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エピローグ 愛するお肉と旦那様

 


 感動の初夜から4ヶ月後。


 季節は夏を通りすぎ、あの人との思い出である紅葉の季節に移り変わってまいりました。


『イレーネ』のお披露目も無事大盛況で終了しました。

 お披露目会の2日後から、店頭販売も行われており、連日お客様が買い求めております。


 問題の花の部分は、洋酒を混ぜたクリームで薔薇を作成し、上から蜘蛛の糸のように細く糸飴がけをしたそうです。


 この提案をしたのが、他でもないマルグス様でした。


「イレーネの魅力は繊細さだけではありません! 時に可愛らしく、時に妖艶に、時に力強い! 飴細工だけでは表現しきれない魅力がたくさんあるんです!!」


 と、商品会議で熱弁したそうです。

 夫であるマルグス様がそう言うなら、という事で方針転換。

 熟練したパティシエしか作れない、精緻な薔薇の飴細工は却下。

 地方のパティシエの方も作れるように、クリームに変更。


 詳しくは教えてくれませんでしたが、クリームの絞り方?が通常とは少し違うそうです。

 そこで、普通のケーキと違う特別感を出したそうです。


 クリームに洋酒を混ぜ、妖艶さを表現。

 最後に『蜘蛛の糸のように細い』(サリーナ様いわく、ここが重要だそうです)糸飴がけで優美さと繊細さを表現したと。


 私がマルグス様やサリーナ様のお役にたてた事は嬉しいのですが、熱弁した事を聞いた時は、隠れたくなりましたわ。


 ブルタンのお義父様やお義母様、お義兄様からはひやかされ、「孫の顔は早く見られそうだ」「熱々ね」等のお言葉をいただきました。


 商品会議に参加してその発言を聞いた方達からは、にこにこと微笑まれ、暖かい目で見守られました。

 店舗にお邪魔した時、そのような目で見られ不思議に思っていましたが、謎が解けました。


 サリーナ様には無事に謝罪ができました。

 不躾な態度をとってしまって申し訳なかったと。

 サリーナ様の優雅で気品ある姿に嫉妬してしまったと。

 流石に、愛人云々は伏せましたわ。

 サリーナ様を不愉快にさせる情報でしかありませんもの。


 私は謝罪をしにきたのですから、相手を不愉快にさせる情報は必要ありません。


 優雅で気品ある~と言ったところで、サリーナ様のお顔がおもしろい具合に歪みましたわ。

 何故でしょう。


 謝罪後、サリーナ様は戸惑った表情をしつつ、私を許してくださいました。


 そんなお優しいサリーナ様ですが、残念ながら逆プロポーズは失敗してしまったようです。

 お相手の方が、「自分はまだ亡くなった妻を愛しているし、娘を一番に優先したい」と。

 メロウライトの指輪もサリーナ様にお返ししたそうです。


 ですが、それで諦めるサリーナ様ではありませんでした。

 娘さんが15歳になる、5年後に再度プロポーズしにいくそうです。


「諦めてなんてやらないから! 首を洗って待ってなさい!!」


 と、啖呵をきられたそうです。

 勇ましくて格好いいですわ。


 サリーナ様は、武者修行?の為に王都のブルタン本店をはなれて、地方のブルタンスイーツ店をまわるそうです。

 自分の腕やスイーツにあう材料を見つけたり、デザインを考えたり、地方のお菓子の特色を身に付けに行くんだそうです。

 ついでに、地方のスイーツ店に所属するパティシエの腕も鍛えにいくとか。


 無能当主は辺境の地で監視付きの軟禁になりました。

 家の格が高すぎる事、前当主の功績で処刑は免れました。

 が、財産没収、家名取り上げ等々の罰が下されたそうです。



 私は日々、充実した生活をおくっております。

 愛する人との日々というものは、本当に幸せなものですね。



 プニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニプニ。


「あの、イレーネ?」


「なんですか? マルグス様」


 リビングのソファーに二人で座り、お茶を飲んでいます。

 久しぶりにマルグス様が1日お休みなので、二人でまったりしておりましたの。

 マルグス様の肩にもたれかかりながら、お腹のお肉を揉んでいるところですわ。


 至福の時ですわね。


 プニプニプニプニ。


「……」


 プニプニプニプニ。


「……」


 プニプニプニプニ。


「気になっていたんですが、イレーネは私と私のお肉のどちらが好きなんでしょうか?」


 あら、ご自身のお肉に嫉妬ですか?

 可愛らしい事です。


 私は、愛するマルグス様に告げました。


「気持ちのいいお肉も、それを揉ませてくれる優しい方じゃなければ意味ありませんのよ。愛していますわ、マルグス様」



 お父様、お母様。

 私は幸せです。



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