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第12話 買い物

「遅いですよ。シロキさん何してたんですか」

 不服そうに言うが自分の立場をわかっていないようだな。

「せっかく、お土産に軽食を買ってきたのにいらないのか」

「シロキさん。おかえりなさい。お仕事お疲れさまでした!」

 変わり身早いな。面白いやつだ。

 ゴコウさんも呼んで買ってきたサンドイッチを広げる。最初は昼を食べない文化だと思っていたが、村を歩くようになって、食べる人と食べない人がいるのが分かった。ゴコウさんは基本食べない派である。時折、近所のおばちゃんからお惣菜をもらうと食べることもあった。

「アド。ゴコウさんはどういっていた?」

「ゴコウさんは報酬に関しては全然いらないそうです。というか、畑仕事の報酬の一部をシロキさんを泊めた必要経費と私への依頼料としてもらってたので十分すぎるんだとか」

 アドはうまそうにサンドイッチを頬張る。合間に喋っているというのに、黙って食べているゴコウより速い。

「あー、かなり働いたからな」

 ゴコウが報酬を受け取っていたのは知っていた。その一部を差っ引いていたのも知っている。というか目の前で差っ引いているのでやましいことがないのはわかっている。通貨の価値が分かった今、なお納得の金額であるが。

「それ、単純に必要経費分しか引いてないからさすがにもう少し払わないとな」

「ゴコウさんは、まじめに働いてくれた分俺の評価が上がったから気にするなって言ってましたよ?」

「まあ、それでもずいぶんとお世話になったんだ。気持ち程度のお礼の品でも準備するかな」

「そんなところが妥当ですかね」

「それではシロキさん。行きましょう」

 ぺろりとサンドイッチを食べ終えたアドは立ち上がった。

「ん? もうナゴヤに向けて出発するとか言わないよな」

「ええ。流石にそんなこと言いませんよ。流石に今から出たら野宿になりますからね」

 じゃあどこに?

「冒険者ギルドです」

「ほう? なんでだ?」

「ギルドに行くのは主に身分証を作るためですね」

「ギルドなら身分証を作れるのか? っていうか冒険者ギルド以外のギルドもあるような口ぶりだな」

「ええ、いろいろありますよ。冒険者ギルドのほかに商業ギルドや薬剤師ギルドなんかがありますね」

「ちなみになんで冒険者なんだ? 他のだとだめなのか?」

「誰でもなれるのは冒険者ギルドなんです。商人ギルドはかなりのお金が必要ですし、薬剤師ギルドのほうは一定以上の技術を持った薬剤師に弟子入りすることで可能だったかと。冒険者の審査が緩い理由は多少の素行の悪人でも、町のために命がけの仕事だからです」

「命かけて積み上げた功績が身分を証明するわけか」

 はい、とアドはうなずく。

「ギルドに所属する利点はいろいろありますが、例えばお金を預けることもできるんですよ」

 さすがにそんな大金をもって歩くわけにはいかないでしょう? とアド。

「まあ、確かに大金をジャラジャラ持つ趣味もないな」

 リリエの葉っぱをゴコウに売れば大金になる。信頼できる場所に預けるということは必要だろう。

「大体大銀貨三枚くらいで次のギルドのある街に余裕でたどり着くので多めに持っても金貨一枚分程度ですかね」

「そういっても、まず預ける前に買い物したほうがいいかもな。護身用の武器とかないし、あ、武装しちゃダメとかないよな?」

「ええ、ないですよ。むしろ武装しないで町の外に行く人は護衛が着くようなお偉いさんだけですよ」

「あと、魔法って使っていいのか?」

「ええ、というか畑耕したりするのに使ってたんじゃないんですか?」

「ああ、まあな」

 主にディーゼルが耕していたのだが、わざわざ訂正するものでもない。

「むやみに危険な魔法を使ったり、人に向けて使ったりしなければ問題になりませんよ。」

「なるほど、そこらへん気にしなくてもよかったか」

「火の魔法とか土の魔法は使わないほうが無難ですね。燃え移っても困りますし、地面をえぐっても迷惑です。そうでなくても難癖付けてくる人がいたりするんで、やっぱり街中で使うのはやめたほうがいいですね」

「気を付ける」

 俺が気を付けてもディーゼルが掘り起こしたら意味ないけどな。

「あとは、異世界人の人は珍しい魔法を使えたりします。流石にそういった魔法は控えたほうがいいです」

 ありますか? というような視線は受け流しておく。

とりあえず、俺とアドそしてゴコウさんは一緒に武器屋に向かう。

 ちなみにゴコウさんの案内は必要ない。畑仕事であっち行ったりこっち行ったりするときに村にどこに何があるのか確認済みだ。もちろん中に入ったことはないので看板で何の店か判断できるところだけなのだが。

 店に着き、武器が並ぶのを見ると心が躍るのを抑えきれない。男心をくすぐるのだ。

 とはいえ、武器は武器。相手を傷つけ殺すための道具だ。それを忘れて買うほど俺も子供ではない。

「ゴコウさんがいうには、高いものより身の丈に合ったものを買うほうがいいそうです。高い鎧を付けた人は金持ちっていうのは偏見ですけどね。不要なトラブルに巻き込まれないためには無駄な装飾はないほうがいいのは間違いないですね」

「まあ、ここら辺は見てただけだ。むしろ悪趣味だと思ってたところだ」

 俺が見ていたのは宝石のちりばめられた宝剣だった。これを使うのはあほなんじゃないかと。流石に悪趣味すぎてワクワクもしない剣だったな。

「……魔法の効果とかついている。そんな剣じゃないよな」

 俺の目には魔力が宿っているようには見えない。その上むやみやたらに宝石をちりばめているため、耐久性にも問題がありそうだった。

「私の目から見てもなまくらですね。あ、ゴコウさんもバカ貴族の中のバカのほうが使うものだって言っています」

 バカげた宝剣があったところから離れたところで足を止める。

「ざっと見た感じ、ここらへんが現実的な値段か」

「値段がわかるんですか?」

「数字は文字が限られるからな。ゴコウさんの店で覚えた」

「価値はわからなかったのにですか?」

「ゴコウさんの店の薬はピンキリでかなり差があってな。銅貨一枚から買えるものから金貨五枚のものまであったぞ。薬効もわからないのにそんなんじゃ価値なんてわからんだろ?」

「確かに、それで分かれというのも酷ですね」

「値段が安目で、品質を維持しているのはここらへんか」

 この店は主に武器と防具を分けたうえで値段や質で商品を分けているようだ。単純に魔力がこもっているなど、条件がいい剣はほかにあったが桁が違う。流石にそこまでいいのを買うと防具も旅費もなくなってしまう。

 さて、俺はどんな武器を持つべきか。

 長剣、短剣、レイピア、斧、ハンマー、弓、ボーガン等々あるが、

「弓とかダメだな。絶対に味方に当てる自信がある。アドの後頭部に矢が生えることになるな」

「絶対やめてくださいね」

 顔でアドの顔が引きつっている。

「斧やハンマーも趣味じゃないというか、重いのは旅をするだけで体力を使うから却下」

 あと、隙が大きい武器は怖いというのもある。そうなると、

「長剣やレイピアあたりか」

 さすがに投擲に使うような短剣をメイン武器にするには攻撃力もリーチも短い。まあいざと言う時のサブウエポンとして買うのはありだろう。

 とりあえず方針が決まったところで、長剣を両手でもって軽く振って試していく。使えないことはないがしっくりこない。最近鍬を使っていたこともあり、ある程度重量があったほうが手に合うかと思ったが武器と農機具とは勝手が違う。農機具ならば重さに振り回されても地面に突き立てるだけなのでよかったのだが、戦闘となると振り回されて隙を作るのは愚行でしかない。

 代わりに片手剣、レイピアなど持ってみると非常に扱い安い。だが少々頼りない。それを補うには盾か鎧か。

 いくつか目星をつけておき防具を見に行くことにする。

 アドは俺がなかなか決めれないでいるので、自分の興味のある売り場に行ってしまった。

 防具は一度試着した後はたいして悩まずに決めることとなった。金属鎧は重く関節の動きを阻害されたので必然的に皮鎧を選ぶことになった。

 そして盾のほうも意外とあっさりと決まった。

 ミントが人の目を盗んで中古の木の盾へ飛んでいき、これがいいというようにアピールしたのだ。

 ミント働きすぎじゃね? リリエの葉をくれたし、薬草を育てるわ、加護を与えるわ。ほんと最初に寝まくってたのが嘘のよう……。いや、それ以外の時は寝てるわ。俺の中から出てわざわざパーカーのポケットで寝てるからな。

 その木の盾も当然買った。安定のミント印。

 それに合わせて片手剣を買っておく。ある程度盾と重さを合わせている上、軽いため機動力を保てる。少々威力が低い気がするが、そこは魔法で補うことにしよう。

 別行動をしていたアドのところに行ってみる。ちょっとお高い短剣のところでうなっていた。

「うぅぅ。高い……でもこれがあれば。ああ、あの時とあの時お肉を食べなければ……。でもおいしかったなぁ」

 思い出したのか、今にもよだれをたらしそうな顔をしている。

「買いたいのか?」

「買いたいというか、必要なんですよね。解体用ナイフ」

 駄洒落か。俺が買いたいのかと聞いたのが悪いんだが。

「今私の持っているナイフ壊れかけなんです。解体に時間がかかって効率が悪いです。当然時間がかかる分危険が増します」

「なるほど冒険者の必需品か。それじゃあ、俺は買っとくか」

「買えない私への当てつけですか?」

 恨みがましい目でこっちを見るな。

「しばらく一緒に行動するんだろ? 俺は解体の方法も知らないからしばらくアドに任せざるを得ないから、当然貸すぞ。場合によってはナイフはやるよ」

 獣の解体なんぞしたことがないので最初は任せるしかない。俺もやるつもりだが、むやみに時間がかかるようならばアドの言うように危険が増す。ならばナイフはアドに預けてしまったほうがいい。

「ぜひ買うべきです。これなんかおすすめですよ。解体ナイフで有名なブランドヤブラ工房の万能解体ナイフ。これ一本で小さなネズミから中型の魔物まで解体できますよ」

 俺の言葉にコロッと態度を変える。

 ほんと面白いやつだ。

 ナイフはそれなりに高価なものであるが、アドは持ち逃げなどしないだろう。そんな器用な生き方ができるようにはとても見えない。

 まあ、持ち逃げされたらその時はその時であきらめるだけだ。俺が人を見る目がなかった、それだけだ。

 装備をすべて買い、アドに解体用のナイフを預ける。

 子供が欲しかったおもちゃを手に入れたようにキラキラした目でナイフを眺めている。甥っ子におもちゃ買ってやったときの事思い出したな。

 やってることは女に貢いでるようなもんだけど、全くそんな感じがしないな。

次は24日ごろ更新したいと思います。

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