第23話 解毒ポーション
久々の投稿です。お待たせしました。
ポーションづくりのあと、解毒ポーションを作ることになった。基本中の基本のポーションに追加で材料を加えるだけでとても簡単だという。だというのにアドの顔が曇っている。
「解毒ポーションは匂いがきついんですよ」
さらにゴコウさんが何か言っている。
「あー。匂いのせいで客が寄り付かなくなるから、まとめて作っておいておくのが薬剤師でも一般的だそうです。あとモンスターが匂いにつられてやってくることもあるそうです。あ、ゴコウさんが嗅いでみるかって言ってますよ。ぜひ嗅いでみてください。私は遠慮しますが」
自分が嫌なにおいをかぐよう勧めるなと言いたいが、今のところ、アドも悪臭とまでは言っていない。何事も経験だということでにおいを嗅ぐことにする。
「うわぁ。あの匂いを進んで嗅ぎに行くんですか……」
ゴコウさんが棚の奥のほうから取り出した解毒ポーションの外観はポーションとあまり変わらない。入れ物がほとんど同じというのも、その一因だろう。だが、しかし。
「これ古くね?」
先ほどまで埃をかぶっていたのが見て分かる。一応ゴコウさんが埃を拭ってきたようだが、ガラスの表面に拭き残しがあった。その白さが過ぎた年月を物語っている。
「解毒ポーションは、普通のポーションの何倍も長持ちするんでこうなりがちだそうです。……せめて、せめて上級解毒ポーションなら匂いもマシなのに……」
そういいながらじりじりと後ろに下がっていく。
「というか、なんでそんな商品をいつまでも置いてるんだ?」
ゴコウさんいわく。
期限が近くなったポーションを一括で解毒ポーションにするらしい。不人気だと分かっていてもわざわざ解毒ポーションにする理由としては、解毒ポーションにすると解毒効果を付与して日持ちするというだけでなく、ポーションとしての効能もワンランク上昇するからだという。
それゆえに供給され続ける。
逆に需要はほとんどない。なぜなら匂いが強すぎるからだ。匂いのせいで使いにくい、使いたくないということもあるが、その強烈な匂いのせいで、魔物など引き寄せることになる。
だから匂いの強い下級の解毒ポーションは誰も買わない。
一応、解毒ポーションを使うことで、匂いの苦手な魔物を避けるという手もあるが、それ以外の魔物が寄ってくるので使い勝手はよくない。
では、結局使われずに破棄されるかといえば、そうではないらしい。
匂いがきついものの安くて効能は高いのだ。
だから町の中にいる兵士などが訓練で怪我をしたときに使われたりする。あとはにおいなどを気にしていられないような緊急時などに使われる。
ちなみに上級解毒ポーションは匂いが弱いのだが、作る際に強烈な匂いを発生させ続けるため、あまり供給されないらしい。
話を聞いていても匂いが変わるわけでもないのでさっさと嗅いでしまうことにする。
恐る恐るビンの口を開けると鼻を近づける必要もなくその匂いが漂ってきた。
確かに強烈な匂いだ。
これを飲んだらしばらくは口臭がすごいことになること間違いなし。乙女からしたらこんな匂いをまき散らしたくないし、近づきたくないという気持ちもわかる。だけどこれ、
これニンニクの匂いだよね。
おそらくすりおろしたニンニクが入っている。とすると、上級解毒ポーションには黒ニンニクを使っているのか? あれは確かニンニクよりも匂いがきつくないはずだ。作るときには匂いがきついはずだが。
いやまて、本当にニンニクを使っているとは限らないはずだ。
「ってこれやっぱりニンニクだな」
ゴコウさんが持って来た材料はまさしくニンニクだった。
八百屋に売っていなかったのは、野菜という分類ではなくて、薬草の一種とされているからか。ということはこっちで野菜として売っていないものも薬草として売っている可能性があるな。山葵とか生姜あたりはありそうだ。
炭酸水があればジンジャエールが作れるな。あ、レモンがあったからレモネードも作れる。
ただし炭酸水の作り方がわからないのが問題だな。
確かクエン酸と重層で作れたんだよな。クエン酸は柑橘類に含まれてたと思うからレモンでいいとして、重層の作り方がわからない。むしろ水と風の魔法を使って、無理矢理炭酸水を作ったほうが早いかもしれない。どっちも使えないけどな!
「シロキさんが解毒ポーションを嗅いでにやにやしてる……」
アドが離れたところでドン引きしていた。
確かにニンニクの匂いを嗅いでにやにやしてるやつは変な奴と思われてもしょうがない。
とりあえず、ビンの蓋を閉めて解毒ポーションを作ることにする。
先ほどとまでと同じようにアドがゴコウさんに教わり、アドが俺に教えるという形だ。一応アドが教わっているところは俺も見ているのでアドに聞かずとも大体の手順を把握している。
ちなみに解毒ポーションはニンニクをすりおろしてポーションに濾してから入れるだけであった。力を入れずに優しくすりおろすのがコツだとか。
手順こそ少ないものの、ニンニクという知っている素材なだけに気合が入った。
「しかしまあ、見た目はそんなに変わらんな」
ニンニクの汁はそれなりの量を入れたが、色素が薄いためか、見た目は変わらない。
だが、ゴコウさんが俺の解毒ポーションのビンを振ってまじめな表情を浮かべている。
何か失敗をしていたのだろうか。
そんな俺の視線に気づいたのかゴコウさんがこちらに顔を向ける。
『よくできている』
いきなり頭の中に声が響いた。
『驚かせることに成功したようじゃな。儂ばっかり驚かされるのは癪だから練習してみたが、この魔法は恐ろしく燃費が悪い。儂でも二十分くらいしか持たぬのう』
どうやらゴコウさんはすでに念話を習得したらしい。
しかし、なんでまたこのタイミングで使ったのだろうか。
『それはのう。一応アドにも秘密にしておいたほうがいいと思ったのじゃ』
あ、これ念話じゃなくて読心も入ってるな。そりゃあ、燃費がさらに悪いだろうに。
で、秘密にしておいたほうがいいというのはどういうことですか?
『うむ、この解毒ポーション。非常によくできておる。元となるポーションを同一人物が作ったとは思えぬほどにな』
確かに自分としてもなんとなくよくできたような気がしていたが、ゴコウさんがそこまで言うほどの物だろうか。
『自覚ないようじゃの……。とはいえ、酒とケーキの魔法については普通の魔法と何か違うとは思っていたのだろう?』
それはそうだ。これまで何度も使ってきているが、明らかに酒とケーキだけは他の魔法の枠から外れている。明らかに燃費がおかしい。酒とケーキに限って言えば比喩でなくいくらでも出せる。
『ただ酒とケーキを魔法で出せるだけじゃと、魔法系スキルによる影響の可能性もあった。だが作ったものに影響を与えるとなると制作系スキルで間違いないのう』
それが何か問題になるのだろうか。
『制作系のスキル持ちはかなり貴重じゃ。ドワーフのように素で鍛冶系のスキルを持っている種族もおるが、他に制作系のスキルを持つ者はそうそうおらぬ。そして、そういった制作系のスキル持ちは国などに抱えられがちじゃ。戦闘系は所詮個人の力でしかない。故に代わりはいくらでも利くが、特殊な制作系能力者は代わりとなるものがいないからの』
ゴコウさんは何かスキルを持っているのだろうか?
話のニュアンスから制作系スキルを持っていて苦労してきたのがうかがえた。
『そりゃあ、スキルを持っていたせいでずいぶん苦労したわい。この年になってようやく隠居できたんじゃ』
とにかく、スキルの詳細はできるだけ隠したほうがいいということか。まあ、これまでもこれからも人前でむやみに使う気はない。
『そろそろ、念話をやめるが何か聞きたいことはあるかの?』
いきなり聞かれても思い浮かばないな。まあ、何か聞きたいことが出来たらまとめておこう。
とりあえず、
(ゴコウさんは戦闘系スキルを持ってます?)
『もっとらんよ。生半可なスキル持ちには負けることはないがのう』
うん、やっぱりゴコウさんは規格外だな。
すりおろしニンニク入りポーション。絶対不味いですよね。
おそらくすりおろし生姜入りポーションもある。




