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五十六話 幕開け②

「ついたー!」


 小鳥遊さんと相模川さんが、まるで双子のように同じ反応をする。

 そう、着いた。つまり、この日がやってきてしまったのだ。


「ふふふふふ」


 相模川さんが不気味に微笑み、小鳥遊さんが振り返って腕を上げた。


「たのしもー!トリプルデート‼︎」


 本気で来て欲しくなかった。


「いえーい!」


 翔太はノリノリでぱちーんと相模川さんとハイタッチを交わし、白撫さんは慣れないのかキョロキョロしている。

 今日やってきたのは、ウニバーサルスタジアムジャパン。通称USJ。国内有数のテーマパークで、休日のみならず平日でも人で溢れ返るほどの人気を誇る。多くのアトラクションがあり、その道のオタク曰く、『毎日来ても飽きない』らしい。

 ちなみに、昨日の時点ではラウサンに行くと言う話だったのに今日USJに来ている理由としては、ふと相模川さんが「USJとかも行きたくない?」といったところ、満場一致でそっちの方がいいとなったからだ。


「ねっ、いこいこ!」


 僕は小鳥遊さんに腕を掴まれ、引っ張られた。


「わっわっ」

「待て」


 そんな小鳥遊さんを、春原君が止める。


「本当に大丈夫か?」

「だいじょぶだってー!」


 何が大丈夫なのかというと、色々騒ぎになる事だ。春原君も小鳥遊さんも芸能人であるため、異性といると何かと世間が騒ぐ。それを危惧した春原君は帽子や紙マスクをしてきているが、小鳥遊さんは全く顔を隠していない。それどころか、USJでしか買えないというカチューシャを持参してすでに楽しんでいる。


 じゃあ、なぜ隠さないのかというと。

 小鳥遊さんは、以前なにかのインタビューで『彼氏が欲しいんですよね!……ん、もう高校で作る。決めた!あ、小さい頃に仲良かった男の子がいるんですよね!』と言っていたからだ。一時期それで少し事があったものの、事務所など各方面から許可はもらっているとのこと。ちなみに、男の子っていうのは僕らしいんだけど、全く覚えてないですはい。


 ん?僕がなんで詳しいかって?……言い忘れてたけど、小鳥遊さんも春原君も声優を兼ねてるからですよ。それも、僕の好きな作品の!


 まあそんなことはさておき。


「一旦、集合時間とか決めたほうがいいんじゃないかな?」


 早く早くと急かす小鳥遊さんを引き止めるように、僕は提案した。


「そうだな。んじゃ、閉園時間に門のすぐ近くで!」


 それ、大丈夫かな…………ていうか、バラバラで移動するのは決定事項なんだね。


「おっけー!じゃあいこー!」


 小鳥遊さんは話が終わるとすぐに僕の手を取って走り出した。

 ふと、白撫さんと目があった。




 一番最初にやってきたのは、魔女の家がモチーフの売店。


「ほら、これどう?」

「これつけるのか……」


 僕は小鳥遊さんからカチューシャを勧められていた。


「なら、こっちは?」

「ははは…………」


 正直言って恥ずかしい。なんていうか、恥ずかしいのだ。


「んもー、なにがいいのー?もう、私と一緒のやつね!」


 そう言った彼女がつけているのは黒くて丸い耳がついたカチューシャ。その耳の間には、リボンも付いている。


「はい!」


 いつのまにか小鳥遊さんは僕のカチューシャの代金を払ってきていたようで、それを僕に渡してきた。


「ンッヒーマウスのカチューシャだよ!」

「ねえまって今どうやって発音したの」

「あ、そうだ!すこし屈んで!」


 つっこみながら受け取ろうとすると、小鳥遊さんはツッコミをスルーしつつ差し出していた手を引いて、少し背伸びした。


「うん?」


 僕は言われるがままに背を曲げる。すると、ぽふっと両手が乗せられた。


「……はい、もういいよ!」


 僕の頭には、カチューシャが。


「あ、ありがとう」

「うん!」


 あー、多分僕の顔赤いわ。だって熱いもん。

 それを悟られないようにしつつ、僕らは店を出た。

 こうして、波乱のトリプルデートが始まった。


「今……自然にできたよね…………?」

ここまで読んでいただきありがとうございます。

後書きなしのパターンです。

4/27 P.S.書くのを忘れていたんですが、ラウサンじゃなくてウニバなのは理由がありますのでお気になさらず。あと、その事を本文に書き足しておきました。

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