第十三話 シスターに悩み相談をしよう
「ひと段落着いたことだし、帰るとするか」
思わず口にしたその言葉は誰にも届いていないと思っていたのだが、じっとこちらを見ている老人の存在に気付いた時には恥ずかしいと感じていた。自分の声が聞こえるような距離ではないと思っていたけれど、この店の人達なら聞こえているんじゃないかという不安が少しだけ心の底で囁きかけてきていた。
「旦那、もう帰るなんてもったいないですよ。当店にはまだまだ選りすぐりの美少女たちが今か今かと旦那の指名を待ってる状況ですからね。どうです、もう二三人いってみるのもいいんじゃないですか?」
「そう言われてもね。お腹一杯になった後にお風呂に入ったら眠くなってきちゃって、今日は帰って休もうかと思ってたところなんだよ」
「それだったらここで少し休んでいったらいいと思いますよ。癒しのプロもたくさんいますし、家に帰って一人で寝るよりも疲労が取れるのは間違いないですから」
「そんなこと断言してもいいの?」
「問題ないです。旦那が何か悩んでいることがあれば打ち明けてみるのもいいんじゃないですかね。シスターは癒しだけではなく旦那の悩みも親身になって聞いてくれますよ」
「シスター?」
今まで何度も冒険を繰り返し、様々な苦境に立たされていたり大きな悩みを抱えていたことのあるまー君は幾度となくシスターに助けられてきた。聖職者であるシスターとそのようなことをした経験は今まで一度もなかったけれど、何かを期待させるには十分なシチュエーションだと感じている。
未成年であるという事だけが不安材料ではあるけれど、最後の一線を越えなければ問題ないだろうと甘い考えを抱いていた。
もしかしたら、あのスポーツドリンクに何か入っていたのではないかと思うことにした。そう思っていたら、自分は悪くないと言えるだろう。そんな気持ちになってしまったとしても、何か入れられていたんだとしたら仕方ないよね。
自分は何も悪くないと言い聞かせていた。
誰かに責められているわけではないが、自分の心の中では言い訳をたくさんしていた。そんな事をする必要なんてないのだけれど、言い訳はたくさんたくさんしていた。
あらためて通された部屋は小さな椅子が三脚とお菓子がいくつか乗っているテーブルしかなかった。
ベッドもお風呂も無く、話を聞くためだけの部屋にしか思えない状況であった。
悩みを打ち明けるという建前がある以上は強く言えないが、横になれるスペースくらいはあっても良いのではないかと思ってしまった。
「失礼しまーす。おじさんからこの部屋に行くようにって言われたんだけど、お兄さんが私たちのことを指名してくれたってことかな?」
子供特有の少し甲高い声に驚き後ろを確認すると、そこには女児服を完璧に着こなしている少女が立っていた。
シスターと言えば修道服を着ているものだと思い込んでいたまー君は部屋に入ってきた女児を見て驚いてしまった。
ただ、驚いてしまったのにはもう一つ理由があった。
「お兄さんが私たちを指名してくれたって話だけど、私たちみたいな小さな女の子を指名するなんて、変態さんなのかな?」
「駄目だよお姉ちゃん。せっかく指名してくれたのに変態さんなんて言ったら悪いよ。今まで私たちを指名してくれたのは変態さんしかいなかったって事実はあるんだけど、このお兄さんも他の変態さんたちと同じかはわからないじゃない。ほら、ちゃんと服を着て待っててくれているんだよ。このお兄さんは変態さんなんかじゃないと思うよ」
「それはまだわかんないんじゃないかな。変態じゃないって自分を偽っている可能性だってあると思うよ。私たちを指名している時点で普通じゃないんだし、まだまだ警戒しておいた方が良いんじゃないかな?」
「そうは言うけど、おじさんの話ではこのお兄さんは未成年だから大丈夫だって言ってたよ。未成年に手を出したら、私たちの方が怒られちゃうんじゃないかな?」
「それもそうだね。じゃあ、今のところは警戒レベルを一段階引き下げてもいいかもね。でも、まだまだ油断はしちゃダメだよ。このお兄さんって、なんだかすっごくエッチなこと考えてそうだからね」
「それは私も思ってた。この世界にやってきた再挑戦者の中で一番不純な動機で時代が違ったら死刑になってたかもしれないもんね」
お姉ちゃんと妹だと思われる二人が自分のことを警戒していることを心外だと思っていたまー君ではあったが、この世界にやってきた理由がとんでもなく不純で大っぴらにすることが出来ないという事は理解していたので反論は出来なかった。
だからと言って、こんな小さな子供相手に欲情するはずがないと思っていた。のだけれど、上着を脱いだ二人が見せる健康的な肩とおへそをついつい見てしまった。
その視線に気づいたお姉ちゃんはとっさにおへそを手で覆い隠したのだが、妹の方は何も気付いていないのかそのまま靴下も脱ごうとしていた。
「ゆいちゃん、このお兄さんはやっぱり変態だと思うから気を付けた方が良いよ」
「ええ、どうしてお姉ちゃんはそんなこと言うの?」
「だって、このお兄さんって凄くエッチな目で私たちのおへそを見てたんだもん。私たちを指名するあの人たちと同じような目だったよ」
「本当かな。お姉ちゃんの勘違いなんじゃないの?」
「そうだったらいいんだけど、やっぱり警戒して損はないと思うよ」




