第18話 チートではない
side シロキ
ゴコウさんとの試合に勝利した後、俺は正座をさせられていた。
魔法の技術は褒められたものの、捨て身での攻撃、それも死を計算に入れた戦略はだめだったらしい。
まあ、それに異論をはさむこともできない正論だ。
だからおとなしく正座をしている。
「それにしてもシロキさんは、レベル1なのに魔法がすごいですね。普通あんなふうに分割なんてできないですよ」
「あー、あれな」
確かに普通なら難しい。いや、炎を分割したり自由に操ったりするのが難しいのは確かなのだが、何よりも、鍛練することができないのが、問題なのだ。
「ふつうはレベル1だと魔力切れで魔法が全然使えないんだろ? 俺も最初のうちはすぐに魔力が切れたりしてな。そうするとそのあとは鍛練できなくなるわけだ」
「そうですよ。練習してないのにできるなんて天才としか言えないじゃないですか」
「ところがどっこい、そうじゃないんだな」
「どういうことです?」
「さっき言ったように、俺には酒とケーキを出す魔法が使えるわけだ」
「はい、それがどうしたんですか?」
「これがいくらでも出せる燃費のいい魔法なんだ」
「つまり?」
「いくらでも魔法を練習できる」
そういって手元に酒を出して、操ってみる。
まずは手のひらにお様程度の小さな球体を作る。このクオリティには自信がある。
隠れて練習するときの基本形としているからだ。手の中に隠しながらこれを維持するという訓練だ。最初は視界の中になければ維持することができなかったが、慣れれば、両手に一つずつ隠しながら、歩くことも可能になった。
一度形を崩して、次の形へ。できたのは酒の人形。目の前のモデルに似せようとするがなかなかうまくいかないな。
「すごいですね。こんな精密な魔法を見たことないです」
「たぶん上には上がいるだろうけどな。酒を操ることでほかの人より練習時間をとれるのが大きなアドバンテージになっているのは間違いないな」
そもそも酒の魔術以外の魔法を使うとすぐ魔力切れになる。高火力、もしくは繊細に使えば数分の練習すらできず、小規模な魔法の練習でも一時間と持たない。
対して酒の魔法の練習なら規模が大きくても一日中でもできる。常人の十倍以上の練習量をとれるのだから成長するのは当然だ。
「しかも念話なんかも使ったそうじゃないですか。私いきなり必要ないじゃないですか」
「昨日まで使えなかったんだぞ? しかも一分も持たない欠陥魔法だ」
本当に燃費が悪すぎるのだ、一分と言ったが、魔力が最大でも三十秒と持たないかもしれない。日常会話に使うなど到底できない。しかも一方通行では会話にならない。あくまでこれは相手に意思を飛ばす魔法でしかないので相手も念話が出来なければ意味がないのだ。
「なんにしても継戦能力に欠けているんだよな。瞬間的に魔法を使えるとしても、殺傷能力のある魔法は火の魔法が三発、雷の魔法が二発くらいしかできないからな。さっきの魔法で火の魔力も切れたしな」
「……シロキさん」
「なんだ? なんか変なことを言ったか?」
アドが俺のことあきれたような目で見てた。
「普通、何種類もの魔法を使えないですよ」
「え、何? ゴコウさんとかいろいろ使えそうなんだけど?」
そういえば、ゴコウさんの魔法もそんなに見ていないな。通信の魔法や氷の魔法くらいか?
「いえ、別に使うだけなら使えますよ? ですけど才能のない魔法を使うとすぐに魔力がなくなるじゃないですか?」
いや、当然のことじゃないか? と思うが、どうにもニュアンスが違う。
詳しく聞くと、俺の魔法の使い方が少々特殊らしいことが分かった。
俺の場合、火の魔力で火の魔法を使い、雷の魔力で雷の魔法を使う。それが当たり前だと思っていたが、そこが間違いらしい。
普通の人はそういった使い分けができないらしい。属性の区別なく魔力を取り出し、魔法を行使する。
例えば火の魔力が80、雷の魔力が20の人が火の魔法を使う場合、全部で100の魔力のうち10の魔力を取り出す。その魔力のうちに含まれているであろう大体8の魔力を使用して魔法を使うのだという。逆に雷の魔法の場合2の魔力しか使えない。
魔力の無駄じゃね? と思うがそれが一般的らしい。
「いえ、異世界人の方はたいてい魔法が得意な方が多いというか、スキルで魔力消費がバカみたいに少ないんで、そんなことも気にしてないはずです」
「え、何? 俺も異世界人なんだけど?」
こっちの世界基準なら才能ありそうだけど、異世界人のくくりだとダメっぽいんだけど。
「なんででしょうね? 食べ物を出せるなんてことは聞いたことはないので、珍しいスキルのは間違いないですね」
「……珍しくてもな。ほかの異世界人には魔法のスキルが標準装備か。簡単に魔法使いになれ、る……な……」
「どうかしました?」
「……アド、もしかして異世界人の多くが俺位の年の男じゃないか?」
「え? どうでしょう。確かに男性が多いような」
うん、魔法使いになれるんじゃなくて、すでに魔法使いなんじゃないかな?
異世界人のほとんどに不名誉な称号がある疑いを持つのはやめよう。俺にはその称号があるのに、その魔法使いになれるスキルがないのだから確定じゃない。
「まあ、これでアドの修行が決まったな」
「え?」
「魔法が属性ごとに使えるようになれば、かなり有利になる」
「そうですか? 火の魔法が一発しか使えないのから土の魔法がもう一発使える程度にしかならないですよ?」
「レベルが上がれば、大きな違いに変わるだろ」
今は小さな違いだが、後々大きな差となる。
ならば修行の時間だ。
あ、まだ正座続けろ? はいわかりました。
シロキはチートではありません。何しろ異世界人は魔法を湯水のように使えますからね。
シロキの場合酒を浴びるほど飲めますけどね。




