副作用に責任を持てません
南辺境の朝は早く一番鶏より早く騎士団が早朝模擬戦で上げる咆哮で目覚める。
日が昇ると暑くて模擬戦どころでないらしい。
どうやら魔石についての報告書を読んでいるうちにうたた寝してしまったらしい。
『増殖』の魔石は生命力があるものを、増える事や増やす事に特化している。
増やそうという力がどの様に働くかは未知数だったが生物は多産・植物は豊穣の傾向があるようだった。
王都から返って来た報告書と王都の魔石研究所がもう少しサンプルになる石を欲しがっている連絡が来たが稀な魔石なので手に入り次第と返答しておいた。
実際はまだ少量手元に残している。
魔石を直接加工する事は反動でどんな代償が発生するか分からない。
研究され尽くした魔石なら代償を吸収する術式が見つけ出されているが未知の魔石ではそうは行かない。
流石に直接魔石を使用しての治験は後回しにした。
目を付けたのは『増殖』の魔石が廃棄されていた庭。
侍女の鑑定眼を使用して植えられた植物から少量の加護か確認できた得られる加護は少ないが反動が小さい…と思われる。
干した棗椰子から始めてみる事にした。
希望する騎士団を募りAとBの2チームに分けて計測する事にした。
加護のある干し棗椰子を食べるチームと加護の無い干し棗椰子を食べるチームに分けトレーニング後に食べて貰うことにした。
開始前と1週間後の筋肉量や運動能力を計測し能力の変化を確認した。
加護のないものだけにして2週間ほど間を開けて能力変化の値が落ち着いた所で2つのチームが食べる干し棗椰子を逆にした。
どちらも加護ありの干し棗椰子を食べた方が筋肉量や運動能力が高く値に現れた。
ただ、加護ありを食べている期間は通常より興奮しやすい傾向があるようで加護なしを食べているチームに比べチーム内での干し棗椰子を奪い合うトラブルが多く確認された。
彼らの甘党っぷりが同時に確認できた。
…量の調整が課題になった。
続いて乳の出が悪い産後の母親に対しても干し棗椰子は有効のようだった。
家畜で試していたが干し棗椰子の量が多すぎるとガルガル期が強く出たり乳腺症が起きるため細かく刻んで焼菓子に混ぜる等の微調整を行った。
干し棗椰子を微調整しながら出産を控えた妊婦に干し棗椰子を与えた所、出産時の出血で命を落とす割合が減ったと報告が来て胸をなで下ろした時に厄介な話がきたのです。
王都と連絡を取りながら此処まで進めて来たが王妃が気付いたらしく王宮機関の実績に成るように加えろと言い出しました。
「義姉は南辺境の実績を横取りしたいようだな…。」
夫のこめかみに血管が浮き出ている。
「何とかなりませんかしら?」
コテンと首を傾げた所
「任せておけ。」
夫は頼もしい笑顔で返事を返してきた。
更にその後、王妃からの連絡が途絶えたので油断していた。
夫と臣下は南辺境騎士団なのだ。
政治的な知略には向いていない。
王都陥落の知らせは暑さが一段落し王都の家族や領地の領民を招いて気候の都合で遅れた盛大な婚礼の最中に届いた。
実際、起きた事象を理解するのに時間がかかった。
夫は直接的には王都に攻撃はしなかった。
あくまで直接的には…なのだ。
夫達が行ったのは万が一王妃に素材を奪われても研究に支障が出ないように何時も以上に魔獣を狩って狩って狩りまくった。
ただそれだけなのだが狩りまくった結果生態系に異常が生じた。
騎士団が狩りまくったことで大型魔獣が餌にしていた魔獣がいなくなったのだ。
人を喰っても良かったのだろうがドーピングした南辺境騎士団に返り討ちにされるより狩りの楽な狩場に移動した。
楽な狩場…鍛えた辺境をスルーしてさほど鍛えていない怠惰な騎士しかいない王都を目指したのだ。
結果一夜で王都は陥落する事になった。
救援を呼ぶ余裕などないまま。
婚礼の誓いを行う場で驚いた顔の夫と顔を見合わせた。
出会った頃は陽炎のようだった髪は増毛剤の影響で立ちのぼる湯気程度には増えていた。
次回は最終、息子の視点で。
『薄毛が遺伝しない事を祈ります。』




