諦めていた嫁が来た
スター・ウォーズのグローグー
ちょっと淋しい頭髪含めて可愛いですよね。
「噂以上に別嬪さんじゃないですか。」
獅子の立髪を思わせる赤毛の側近がニヤニヤと笑いかける。
甥が捨てた元婚約者がとんでもない悪女だと思っていたのだろうか?
王都から身一つで夜通し移動してきた彼女は窶れてはいたが凛とした美しさがあった。
「レオ殿もそう思うか?手放すなど甥殿はどうかしてる。」
参謀の猩々の様な大男が丸太のような太い腕を組んだ。
「これ、王都荒れるんじゃないっスかぁ~?」
「黙れ、ティガー」
金髪を虎を思わせる縞柄に刈った男が音程が外れたような口笛を吹いたのでむさ苦しい野郎集団内が微妙な空気になっている。
しかし…政略で決まった婚約を破棄するとは。
馬鹿なのか?
いや…馬鹿だったな、昔から。
義姉が必死に取り繕っていたが勝手に婚約破棄して南辺境に送りつけたことを知ったら地団駄踏むだろうな。
まず、嫌がらせは相手が嫌がるから成立する。
彼女に私を押し付けて嫌がらせした気になっているが甥に嫁ぐより彼女が幸せを感じるようであれば根底が覆ってしまう。
なぜなら甥との婚姻は彼女が望んだものではないのだから。
「今、ここに居る者だけでも聞いて欲しい。
私は王都から嫁いできた妻を幸せにしたい。
どうか力を貸してほしい。」
声を上げた所、室内に割れるような咆哮が広がり無骨な拳が突き上げられる。
南辺境騎士団達は単純なので歓喜に染まった。
彼女を不幸にしたい甥と彼女を幸せにしたい私の無血戦争の火蓋が切られたようなものだ、甥が居なくても彼女を幸せにするつもりだけど。
書類上の嫁が去った方角を目で追い椅子に身を預ける。
石机に映り込む自分の顔は生まれつき目つきの悪さに加え日差しや乾燥によるダメージで薄毛になっている。
女性ウケはしないので見た目で彼女を幸せにする事はできないのは間違いない。
なら整えるのは環境だ。
「書類は間違いなく提出されているようですがガチギレした王妃が猛牛の様に帰還予定のようです。奥様のご家族は現時点では静観するようです。」
猩々に似た参謀のオラルは視蟲を使って調べた情報を端的に報告する。
視蟲とは契約召喚獣の1種で蜘蛛の様な見た目で背の辺りに蛇のような虹彩を持ち幼児の握りこぶし程度の個体が多い、召喚主に見た情報を伝えるため主に諜報活動に利用されている。
「婚姻の書類は有効なら王妃が今更何もできないんじゃないッスか?」
「黒を強制的に白にしようとするのがあの人の性分だ。」
「じゃ、コレはこの状態で問題ないッスね。」
ニッと笑いながら潰れた赤い視蟲を摘み上げて見せてきた。
…王妃の側近が使っていた物だ。
恐らく嫁に影代わりに付けていたのだろう。
「構わん、彼女は此方の保護対象だ。」
王妃が慌てて帰ってくるのは王妃側の視蟲から婚約破棄の情報を得たのだろう。
…色々手遅れだが。
「身の回りの物で困っているか聞き取りを頼めるか?私が直接行くと本音を出せない可能性がある。」
「不足している物の確認は連れてきた侍女のサポートにウチのカミさんを付ける形にしましょう。」
やはり妻帯者はこういう時に頼りになる。
「任せる。」
サムズアップして参謀が部下数名を連れてさがった。
「『お前を愛すことは無い』と戯曲見たいなマネしたら張り倒すつもりでしたよ。」
「大丈夫だよレオ、主は枕に張り付いた抜け毛に墓を作って弔うくらいにお優しいから。あ、裏庭の抜け毛の墓地を纏めて共同墓地にして置きましたが気付きました?」
「いつの間に!…、いや…その話は広めないでくれ。」
念願の嫁…まだ夢からは覚めたくない。
次回、付いてきた侍女目線
「住めば都だし郷に従う所存です。」




