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EP.1

最悪の寝起きだ。とても良い夢とは言い難いものを見たせいで、俺こと富永秀吉くんの寝起きは最悪である。


誰が開けたのだろうか、黒いベージュのカーテンから対比のように明るい日光が体を照らす。勉強机の上には昨日の晩にやり残した宿題のノートが乱雑に置かれていた。


どこか幻想的に見えなくもないいつもの自分の部屋の机の上を見ながら、宿題をやり忘れたことも幻想だったりするのではなかろうかと考えてみたが…現実だった。


その時俺のベッドに女の子が1人。機嫌の悪い俺を気遣ってくれたのだろうか、顔を出していた。昨日、高松氏とゲーセンに行った時に出会った娘だ。




ちなみに女の子と言ってもぬいぐるみである。


俺はぬいぐるみはベッドの上に置く派の人間だ。ゲーセンで取ったラブ○イブのぬいぐるみが寝起きの主人を出迎えているだけである。


しかし…、そのぬいぐるみの効果は絶大!

全速前進〜ヨ〜ソロ〜!!!

前言撤回、最高の朝である。

朝日もサンシャインやね!

寝ぼけているせいかいろいろ混ざってしまった気がするがまぁいいだろう。




『お兄ちゃーん!朝やぞーー!起きろー!』


ドアをノックする音と共に可愛らしくも芯のある力強く透き通った声が聞こえる。


朝からオタク全開の兄貴をドアの向こうから呼ぶのは妹だ。

ノックもなく部屋に入ってパンツ一丁の兄貴を見て赤面したり、オタク色に染まった兄貴を見て

『昔の兄貴はもっとカッコよかったのに…』

とボソッと声を出す妹ではない。


よくできた妹御だ。ノック大事…すごく大事。

野球と年頃の高校二年生にとってノックはすごく大事だよ。


『お兄ちゃんまだ寝てるのー?入っちゃうよー?』


『起きてるよ、すぐ下行くから。』


『早くしてねー!ご飯冷めちゃうよー!』


答えた後、俺はすぐに制服に着替え始める。


『ダサいよなぁ…』


思わず本音が漏れてしまうほど気に入らない制服の袖に腕を通す。制服はブレザータイプで上下どちらも深緑色。ネクタイには高校の校章がプリントされていて柄物になっているがとにかくダサい。

Yシャツの上にカーディガンを着ることで少しでも見栄えを良くしようと試みたが0が0.5になったくらいだろう。


デザインした人のセンスが爆発している制服は、ある意味生徒に課せられた三年間の呪いのようなもの、でもしょうがない芸術は……爆発だからな!!!



心の中でシャナクを唱えながら呪いの解除を試みつつ、一階に降りてリビングに着くとそこには見知った顔が2つ。


『秀、早く食べなさい。美晴が作ったご飯が冷めちゃうでしょ。』


『お兄ちゃんの制服、いつみてもダサいね!』


『兄貴に対してダサいとはなんだ!まったく……いただきます。』


父がこの世をさって三年も立ってしまうとさすがにこの三人の食卓に違和感は感じなくなる。

シングルマザーとして俺たち2人を育てている母親には頭が上がらない。

妹もただの血の繋がった妹ではない。



この美晴ちゃんは義妹だったりするのだ。

最初はギャルゲ設定でウハウハだと思っていたのだが、三年前美晴の両親がどちらも事故で亡くなった事は重すぎる現実だった。


俺から見たら美晴は父の弟の娘さん、いとこの関係に当たる。


容姿端麗、学業優秀、運動はちょっと苦手という同年代の男子はほっとかないだろう。俺が中学生ならほっとかないだろう!

いや、陰キャラの俺には無理だなほっとこう…


スカート丈が短すぎないのが秀吉的にポイント高いわね!!素晴らしい!!合格よ!!


実際、義妹って気を使う存在だから画面の中みたいに幸せな関係を簡単に築けるわけじゃないよ、マジで。恋心なんてもってのほかだし、いろいろ大変だ。



今でこそ仲は良いが以前までは

『秀吉さん』という‘‘さん’’付けだった。


天下統一した人みたいになってるし、ゲージショットの弱点キラーが効きすぎィィィー!


ちなみに俺はパズル派かストライク派かと聞かれたら、ストライク派だ。


パズル派のCMでドロップが全部ハートになるやつ!!

あれは非リアの怒りを買ったね!!


あれを見た後、美晴が赤面してもじもじしながら協力プレイを申し込んできたのだが…


マシンア○ナはソロでもできるぞといったらめちゃくちゃ怒ってたな…空気読めとか言ってたし… よくわからん。。



そんなことを考えながらも手作りの目玉焼きの箸は進む。


『料理もできるなんてうちの妹はいい娘じゃのぉ。』


『もぅ…急に褒めないでよ』


顔は俯いていて見えないが照れているのだろうか?可愛いからやめて!勘違いしちゃうから!惚れたらどうするの!あぶないあぶない。。。


ちょっとした仕草にドキドキしちゃうのは陰キャラの性質かしら?

違うよね!

男の子だからだよね!

陰キャラの性質はちょっと手汗をかきやすいことだよね!俺だけか…。。。


そんな男心を斬り捨てるかのように箱の中のアナウンサーは喋り始める。


『次のニュースです。

春日研究室が遂に高機能性多目的ロボット

の開発に成功しました。』


『また、このニュースやってるー !つまんないよぉーー』


『タイムスリップを実現したとか言ってたわよね…疑わしいものだわ…』


『遂にドラえもん実現かよ。どら焼きいっぱい焼いといた方がいいんじゃね?』


『お兄ちゃん!女の子だったらどうするの!メロンパンも焼かなきゃダメだよぉ!』


俺としたことがそこまで考えがいたらなかったぜ…妹のために無印で座布団買っとくか…


『バカなこと言ってないで早くしなさい!二人とも遅刻するわよ、私は先に行くからね』


『『いってらっしゃーい』』


母が先に家を出てから数分後、美晴も先に中学校に行ってしまった。彼女は今年から中学三年生、受験生にあたる。昨日も夜、勉強してたっけ…優秀すぎる妹御…



それに対して俺はまだ一人でテレビを見ていた。


突如、現れた天才‘‘春日’’が主催する研究室がロボットの開発に成功したという内容。

身体機能、感情、言葉使い、その姿はもはや普通の人間であるという。


それに加えて世間の油に火を注いでいるのがタイムスリップの成功という非現実の実現。それに加えて多数の人を超越する能力の付与。


メディアには一切顔を見せない謎の天才科学者という肩書きも注目度の後押しをしているのだろう。


当初、実験自体を危険視する科学者が後を絶たず、プロジェクトは凍結されたとされていたが陰で計画は進行、そして完成していたらしい。


『SFすぎて実感ないなぁ。タイムスリップとかは金髪の幼女がやらないと味気ないだじゃろ。かかっ…。』


一度でいいから誰も見たことのないそのロボットちゃんをお目にかかりたいものだ。


しかし都会に比べて田舎なこの町には無縁の話なのは火を見るよりも明らか。

ただの田舎町に住むただの高校生が接点を持てるような話ではないことを理解するのは簡単だ。


この田舎町のキャッチコピーが

“50年変わらない街並み”

である時点で可能性は皆無だろう。



特産品は焼きそばのソースとかまんじゅうだっか、地元の人間が知らないグルメは何級になるの?スーパーフライ級?

あふれる気持ちを表すために愛を込めて花束でも送るか!



すでに日本からも住んでいる人からも忘れられているかもしれない故郷へ想いを馳せていても時間はしっかり流れている。


現在の時刻は午前八時

遅刻ギリギリの時間になっているのに気づくと俺はやりかけの宿題を入れたバックを持ち急いで家を出る。


すると、


家の前には少女が一人。


我が家の隣に住む女の子が一人。


幼馴染の女の子が一人。


美しい顔を怒りという感情で紅く化粧した女の子が一人。


どこか気品を纏わせ艶やかな黒色と本人の性格を表しているかのように真っ直ぐと結ぶことなく長い髪をそのままにした大和撫子が一人。



五人の女の子に囲まれたハーレム主人公ではない俺の目の前には、幼馴染の‘‘日向 燈’’ ただ一人が立っていた。








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