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急遽南に嫁ぐことになりました

テンプレだけど見ないパターンを目指したいその2。

アンチルッキズムと北辺境を見飽きたので南辺境が自己課題。

揺れる馬車は南に向かう。


見える風景は石造りの家並みから街道沿いに植えられた木々や黄金色の穀物畑と木造家屋に移り変わった。

正面に座っている侍女は出立時から涙を流し続けそろそろ目玉が溶けるのではないかと思う。

流れる風景を眺めながら今までの出来事を振り返る。


私の婚約者は第一王子だが未だに立太子できていないがその婚約者からまるで三文劇のような婚約破棄を告げられた。


人望も能力もないがそれでも何とかしたいと思う激甘陛下と王妃は色々手を尽くした。

早めに諦めてくれれば被害は最小で済んだと思う。


何とか立太子させるため婚約者に据えられた私と側近達は殿下がボロをださないまま王位継承できるよう集められた運命共同体だった。


…だったの…私達の努力は失敗に終わった訳で。


陛下と王妃が外遊で不在の時期を狙って殿下が婚約破棄と同時に破棄の理由が会ったこともない平民の特待生に対する嫌がらせらしいが冤罪でありお粗末な話だった。


「食堂のランチプレートに彼女の嫌いな玉ねぎを多めに入れるとはお前には慈悲がないのかっ?!」

低い鼻を天に向け殿下は声を張り上げた。


…しらんがな、彼女が玉ねぎ嫌いなの今知ったくらいだし。

横目で見た側近達(戦友)は疲れた遠い目で表情を失っている。

こうして私達は王妃よって集められた私達は王妃に謝罪できぬまま王子に隠れて円陣組んで解散した。


「「「お疲れ様デシター。(棒読)」」」


そして会場から身一つで殿下が手配した馬車に問答無用で乗せられ今に至る。

行き先は砂漠に囲まれた南辺境へ嫁入り、ご丁寧に婚姻の書類は殿下が王族の権限(圧力)で提出済なんだそう。

家族の耳にはそろそろ状況が届いている頃でしょうが父は使える駒を失ったと思うくらいかしら?

それ以前に第一王子(クソ)はこれで貴族の後ろ楯を全て失うことになるでしょう。

下手をすれば現在の王族も存亡が危うい。

危ういが私はもう関係ない。


ぼんやり眺める風景はやがて幾つかの田園地帯を抜け乾燥し草木がまばらに生えた場所に小さな村があった。


「悪いな、馬での移動は此処までが限界なんだ。」

御者の男から突然声を掛けられた。


御者が指した先には半裸に近い格好の御者と約2mあると思われる大蜥蜴が繋がれた蜥蜴車が見えた。

体が重く感じたのは疲労だけではないようだ。


馬車と一緒に侍女を返そうとしたが彼女は横に首を振り。

「辺境にお供させて下さい。」

キュッと結ばれた侍女の口元に強い意志を感じ私は帰れと言えなくなってしまった。


南辺境はこの村で宿を取った翌日の夕刻には着くだろうと蜥蜴車の御者は私達に説明をした。

荷物も持たず身一つで王都から送り出された事にはかなり呆れていた。


私達は村で1泊し翌朝には蜥蜴車で出立した。

説明された通り夕刻に辿りついた南辺境は時折砂嵐が吹く砂漠の中に建つ要塞都市で蜥蜴車に乗せられたまま黒鋼で出来た重い要塞の門を潜り領主の屋敷と思われる建物の前で停車した。


顔合わせができないまま嫁ぐ事になった南辺境公爵は現在の王弟に当たり私より10歳年上で独身のままだったのは劣悪な南辺境に嫁ぎたがる者がいなかった事もあるが醜悪な見た目だという噂だったが話す人により醜悪な見た目が異なるため眉唾ではあった。


案内された謁見の広間の第一印象は凶暴な野獣集団とその後ろに野獣集団を見下ろすように鎮座するハゲタカ…。

南辺境領主の我が夫は非常に髪が薄かった。

回廊から吹き込む風に毛髪がゆらゆらと陽炎のように揺れる動きから目が離せないでいる。

誰が呼び始めたか知らないが薄毛公爵という不名誉な称号が彼にある。


「王都よりただいま到着いたしました。」

失礼にならないようカーテシーを行う。

アレ(第一王子)に振り回されて…しかし、本当に女性を身一つで放り出すとは。」

南辺境騎士団(野獣集団)がザワつく。

鋭い瞳を細めて語りかける書類上ではあるが夫の声は低いが非常に聞き取りやすかった。


「お気遣いありがとうございます。」

入浴したい、着替えたいという気持ちを飲み込んだ。

隣で疲労が限界突破した侍女が睡魔を堪えようと眉間に皺を寄せていた。

侍女の疲労を察したのか野獣集団の1人が2拍手を打つと何処からか女性が現れた。


現れた女性に伴侶がアイコンタクトを取り

「王都の服は此方では暑すぎる、荷物を持ち込まなくて正解かもしれないな。今日は体を休めるといい。」


私は侍女と共に礼を告げ与えて頂いた部屋に下がることにした。

今後の事は分からないが入浴して身を整えてもらい南部式の夜着に身を包む頃には夢の中に旅立っていた。

次回、薄毛さん視点。

「諦めていた嫁が来た」

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