八月一五日③
魂の共同体ネットワークのブログを検索した。やたらと大きな活字の多用と統一感のない配色の、いかにも素人くさい作りだった。「代表者自己紹介」と表示されたリンクをクリックすると、先ほど本橋に対して高圧的な態度をとっていた人物が、似てもにつかないほど爽やかな笑顔で写っている写真が表示された。写真の下には、
『私は永年派遣労働者として働きました。何度も雇い止めという名の解雇で職を失った私は、会社から搾取され続ける労働者のために自ら立ち上がらなければと痛感したのです。私は思います。「労働は商品ではありません」みなさん、一緒に立ち上がりましょう。私たちは、そんな皆さんを全力で応援します!』
とメッセージが綴られ、相談ダイヤルの電話番号が点滅しながら左右に動いていた。「労働は商品ではない」は、名文句だが実際にはILOのフィラデルフィア宣言の受け売りだ。それをさも自らの言葉のように綴る辺りに、この人物の本性が見え隠れする。
最新の記事は一週間前の日付で、「杉並区役所に対し、斎藤幸雄さんの生活保護申請を受理させました!」と、大きな活字で打ち込まれている。何も実名で掲載することはないだろう、本橋は東郷のエゴイスティックな性格を想像し、嫌悪を感じた。しかし、東郷はどのようにして依元と連絡をとっているのだろうか。依元は何故一度も署に連絡しないうちに東郷のところへ駆け込んだのだろうか。この件は、依元本人と連絡がとれれば解決する目処が立っており、問題はただ彼の電話が通じなかったことだけだった。しかし、東郷という人物が代理人のような顔をして介入してきたために新たな問題が加わってしまった。人間というものは、おおよそ自分の利益にならないことはしない。東郷の指定する口座に会社が賃金を支払っても、本人の手にはそのうち一部しか渡らないだろう。最悪の場合、本人に知らされぬまま東郷らが全額着服してしまうかもしれない。
おそらく、明日にでも東郷から催促の電話がくるだろう。本橋は、検索結果が表示されたウインドウを閉じた。




