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第33話 ダンジョンモンスター

 森の中を進んでいくが、なかなかゴブリンに出会わない。もちろん森に入ったら即いる、などとは考えてはいなかったが、一時間以上歩いていてそれなのだ。

 正直拍子抜けしたといっていい。あのチンピラたちのことだからゴブリン退治をサボっていたのではないかと危惧していたのだが、そんなことはなかったらしい。

 それはきっと俺だけのものではなく、あの村の住民たちも心配していたことだろう。

 もしかしたらゴブリンが大量発生して、村が襲われるかもしれないと心配していたからこそ、レベルが低い俺たちに依頼を出したのだから。

 しかし、素人目から見たら、ゴブリンに村を襲われるという危険性ないと思われた。

 いないなら危険も何もないわけだしな。

 歩けば歩くほどその確信が強くなっていく。

 だが、それに対してアドは足を止めていた。

「アド?」

「……戻りましょう」

 急にどうしたのかと思う。いや、どこかで戻ってゴブリンがいないということを報告する必要があるが、戻るにはまだ早い時間だ。

「私の想像が正しいとしたら、私たちの手に負えません」

 アドの声は微妙に震えていた。

 俺にはアドの想像はわからない。

「どういうことだ?」

「ここまでゴブリンに出会わないことが、いえ、ゴブリンだけじゃなく、他の動物もまったくいません。明らかに異常です」

 言われてみれば普通はありえない。いや、精霊郷から出たときもそうであったからありえないことではないのか。

「考えられるのは、そうですね冒険者が狩り尽くしたというケースです」

「それは……、なさそうだな」

 いくらゴブリンが弱いといったとしても、相応の労力を費やさなければ不可能だ。

「ええ、ゴブリンは増えやすいですから、狩り尽くすなんて言うのは難しいです。仮にやるとしたら相当のレベルと時間が必要です」

 あの冒険者たちがそんな時間を使っているとは思えない。

「次に、ほかの魔物が来てゴブリンを追いやった可能性。これもほぼないです」

「なんでだ? 結構ありそうだろ?」

「そうだとしたら、追いやられたゴブリンが村のほうに来てますよ」

「追いやったんじゃなくて、一気に殲滅されていたら?」

「そんな化け物がいたらとっくに村も襲われてますよ」

 なるほど。そういわれればそうだ。流石にそんな化け物がいたらゴコウさんがいようが村にも影響がありそうだ。

「だとすると、ゴブリンは忽然と消えたのか?」

 そんなホラー映画のようなことがあるのだろうか。消えたのがゴブリンなので、どちらかというとコメディか?

「いろいろな可能性が考えられますが、最悪の場合、私が感知できないだけです」

「感知できない? レベルが上がったからゴブリンが格下になって感知できなくなったとかか?」

「その可能性もありますが、たぶん違います。小人族の感知は根拠がないので勘みたいなものです。相手が格下だとか言う理由で精度は下がりません」

「感知の精度が下がってないとすると、ゴブリン側が何らかの形で感知に引っかからないようにしているってことか?」

「ええ、何らかの形で、ゴブリンが身を隠しているという可能性が非常に高いです。ですがゴブリンが変異種進化種になっていたとしても、そういった魔法が使えるとは思えません。ですが……、ダンジョンモンスターになっていたとしたら話は違います」

 ダンジョンモンスター。

 アドが説明するには、進化変化を繰り返してダンジョンモンスター化をすると、そのモンスターを核にダンジョンを形成する。そしてそのダンジョンには様々な特徴が表れるという。

 ダンジョンという異空間を作り上げるため、アドの感知には引っかからないらしい。

 無根拠に感知するというのはどうなったんだと思うが、アドの感知は当然距離が開けば働かない。地球の裏側の脅威を感知しても意味がなく、その感はアドの周りに働くというのは当然だった。

 そして異空間のダンジョンは距離が断絶している。

 感知が働かなくて当然だった。

 そしてその危険性はゴブリンがダンジョンモンスターになった場合ですら計り知れない。

 例えば、ダンジョンに入ったとたん、マグマの上だったら? ダンジョンの中が水で満たされていたら?

 そこまで極端なものでなかったとしても地の利がモンスターにあるのには変わりがない。

 ベテランの冒険者でも情報の少ないダンジョンには近づかないという話からも危険性がうかがわれた。

 そして厄介なことにダンジョンの入り口は不可視であり、ものによっては入り口が移動すらするというのだから手に負えない。

「オーケー、戻ろう」

 危険性は理解した。入り口が移動する可能性があるというのであれば、まっすぐに村に戻ったとしても引っかかる可能性があった。

 だからこそわざわざ足を止めてその話をしたのだ。

 アドを先頭に来た道を戻っていく。

 

 警戒を怠ってはいなかった。

 だが、間違いなく焦ってはいた。

 先に違和感に気づいたのはアドではなく俺だった。

 それが精霊郷を出たときに感じた者と同質だと気づいた時、俺たちはゴブリンのダンジョンに足を踏み入れていた。

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