第三十八話 おならの価値
意味不明なステップを十分近く見せられたゆかとゆいは反応に困っていた。
二人の反応が何もないことにまー君も戸惑い、どうしていいかわからずに黙ってしまっていた。
三人とも何をすればいいかわからなくて沈黙が続いていた。
何かまたとんでもないことをやってしまったと思っているまー君と、あのへんなステップが何の意味があるのか本当にわかっていないという事で戸惑っているゆかとゆい。
永遠に続いていしまうのではないかと思われた静寂はほんの小さなきっかけで崩れてしまった。
ぷぅ~~~~~~ぷっぷっぷぷぷぷ
どこからともなく聞こえてきたその音の正体を察したまー君は思わずその方向に顔を向けてしまった。
そこには顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしているゆいの姿があった。
何かを察したまー君は中腰の姿勢になって腹筋に力を入れると同時に体の中にある気体を一気に体外へ放出するイメージを持って力を解放した。
ぶぼっっ
何とも形容しがたい大きな音が部屋の中に鳴り響くとまー君は照れ臭そうに頭をかきながら二人の方へ向き直っていた。
「ごめん、ちょっと我慢出来なくて出ちゃった」
照れ臭そうに笑っているまー君を見ながらゆいは少しだけ目を潤ませながら聞こえるか微妙な声量で謝ってからまー君の肩をポンッと叩いた。
「ちょっと、おならの音凄すぎるよ。ビックリしちゃった」
「ごめんごめん、世界最強の再挑戦者なんで出るものが大きくなりすぎちゃった」
「もう、モノには限度ってものがあるでしょ。って、お姉ちゃんどうしたの?」
ゆいが慌てている姿を見てからゆかのことを見たのだが、お酒を飲みすぎたのではないかと思うくらいに顔が真っ赤になっていた。いったい何があったのだろうと不思議に思っていたまー君と、苦しそうな表情を浮かべているゆかを心配しているゆい。二人が自分のことを心配していることに気付いたゆかはゆい以上に泣きそうな顔をしていた。
「ゆいちゃんごめん。まー君もごめん」
なんで謝られているのかわからない二人は沈黙の時以上に戸惑っていた。
ゆかが二人に謝る理由の見当が全くつかなかった。むしろ、謝るのは自分の方ではないかと二人は思っていたのだ。
「ちょっと、なんでお姉ちゃんが謝るのかな。お姉ちゃんは謝ること何もしてないと思うんだけど」
「だって、まー君はゆいちゃんがおならをしたのをごまかすために自分が悪者になっておならをしてくれたじゃない。それなのに、私はお姉ちゃんなのにゆいちゃんをかばうことも出来なかったんだよ。ゆいちゃんがしたおならをごまかすために私もおならをしようと思ったんだけど、ゆいちゃんとまー君みたいにおならをすることが出来なかったんだもん。だから、私一人だけ何もしてない悪い子みたいで、本当にごめんなさい」
「ちょっと待ってもらっていいかな。私がおならをしちゃったのは事実なんで否定することでもないんだけど、お姉ちゃんがそれを言っちゃったら私のためにおならをして私のおならをごまかしてくれたまー君の苦労が無駄になっちゃうんじゃないかな。そもそも、三人しかいないのに三人ともおならをする必要もないんだし、それについて言及する必要もないと思うんだよね。だって、まー君が私のおならをかき消すように凄い音を出してくれたので終わった話なんだよ。そこで終わらせてくれればいいのに、私がおならしたことを蒸し返すようなことを言わないでくれた方が良かったんじゃないかなって思うんだよね。でも、お姉ちゃんが私のために頑張ってくれているってのは嬉しいことだよ」
「うん、わかってはいるんだけど。私だけおならをしてないのは仲間はずれみたいでちょっと寂しかったかも」
「いや、その仲間外れなら寂しいよりも嬉しいって思った方が良いんじゃないかな。自分で言うのもなんだけど、こんな密室で三人しかいないのにおならをしちゃうってのは女の子としてどうなのかなって思っちゃうよ」
「でも、そんなゆいちゃんの事をかばってくれてまー君ありがとうね。ゆいちゃんの音はいつもよりも可愛らしかったし、まー君の音は凄く大きくてびっくりしたよ」
「ねえ、いつもより可愛らしいとか言わなくていいから。そう言うこと言うとまー君に誤解されちゃうでしょ」
この姉妹は本当に仲が良いなと思いながら見ていたのだけれど、ゆかの言っていることはゆいにとって言ってほしくないことなのではないかとも思えた。普段のおならの音も気になるのだが、可愛らしくないおならであるのなら聞かない方が良いんだろうなとも思っていた。
「なんだかさ、零楼館乳首郎が言っていた以上にまー君っていい人なのかもしれないね」
「そうだね。ゆいちゃんのおならのこともかばってくれたしね。アレって本当に自然に出ちゃったの?」
「我慢できてたならしてたよ。自然に出ちゃって止めようと頑張ったんだけど、無理だったんだよ」
「そうなんだ。だから最後の方は連続で出てたってことなんだね」
「そんな解説しなくてもいいから。まー君も笑わないでよ!!」




