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転生したら推しが魔王様になってた件~④三度の結婚式は大パニック!  作者: 銀文鳥


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第十一章(1):五光、集結の総攻撃


竜神フワワの猛攻が、深淵の主を広場の中央へと押し込んでいた。


しかし、深淵の主もまた、無数の腕を繰り出し、おぞましい瘴気をあたりに撒き散らしながら反撃を続ける。


竜神フワワの聖なる光が、次第にその輝きを弱めているのが見て取れた。



「くそっ、キリがねぇ! フワワも消耗してやがる!」



カスパールが、焦燥の色を滲ませた声で叫んだ。彼の放つ魔法も、深淵の主の強固な体には決定打とならない。


アルドロンもまた、冷静さを保ちつつも、眉間に深い皺を刻んでいる。


二人の額には脂汗が滲み、荒い息遣いが聞こえる。彼らの魔力は確実に底を尽き始めていた。



(もう二度と、あの時のようにはさせない…!)



カスパールの脳裏に、苦い記憶がよぎる。


遠い昔、五人で力を合わせても倒せなかった魔物、ヴェクス。


圧倒的な力を持つヴェクスを前に、ルシアンが犠牲となり、異界へと跳んだ、あの絶望の瞬間。


その時の後悔と無力感が、彼の拳を強く握らせる。



(もう二度と、大切な仲間を失わない…! もう二度と、誰も…!)



アルドロンの胸にも、あの時の痛みが深く刻まれていた。


ルシアンを失ったあの日々。

同じ過ちは繰り返さない。


その固い決意が、彼の魔力を一層研ぎ澄ませていた。



『グオオオオオオオオオオオオオオォォォッッッ! 愚かな光め…!』



深淵の主が、竜神フワワの隙を突き、その巨大な腕を真上から振り下ろした。


その一撃は、大地を砕き、竜神フワワの聖なる光をも打ち砕かんとするほどの破壊力を秘めている。



「フワワッ! 危ねぇ!!」



カスパールが叫び、援護しようと魔力を練るが、間に合わない。


竜神フワワも、体勢を立て直す間もなく、その巨大な腕を受け止めざるを得なかった。




ドオオオォォォンッ!!!




広場全体を揺るがす轟音と共に、竜神フワワの聖なる光が弾け飛んだ。


竜神の体が大きく地面に叩きつけられ、聖なる輝きが失われていく。


その体は急速に縮小し、再び小さなフワワの姿に戻ろうとしていた。



「フワワ! おい、しっかりしろ!」



カスパールが駆け寄ろうとするが、深淵の主の新たな攻撃が彼らを襲う。


絶体絶命の危機が、勇者たちを襲ったその時だった。







―――王城の地下聖域では、ローゼリアちゃんがルシアン様と隣に横たわる私の傍らで、その微かな変化を感じ取っていた。


ルシアン様の指先が震え、瞼がかすかに開かれようとしている。


そして、その隣で、私の指先もまた微かに動き、瞼が震え始めた。


ローゼリアちゃんのペンダントの桃色の宝珠が、かつてないほど強く光を放ち、その光がルシアン様と私の全身を包み込んだ。


「ルシアン様…! セラフィナちゃん…! 目を…開けてください…!」


ローゼリアちゃんの必死な願いが、私たち二人の魂の奥底へと届いた。



パチリ、と、ルシアンの瞳が完全に開かれた。


その直後、私の瞳もまた、ゆっくりと開かれた。



ルシアン様の瞳は、深淵の闇を切り裂くような、澄み切った蒼色の輝きを放っていた。


その光が放たれた瞬間、聖域に充満していた重苦しい瘴気が一瞬で晴れ、清浄な空気が満ちる。


彼の体に満ちていた瘴気が、その光に触れた途端、音を立てて霧散していく。


ルシアン様は、ゆっくりと、しかし確かな力強い動きで、起き上がった。


彼の右手人差し指にはめられている漆黒の指輪の宝珠が、まるで目覚めの雄叫びを上げるかのように、激しく輝きを放つ。


その光は聖域全体を包み込み、王城の最上階まで突き抜け、夜空を照らし始めた。



私の意識も、ルシアン様の意識の中から現実へと引き戻されると同時に、彼の目覚めの光に包まれていた。


全身に温かい力が満ち、心臓が大きく高鳴る。



「ルシアン様…!」



彼の蒼い瞳が私を捉えた瞬間、私の目から大粒の涙が溢れ出した。


ずっと、ずっと待ち焦がれていたこの瞬間。


目の前の彼が、確かに私を認識している。


彼の優しい微笑みに、私の心は安堵と喜びに満たされた。



「セラフィナ…」



ルシアン様の声が響いた。


それは、長く失われていた、しかし確かに希望を告げる声だった。


彼の意識は、完全に現実へと回帰していた。


遠くで響く深淵の主の咆哮、そして友たちの戦いの気配を、ルシアン様は瞬時に察知する。



「セラフィナ…ありがとう。そして、みんな…待たせたな」



彼はローゼリアちゃんに優しく微笑みかけ、力強く立ち上がった。


彼のすぐ隣で、私もまた、彼に呼応するように体を起こし、力強く立ち上がった。


ローゼリアちゃんもまた、私たちの目覚めに安堵し、優しく微笑みながら立ち上がった。



ルシアン様の足元から、聖なる光の波紋が広がり、地下聖域の崩壊した天井を修復するように、光の粒子が舞い上がった。―――







竜神フワワが縮小し、深淵の主の次の攻撃が迫る中、アルドロンとカスパールは、その巨大な影に立ち向かおうと身構えていた。


まさにその瞬間、王城の最上階から、夜空を貫くかのようなまばゆい漆黒の光が放たれた。



その光は、深淵の主から放たれる瘴気を一瞬にして押し返し、広場全体を、そして城下町までもを照らし出した。



「な、なんだ…この光は…!?」



アシュレイが、避難誘導の最中にその光景を目にし、驚愕に声を震わせた。


深淵の主も、その光に反応するかのように動きを止め、不快そうに唸り声を上げた。


その光は、彼にとって何よりも忌み嫌う存在であるかのようだった。



そして、その光の輝きの中から、三つの影がゆっくりと、しかし圧倒的な存在感を放ちながら姿を現した。


彼らが現れた瞬間、広場を覆っていた喧騒が嘘のように静まり返り、張り詰めた空気が満ちる。






――漆黒のマントをはためかせ、腰まで届く美しい銀髪をなびかせ、澄んだ蒼い瞳を輝かせたその姿は、まさしく魔法使いの王、ルシアン様だった。その隣には、彼と同じく聖なる輝きを纏い、覚醒したばかりの、私の姿があった。そして、その二人の傍らには、桃色の宝珠を輝かせ、希望に満ちた表情のローゼリアちゃんの姿もあった。



ルシアン様の右手人差し指の漆黒の指輪の宝珠は、夜空の星々よりも明るく輝き、その光は大地にまで降り注ぎ、深淵の主の瘴気を浄化していく。


その姿は、覚醒前よりもさらに研ぎ澄まされ、神々しいまでの聖なる輝きの中に、魔王としての圧倒的な威厳を秘めている。



「ルシアン…!」


「ルシアン様…!」



アルドロンさんとカスパール君は、その光景に目を見張り、信じられないといった表情でルシアン様の名を呼んだ。彼らの目に、希望の光が宿る。



ルシアン様は、広場を見下ろし、深淵の主へとまっすぐ視線を向けた。


彼の声は静かだが、その奥には揺るぎない覚悟が秘められていた。




「深淵の主…お前は、世界の均衡を乱す存在。これ以上、この地で好きにはさせない」




彼はゆっくりと右手を掲げ、漆黒の宝珠に魔力を集中させる。




「闇属性禁呪・虚空の牢獄(ヴォイド・プリズン)!」




ルシアン様の言葉と共に、彼の宝珠から放たれた漆黒の光が、深淵の主の周囲に幾重もの魔法陣を描き出した。


その魔法陣は、瞬く間に球状の檻となり、深淵の主の巨体を包み込む。


檻の表面には、深淵の闇を思わせる漆黒の紋様が浮かび上がり、深淵の主の動きを完全に封じ込めた。




『グオオオオオオオオオオオオオオォォォッッッ!! 馬鹿な…この私が…!』




深淵の主は、初めて明確な焦りの声を発し、全身で檻を打ち破ろうと暴れ狂う。


その度に、檻の表面で深淵の主の魔力が弾け散るが、檻は一切の揺らぎを見せず、微動だにしなかった。



「まさか…そんな力を手に入れてやがったとはな…。これでまた目標が遠のいたぜ、ルシアン様…!」



カスパール君は呆れと同時に、得体の知れない高揚感を覚える。


彼の傍らで、ようやく小さな姿に戻ったフワワが、微かに「キュ…」と鳴き、ルシアン様を見上げていた。


その瞳には、感謝と、かすかな畏敬の色が宿っている。





「セラフィナ、ローゼリア!」



カスパール君が私たちに気づき、声を上げた。彼の顔に、一瞬だけ安堵の色が浮かんだのが分かった。



「カスパール君、アルドロンさん! 遅れてすみません!」


私が声を張り上げると、ローゼリアちゃんもその場に光の波動を放ち、二人の魔力を回復させる。


同時に、私の手には、赤い宝珠がまばゆい光を放つ聖剣ヴォーパルブレードがしっかりと握られている。


更に、ルシアン様のアクスタと婚約指輪が強く輝き、聖剣の刀身にその光が吸収されていくのが分かる。私の聖なる力が、最高潮に達する。



「素晴らしい!これで役者は揃った! ルシアン、総攻撃の準備だ!」



アルドロンさんが鋭い眼光で深淵の主を睨みつけ、ルシアン様に指示を飛ばす。



「分かった。行くぞ、みんな!」



その瞬間、五人の瞳に、同じ記憶が閃光のように過った。


遠い昔、ヴェクスに膝を突き、大切な仲間を失った絶望。


もう二度と、あの後悔を繰り返させない。


誰も、何一つ、この手から零れ落ちるものか。


それぞれの胸に宿る熱い誓いが、互いの魂に響き渡る。




「もう、二度と失わせない!」




ルシアン様の漆黒の指輪の宝珠から放たれる光が、虚空の牢獄を透過し、深淵の主の体内の核を明確に照らし出した。


それは、深淵の主の急所を、仲間たちに示す光だった。



「フン、見えたぜ、デカブツの急所がな!」


カスパール君は不敵に笑うと、ピアスの紫色の宝珠を指で弾いた。



「禁断魔法・虚無螺旋(ヴォイド・スパイラル)!」



カスパール君の足元から巨大な魔法陣が展開され、紫色の虚無の炎が螺旋を描きながら、深淵の主の核目掛けて一直線に突き進む。


虚空の牢獄は、カスパール君の魔法の通過を阻害せず、むしろその威力を増幅させているかのようだった。


その螺旋の炎が深淵の主へと到達する直前、アルドロンさんが叫んだ。



「賢術・精霊の槍(エレメンタル・スピア)! 重力加速!」



アルドロンさんの杖の先にセットされている緑の宝珠が輝くと、大地と風の精霊の力が凝縮された巨大な槍が生成され、カスパール君の虚無螺旋を追うように放たれる。


その槍は重力加速により凄まじい速度と破壊力を増し、虚無螺旋と合体するかのように深淵の主へと迫った。



「私が、さらに威力を増幅させます!」



ローゼリアちゃんも黙っていない。


彼女のペンダントの桃色の宝珠が輝き、二人の攻撃へと向かって、聖なる光の奔流が注ぎ込まれる。


光は虚無螺旋と精霊の槍を包み込み、その破壊力を何倍にも引き上げた。



そして、私の番だ。



「ルシアン様! みんな! 行きます!」



私は聖剣ヴォーパルブレードを構え、聖剣の柄にある紅い宝珠、アクスタ、そして婚約指輪から溢れる力を剣に集中させる。


聖剣の刀身がまばゆい虹色の光を放ち、聖なるエネルギーが凝縮されていく。




「聖剣技・星絆閃(スターライト・ボンド)!」




私は全力で聖剣を振り抜き、凝縮された聖なる光の斬撃を放った。


その斬撃は、アルドロンさんとカスパール君の複合魔法と完璧に連携し、深淵の主の核へと一直線に突き刺さろうとした。



私たち五光の勇者、それぞれの力が、まるで一つの巨大な光の渦となって、完璧な連携で深淵の主へと襲いかかろうとしていた。


その光の渦は、深淵の主の核目掛けて一点に集中し、広場に目を焼くほどの閃光が弾けた。


凄まじい衝撃波が大地を揺らし、深淵の主の耳障りな咆哮が、絶叫へと変わった。



ルシアン様の覚醒により、私たち五光の勇者が、ついにこの地に集結した。




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