第十六話 第二回補習ー前編
「……でーーが……」
今は文法を説明してもらっているが、正直言って全くわからない。え、なに?なんなの?受動態?不定詞?わっかんないよ日本語喋れよ!
「…………聞いてますか、一ノ瀬君?」
頭の中をハテナで満たしていると、白撫さんがジト目で言った。やめて、そんな目で見ないでくれ!
「いや、聞いてはいるんだけどさ、正直言ってイチマイクロメートルすら理解が及ばないよ」
こればかりは仕方がないと思う。だって、なにがどうわかんないのかがわかんないんだから。
「では、もう『なぜ』と考えないで、こういうものだと割り切ってしまってください。そうすればとりあえずは覚えれるはずです」
おお、たしかにそれはいいかもしれない……
「でも、そうすると応用ができなくない?」
「では、どうして1+1が2なのか、説明できますか?」
白撫さんが、いきなりそんなことを聞いてきた。
「え?いや、それは一個と一個があれば二個になるでしょ?」
「一個二個ではなく、数字だけの話です」
と、なると……
「たしかに説明できない」
「でしょう?でも、みんな当たり前のように計算して、応用問題だって解いています。それと同じです」
なるほど、別に理解しなくてもいいのか。
「まあ、学校には1+1が2の証明をできる人もいるかもしれませんね。というより、授業でやるかもしれないです」
「そうなの?」
「一応、うちの学校はトップですよ?」
あ、そういえばそうだった。完全に忘れてたよ。
「さ、話を戻して、勉強をつづけましょう」
「…………そろそろ休憩にしましょうか」
お、もうそんな時間か。
「では、夕飯を……私が作ってあげます」
そういうなり、白撫さんはカバンからピンクのかーわいいエプロンを出した!
「え、な、なんで白撫さんが作ってくれるの?」
ちょっとよくわかりません。
「今日分のご褒美です」
…………あーはいはいはいなるほどね?つまり君は僕をやっすいご飯で済まそうというわけか!そうはいかないぞ!
「では、座って待っていてください」
そういいながら、彼女はエプロンをつけてキッチンへ向かっていった。なんだか張り切ってる気がする。ま、ゆっくり待ちますか。
「あ、冷蔵庫の中のもの、使わせていただきますね」
「はいよー」
「できました」
三十分ほど経つと、きつね色の衣の見事なとんかつが出てきた。
「おお……」
見た目だけで言えば、僕より遥かに上手い。なんていうか、こういうところでも女の子だなぁって思っちゃうよね。
「では、食べましょうか」
白撫さんが座ったところで、僕らは手を合わせた。
「「いただきます」」
とりあえず、サラダからいく。野菜は先に食べないとね。
白撫さんも、同じことを心がけているようだ。
そう考えながら、サラダを食べる。
「…………!」
あれ、なんだか甘いぞ?
「白撫さん、このサラダってどうやって作ったの?」
「いえ、とくになにもしていませんが」
僕が尋ねると、白撫さんはさも当然といったように答えた。いや、サラダになにもしないのは当然なんだけども。
それでも、甘い気がする。もう一口食べてみるけど、やっぱり甘い。あ、これあれだ、美少女が切ったからだ。それしかないでしょ。
と、頭の中であーだこーだと議論をしているうちにサラダを食べ終わり、いよいよとんかつだ。
一切れ箸で持ち、口に入れる。
サクッ。
「……おいし」
そこからは早かった。食べようと思わなくても自然と口に吸い込まれていった。白撫さんは毎日こんなもん食ってたのか。そりゃ美少女になるわけだ(?)
「ごちそうさまでした。ありがとう、美味しかったよ」
僕がそう言うと、白撫さんはニコッと笑った。
「おそまつさまでした」
その笑顔は、とても可愛らしかった。
さて、勉強の続きだ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
美少女の料理になりたい()