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第二十七話 色々決めて

「おし、じゃ説明からだな。まず、俺たち三人で話してたんだけど、泊まりで」


「絶対行く!楽しそう!」


 あれっ、今白撫さんの右手に録音中の文字が見えたような……


「よし、じゃあ決定だな。で、何しに行くかっていうと」


「うんうん」


「勉強合宿だ!」


 それを聞いた相模川さんは、スンッと白目になった。


「ごめんやっぱ忙しい急用作るから」


 すると、白撫さんは無言でスマホをタップした。当然といえば当然だけど、相模川さんの声が流れ始める。


『絶対行く!楽しそう!絶対行く!楽しそう!絶対行く!楽しそう!』


「……卑怯だよ、まどか」


 すると、白撫さんが若干鋭い目つきなった。これアレだ、相模川さん、蛇に睨まれたカエルってやつだね。


「逃がしませんよ?」


「ぐぬぬぬぬ……」


 ということで、相模川さんも半ば連行されるように一緒に行くことになった。ドンマイ。




 それからなんやかんやあれこれ決めた。大体三十分くらいかかったと思う。


 内容は、こう。


 明日から六泊七日で集合は駅前に朝八時。着替えは七日分持っていってもいいし、洗濯もできるから二、三日分でもいいらしい。まあ、洗濯させてもらうのはちょっと失礼かもしれないし、雨が降ったらダメだから七日分持っていくことになった。後、観光もするようだからお土産とかも買っていけそうだ……家族くらいしかあげれないけどね。


「あ、そうだ」


 家族、と脳内にワードが出たことで思い出した。


「みんな、家族がいる方の家には帰らないの?」


「あっ」「いえ」「ん?」


 すぐに三者三様の答えが返ってきた。翔太は忘れていた、白撫さんは帰らない、相模川さんはそもそも質問の意図がわかっていない、と。


「ま、まあ、どうにかなる」


 翔太はすごくマズそうな顔をしながら言った。


「あ、私は家族と住んでるよ」


 なるほど、だからよくわかってなかったのか。


「じゃ、みんな家には帰らないから問題ないんだね」


 翔太は問題ありそうだけど。


「おーし、んじゃ明日の準備するからもう帰るわ」


「あたしも帰んないとだ。ママに手伝ってもらおー」


「じゃーな」「ばいばーい」と、二人とも部屋を出て行った。


「……さて、僕も準備しないとな」


「ですね」


 …………どうしたんだろう。白撫さんはずっと座ったままだ。


「どうしたの?」


「え、えーとですね」


 白撫さんがそわそわし始めた。ゲーセンに続き、今日二回目である。


「そ、その、何といいますか……こういうことをするのが初めてでして。何を持っていけばいいのかわからないんです……」


 なーるほどね。あれか、友達とお泊まりしたことない感じか。ん?僕も無いよ。


「とりあえず着替えと勉強の用意をカバンに入れて、空きがあったりまだ持てそうなら持っていきたいもの持っていけばいいんじゃない?」


「確かにそうですね。では、私もこれで。準備してきますので」


「わかった」


 白撫さんが立とうとしたところで、僕はとあることに気づく。


「あ、そうだ。今日の勉強はどうするの?」


「……お休みにしましょう。明日が気になって集中できないといけませんし」


「わかった」


「では、お邪魔しました」


 そう言うと、白撫さんは自分の部屋に戻って行った。


…………あれ、翌日に遠足を控えた小学生だろ。


 さてさて、僕も準備しますかね……パジャマは四着ある。服は着替えも含めて上下十着くらいか。


 今は五月と思えないほどに暑くて服の生地が薄いから、わりと容量が少なく済んだ。まあ、トランクが大きいのもあるんだろうけど。っていうか、めっちゃ大きい。


 後は、リュックに小さい肩掛けバッグを丸めて入れて、充電器と勉強道具に財布と本を何冊か。あ、トランプ入れとこ。


「よし、完成!」


 そして、終わってから気づいた。


「……僕、服十着も持ってたんだね」


 明日、急遽決まった勉強合宿のスタートである。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

僕、お泊まりしたことあるんですよ!すごくないですか!?



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