第26話 シロキは気づいていない
自分の器の小ささを自覚して落ち込んでいても日々は過ぎていく。
とにかく自分のできることをしていくしかない。
そのできることというのも多くない。
畑仕事で肉体の鍛錬と魔法の自主練。あとは今やっているポーション作りくらいしかないが。
「浮かない顔をしてますね。どうしたんですか?」
「あー、結局。俺のスキルがどんなもんか今一つわからんなーと」
自分の器の小ささに悩んでいるなどと言えず、ごまかす。
「製造系のスキルなんじゃないんですか? そんなこと言ってましたよね?」
アドにもスキルがあるようだとは言っている。
ゴコウさんは秘密にしたほうが良いんじゃないかと言っていたが、アドに秘密にするのもいまさらだ。秘密にするなら酒もケーキも秘密にしている。
「とりあえず、製造系には間違いなさそうだがよくわからない」
例えばケーキは俺がこの世界に来る直前に作り上げた最後の料理だ。
そのケーキを俺は出すことができる。
だとすると作ったことのあるものを再現するスキルと仮定してみた。
試しに下級ポーションや中級ポーションなどいろいろ作ってみたのだが、作ったものを出すことはできなかった。
そもそも作ったことのあるものをなんでも出せるのであれば、これまで作った料理だって出せるわけで、それはとうの昔に試していた。
仮にこちらの世界に来る直前にスキルに目覚めていたとする。だとするとケーキにだけ効力が及び、それ以外には効力が発揮されないはずだ。
だというのに酒を出せる。ということはそれ以外の条件があるのだろう。
「まあ、結局それが判明したところで出せるバリエーションが増えるだけだな」
増えるにこしたことはないが、増えたところで戦闘には役に立たないだろう。
とにかく今判明していることは作ったものに補正がかかるということだ。
それ以外は知らん。
ということにしておく。正直だせるだせないの検証はこちらの世界にきてすぐに試しまくっているのだ。
いまさらそれを蒸し返しても疲れるだけである。
「私としては増えてくれるとうれしいんですが」
アドのためにスキルを使いこなそうなどと考えていないが、誰か俺の作ったものを食べて飲んで喜んでくれるのはうれしいものだ。たとえスキルで出したものだとしてもだ。
「……できるなら実際作ったものでうならせたいもんだ」
「何か言いましたか?」
「いや、なんでもない」
手作りで喜ばせたいなど恋する乙女みたいな考えを振り払い、俺は中級ポーションづくりを再開したのだった。
しばらく作業しているとゴコウさんは難しい顔をし始めた。
何か手順を間違ったりしたのかと思ったのだがどうやら違うようだ。
すぐに俺が見ていることに気づいて、意思疎通の魔法を使って声をかけてきた。
『そのまま続けて大丈夫じゃ』
『何か問題でもありました? 何か悩んでいるように見えたんですが』
『いや、なに、ちょっと調子に乗ってポーションを作りすぎてのう。材料の次の入荷が間に合わんのじゃ』
そういえば、俺とアドは練習でかなりの量のポーションを作ってきた。売り物になる分は棚に並べられるが、そうでないものは自分で消費することになっていた。その分が在庫を圧迫してしまったようだ。
そんな風に考えたのだが、別にそれだけが理由ではないらしい。
『盗賊騒動があったせいで、荷馬車が来る頻度がずいぶん減ってのう。騒動自体はすぐに終息したとはいえ残党がいないとは限らんしの。もともとこの村はそんなに金になる訳じゃないからの。うちのポーションは飛ぶように売れていくんじゃがな』
さすがゴコウさんのポーション。品質が高く人気だということか。
『というわけでちょっと、街のほうに仕入れに行ってこようと思っておるんじゃ。留守番頼んでよいかの』
『俺とアドが行くとか、一緒に行くとかいうのはだめなんですか?』
『二人で行かせるのは論外じゃの。資格がないと買えないものもあるし、高級なものは詐欺にあうのも心配じゃ』
確かにアドと俺との組み合わせだと不安だろう。
『一緒に行くのも店を空にするのも心配じゃ。危険な薬品もあるし、客もおるしのう』
いや、危険な薬品があるなら俺たちがいるのも危険だと思う。
まあ、ゴコウさんが俺たちを店番にするというのなら引き受けるまでだ。
『それじゃあ、明日からしばらく頼むのう』
明日からか。なかなか急な話だが、こちらの世界にも充分なれたし、言葉が通じないのもアドがいれば大丈夫だ。
それにこちらの言葉も少しずつ覚えることができている。ポーション関係の言葉なら十分に覚えることができた。
何も心配ないな。
「それじゃ、アド明日からよろしくな」
「え? なんですかいきなり」
あ、さっきまでの念話にアドは参加してなかったな。まあゴコウさんから説明してくれるようだ。
☆
side アド
シロキさんからいきなり明日からよろしく。などと言われて何のことかと思っていたら、ゴコウさんから説明があった。
仕入れに行くため留守番をしてほしいということだった。
一も二もなく引き受けて、ゴコウさんが出発したとき気づきました。
あれ? これシロキさんと二人っきりじゃないですか?
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次は四月中にもう一度更新したいと思います。できなかった場合、ゴールデンウィーク後になるかと。




