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転生したら推しが魔王様になってた件~④三度の結婚式は大パニック!  作者: 銀文鳥


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第四章(4):夫婦の歩み、魔界を巡る旅


三日三晩にわたる大饗宴は、ドタバタと騒がしくも、ついにその幕を閉じた。


魔界で初めて経験する婚礼は、全ての魔族の記憶に深く刻まれる、歴史的な三日間となったに違いない。

私にとってもまた、ルシアン様への愛おしさ、そして彼への尊敬の念を一層深める、かけがえのないひとときだった。



婚礼が終わり、夫婦として新たな生活が始まると、ルシアン様はすぐに魔王としての責務に立ち返った。

山積みの公務をテキパキとこなし、執務室からは魔力を通じた通信のやり取りがひっきりなしに響く。


「ゼフィルス、何か困っていることはないか? 各部族からの報告は滞りなく上がっているか?」


ルシアン様は常に周囲に気を配り、多忙を極める魔王代理のゼフィルスにも労いの言葉をかけ、細やかな気遣いを忘れない。

その姿は、まさしく魔界を統べる王の威厳と優しさを兼ね備えている。




そんな多忙な日々の中、ルシアン様は私に思わぬ提案をしてくれた。


「セラフィナ。少し、魔界を巡る旅に出ないか?」


それは、私たち二人の新しい門出を祝う、待ち望んだ「新婚旅行」だ。

以前にもルシアン様と魔界の各地を巡ったことはあったけれど、あの時はまだ、婚約前だった。今は、正真正銘の「夫婦」。

その事実に私の胸は高鳴り、様々な妄想が止まらない。




旅は、魔王城から離れた、比較的のどかな田園地帯や、小さな集落を巡るものだった。


ルシアン様は、各地の魔族たちの生活ぶりを熱心に視察し、困り事がないか、新たな施策が必要ないかと、彼らの声に耳を傾ける。


「魔王様、奥様! よくぞお越しくださいました!」


行く先々で、私たちは熱烈な歓迎を受けた。特に、私が「奥様」と呼ばれるたびに、その言葉が耳慣れず、くすぐったいような、それでいてじんわりと温かいような、不思議な気持ちになる。


そのたびにルシアン様がちらりと私を見て、満足そうに微笑むのが、また私をむずがゆい気持ちにさせた。



「皆、この新しい時代に期待を寄せている。魔王である俺の、そして王妃であるお前の役目は大きい」 ルシアン様はそう言いながらも、私との時間を大切にしてくれた。




視察の合間に、ルシアン様は私を、かつてプロポーズをしてくれた『魔界で一番美しい場所』へと連れて行ってくれた。



私の手をそっと取り、ルシアン様はあの日のように湖のほとりをゆっくりと歩いた。


「お前を連れて、再びこの場所を訪れることができて、本当に嬉しい」

彼の瞳には、満ち足りた幸福感が宿っている。


「私もです、ルシアン様。あの時は、まさか本当にルシアン様の妻になれるなんて、夢にも思っていませんでしたから……」

私はルシアン様の手をぎゅっと握り返した。



私たちはプロポーズの場所である湖畔の中央へと進み、ルシアン様はあの日のように片膝を突いた。

心地よい風がルシアン様の銀白色の髪を優しくなびかせる。


「セラフィナ。あの時、俺はお前に誓った。そして、お前は俺の妻になってくれた」


ルシアン様の言葉一つ一つに、あの日の重みが込められている。


「今、この場所で、改めて誓おう。俺はお前を永遠に愛し、どんな困難からも守り抜く。お前と共に、この魔界、そしてすべての世界に、新たな時代を築いていこう」


彼の瞳は、深く、そして揺るぎない決意に満ちていた。それは、魔王としての強さと、私への純粋な愛が融合した、彼の真の誓いだった。



私の目には、自然と涙が溢れ出す。それは、あの日の感動をさらに上回る、夫婦として迎える幸せの涙だった。


「ルシアン様……! 私も、ルシアン様と永遠に共にあります! どんな時も、ルシアン様を支え、一番の『推し』として、ずっと応援し続けます!」

私はルシアン様に抱きつき、その温かい腕の中で、二人の未来を確信した。



そして、あの日の感動が再び胸を満たす中、ルシアン様はそっと私の顎を引き上げ、熱を帯びた瞳で私を見つめた。


彼の頭から伸びる黒曜石のような角が僅かに光を放ち、口元の鋭い牙が、彼の秘めた情熱を物語るようにきらめいた。


迷いのない仕草で、彼の唇が私の唇にそっと重ねられる。甘く、深く、そして永遠を誓うかのような口づけが、私の全身を震わせた。唇が離れた後も、互いの熱い吐息が混じり合い、静かな湖畔に二人の愛の証が響き渡るようだった。


「……セラフィナ」


ルシアン様の声は、先ほどよりも少し低く、焦がれるような響きを含んでいた。彼は私を抱きしめる腕に、さらに力を込める。


「この焦がれるほどの想いは、必ずやお前との未来を、より一層輝かせるだろう。そのすべてを、お前との永遠に捧げよう」


その言葉に、私はルシアン様の胸に顔を埋めた。彼の揺るぎない覚悟と、私への一途な愛情が、ひしひしと伝わってきた。



プロポーズの地での甘い時間を過ごした後、私たちは更に、他の田園地帯や小さな集落を巡る旅を続けた。


魔界の民の歓迎を受け、夫婦としての絆をさらに深めた数日間を終え、魔王城へと帰還した。




旅から戻ったある日、ルシアン様は私に問いかけた。


「今回の婚礼の映像記録、セラフィナはどう思うか?」


「はい! とても素晴らしかったです! アルケミーさんの腕も素晴らしいですし、何より、日本の両親にも見せられるのが嬉しいです!」


私の言葉に、ルシアン様は満足そうに頷いた。



(そうだ……このビデオカメラがあれば、もっと色々なことができるはず!)



私は、ふと閃いた。ビデオカメラが、魔界の文化にもたらす可能性に、胸が躍る。



「ルシアン様! もしよろしければ、このビデオカメラ……余分に残っているものがあれば、イザベルやアルケミーさんたちに、譲ってはいかがでしょうか!?」


私の突然の提案に、ルシアン様は僅かに目を見開いたが、すぐに納得したように静かに頷いた。


「なるほど。それは良い案だ、セラフィナ」


彼は、腕を組みながら続けた。


「彼らは芸術に造詣が深い。あの機材があれば、婚礼の記録だけでなく、もっと様々な映像作品を生み出せるだろう。例えば、魔界を舞台にした物語を映像化したり、演劇を記録したり……そうすれば、魔界の文化も一層発展するに違いない」


ルシアン様の言葉に、私は深く感銘を受けた。それは、ただの機械の譲渡ではない。魔界の未来を見据えた、文化振興への大きな一歩を示している。


「きっと、魔界でも人間界のような映画やドラマが作れるようになりますよ!」


私の言葉に、ルシアン様は静かに頷き、その瞳は、新たな時代の幕開けを予感させるように輝いていた。


「そうなったら、絶対にやりたいことがあるんです!」


私は、興奮を抑えきれずに身を乗り出した。




「ルシアン様ファンクラブ魔界支部として、ルシアン様のイメージビデオを制作したいんです!」



「……イメージビデオ?」



ルシアン様は、予想外の言葉に少しばかり戸惑ったようだ。



「はい! 魔王としての威厳に満ちたお姿はもちろんです! 魔界にいる時限定の、あのカッコよすぎるルシアン様を、永遠に映像に残したいんです! ……お仕事をしている真剣な横顔とか、普段の何気ない優しい表情とか! あ、そうだ! たまに子ウサギみたいな魔物を見つけて、ちょっとだけデレっとしてる時のルシアン様も絶対に撮りたい!」



私のボルテージは上がりっぱなしだ。



「あとは……そうですね! 魔界の美しい湖で、ルシアン様が……えっと、キャッキャと無邪気にはしゃいじゃうような! そんな姿も撮りたいです!」


私は、想像しただけで頬が緩む。



「それから、噴火している活火山の前で、クールに佇んでいる横顔とか! 最後は、ルシアン様が魔界への想いを叫ぶ、感動のシーンで締めましょう!」



次から次へと湧き上がるアイデアに、私は目をキラキラと輝かせた。



ルシアン様は、私の畳み掛けるような提案に、一瞬言葉を失っていた。

そして、額に手を当て、深い溜息を一つ。



「セ、セラフィナ……それは、ずいぶんと……盛りだくさんな内容だな」


彼の表情は、若干引きつっているようにも見える。



「カメラマンは、もちろんアルケミーさんにお願いしましょう! あの映像技術は本物ですから! そして、監督は私! ルシアン様ファンクラブの代表として、最高のイメージビデオを作り上げます!」


私は、既に完璧な制作体制を思い描いていた。




しかし、私の熱い想いは、ルシアン様にはなかなか伝わらなかったようだ。


「いや、セラフィナ。イメージビデオなどというものに俺は出んぞ」


ルシアン様の言葉に、私の顔からみるみるうちに光が失われていった。瞳からは輝きが消え、肩はがっくりと落ち、その場に座り込んでしまいそうなほど、私はしょんぼりする。



「……ルシアン様の、尊いお姿を、色々な角度から見たかったのに……」



私の声は、まるで迷子の子犬のように弱々しく、今にも泣き出しそうだった。


そんな私を見て、ルシアン様はふぅ、と小さくため息をついた。観念したように、彼は視線をそらしながら言う。



「……わかった。では、『キャッキャ』は無しだ。そして、活火山の前でクールに佇むのも、あくまで魔王としての威厳を保てる範囲でだ」


そこで一度区切り、彼は少し間を置いて続けた。




「……その代わり、最後は魔界の民に向けた、俺からのメッセージで締めよう。それでどうだ?」




結局、私の目指した「ルシアン様イメージビデオ」は、アルケミーさんの技術と私の監督魂をもってしても、最終的には「魔王ルシアンからの、魔界の未来に向けたメッセージ」という、まるで選挙の政見放送のような、真面目で荘厳な映像作品に仕上がった。


だが、完成した映像を見た私をはじめ、イザベルやアルケミーさん、そしてゼフィルスまで、全員が感極まって大喜びした。ルシアン様の語る魔界への真摯な想いと、背景に映し出される雄大な魔界の風景は、私たち「ルシアン様推し」の心に深く響く。



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