第一話 小悪魔的
小悪魔的と呼ばれる女性は意外と身近にいるかもしれないが、本物の小悪魔を召喚してしまったのはこの世界でも零楼館乳首郎以外にはいないのかもしれない。
まだまだ成長途中といった感じの小悪魔は大悪魔や中悪魔と比べると肉体的に見劣りはしてしまうけれど、その内に秘めたポテンシャルは計り知れないものがありそうだ。
「ボクと契約した君はいったい何を望むのかな? 今以上の地位や名声なんて君には必要ないと思うし、普通の人間である君がそれ以上肉体的に成長することなんて無いだろうし精神的にも強くなれるとは思えないんだけど。君が繰り返しているトレーニングは強化ではなく維持のためだって自分でも気付いているだろうから言うけど、君の肉体も精神も今以上に成長することは不可能だよ。再挑戦者ではない君には成長限界というモノがあるんだってわかってはいるよね?」
「うすうす気付いてはいたけれど、こうもはっきりと言われるとそうなのかもしれないと思ってしまうな。でも、お前たち悪魔は平気で嘘をつくと思うし、それって嘘じゃないよね?」
「さあ、どうだろうね」
小悪魔が悪魔的に微笑むのは何か意味があるのだろうか。零楼館乳首郎はやや警戒したまま微笑み返してみたが、それに対して小悪魔はスンとした状態で真顔になっていた。
零楼館乳首郎は大いに戸惑っていた。
「結局のところ、君はボクに何を望むのかな?」
「普通の人間ではまー君に勝てないという事が判明した」
「それって、戦う前からわかってたことなんじゃないの?」
「そうだけど、かいりちゃんみたいにワンチャンあるんじゃないかって人もいるはずなんだよ。だから、お前にはまー君を倒してもらいたい。それが無理だとしたら、倒せる手段を見つけてほしい。それが俺の望みだ」
「なるほど。君の望みは単純だけど何よりも欲深いね。いいね、君みたいに強欲な人に会うのはボクは初めてかもしれない。いや、悪魔がこの世界に顕現してから一番強欲な願いを告げていると言ってもいいんじゃないかな」
「そんなにたいそうな事でもないと思うんだけど。あれだけの魔力を生贄に召喚したお前なら、まー君を超える力を持っていてもおかしくないよな?」
「そればっかりはどうだろうね。まー君の底を誰も見たことがないわけだし、ボクよりずっとずっと強いって可能性もあるんじゃないかな。もしかしたら、ボクのパパよりも強い可能性だってあるからね。ちなみに僕のパパは●●●●●だよ」
「ごめん、聞き取れない」
「人間の限界にいる君でもボクのパパを認識することは出来ないってわけか。でも、気にしなくてもいいと思うよ。上位の天使だってボクのパパを感知することが出来ないって話だからね」
存在を認識することすら出来ない悪魔がいるという事を認識することが出来た零楼館乳首郎は考えることをやめた。これ以上深く考えたところで何も解決することはないだろう。そう思うと、小悪魔のパパのことを追及しても仕方ないと思えたのだ。
「じゃあ、ボクなりにまー君を攻略させてもらうことにするけど、異論はあるかな?」
「倒してくれるならなんだっていい。出来ることならみんなが納得する形で終わらせてもらいたい」
「別にいいけど、ボクはあんまり人に見られるの好きじゃないんだよね。ほら、隠しておきたいところとかあるじゃない。君だって一つや二つくらい人に言えない秘密とかあったりするよね?」
「そりゃ、秘密はあるけど、見られて困るようなことがあるのか?」
「困るっていうか、あんまり大っぴらに公開するようなもんじゃないと思うんだ。君たち人間はそう言うのを見せるのが好きな人もいるんだろうけど、ボクたちはそう言うのはあんまり公開したりしないし。でも、サキュバスになりたい子は進んで公開したりもしてるかもしれないね」
「ちょっと待ってもらっていいかな。サキュバスって言ったけど、それってどういう意味?」
「どういう意味って、まー君を攻略するにはサキュバスみたいに相手の望む体験をさせてあげればいいってことでしょ?」
「??」
「まー君を攻略するためにボクが夜の勝負を仕掛けるって話でしょ?」
「!!!!」
零楼館乳首郎は小悪魔の考えを理解した。理解はしたのだけれど、自分が思っていた攻略とは別の物だったためにどう答えていいのか迷っていた。
まー君を攻略してくれるのであればそれで問題はないのだが、壱萬と弐名の犠牲を払って召喚した悪魔が戦闘ではなく夜の戦いに挑もうとしているという事を何と説明すればいいのだろうか。そこは大きな問題であった。
「夜の勝負って、お前はそっちの方が勝算あるのか?」
「どうだろう。こればっかりは相性もあると思うんで何とも言えないけど、再挑戦者だって普通の人間なんだし悪魔的なテクニックで骨抜きにしちゃえば良くないって感じかな。どんなに強い人間だって、下の脳は煩悩にまみれてるでしょ。それに、今のボクってまー君の好みど真ん中って感じの体みたいだからね」
「成長前の果実……いや、何でもない。そこまで自信があるというんだったら、お前に全部任せてみることにするか。普通の戦いよりも勝ち目があるかもしれないしな」
「じゃあ、さっそくだけど、君に一つお願いしてもいいかな?」
「お前の願いをかなえることで俺に見返りはあるのか?」
「もちろん、ボクの願いを聞いてくれたらボクのパパに神を牽制しておいてくれるように頼んでおくよ。多分、君がちょっと強欲なことをお願いしちゃったから神の裁きが下されると思うんで、その対策としてパパに頑張ってもらおうってことだね」
神の裁きがいかほどの物か想像もつかないが、きっといい事にはならないだろう。まー君を倒すために出来ることは何でもやろうと決めていた零楼館乳首郎は素直に小悪魔の願いを聞くことにした。
「ボク一人じゃ厳しい戦いになっちゃうと思うんで、かいりちゃんともう一人凄そうな人を紹介してほしいな。サキュバスはさすがに無理だと思うんで、天空の民とかで良さそうな人を紹介してもらってもいいかな?」
「いいよ」




