいて追い払い、ゴブリンの進化種百体以上の討伐。さらにはダンジョンゴブリンの討伐まで行うのはCランク冒険者でもそうそうニャい功績だニャ」
ソーシャさんがこちらを疑っている様子はない。
信じられない功績を疑ってもしょうがないということもあるだろうし、冒険者側が偽る意味もあまりないということなのだろう。
たとえゴコウさんに手伝ってもらった結果を俺たちが自分のものにしたとしよう。そうしたとしても報酬が上がるわけではない。せいぜい俺たちのランクが上がるだけである。
ランクが上がれば報酬の良い仕事も受けることができるのだが、その仕事の危険度は大きく上がることになる。
ずるをしてもその結果はろくなものにならない。それを知っているギルド側は必要以上に口を挟まないのだ。
「功績は十分だニャ。私の権限で一気にCランクにあげられるニャ。どうするニャ?」
「私がCランク……。とうとうEランクを脱出してしかもCランク」
アドが感極まってにやにやしているようだが疑問が浮かぶ。
「ソーシャさんの権限を使えばCランクにあげれる。それはつまりそうでなければ通常Dランクに上がるのが普通なんだよな」
「そうニャ」
「なんでわざわざそんな権限を使ってまで俺たちをCランクにあげようとするんだ?」
確かに俺たちはCランク級の功績を作ったかもしれないが、それだけで飛び級させるほどの功績とは思えない。
むやみに飛び級を認めていたらランクの基準が崩れる。あくまで飛び級は特例でなければならないはずだ。
俺の視線にソーシャさんはひっとつため息をつき、
「ニャかニャか鋭いニャ」
話を始めた。




