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From the past in the world  作者: 冠 三湯切
9/13

Forest history

 バージニア州、とある森の中。


 「なんだここは・・・」


 サディアが目の前に現れた無人の家について尋ねた。


 「ただの廃墟だよー」


 セイバーは見たままの事を答えた。


 「いや、だからここに何があるんだ?」


 「そりゃ勿論作戦の第二段階、逃避行ってね。ここから少し抜けたとこに空港跡があるの、第二次対戦中に作られたんだけど結局使われなかった」


 「まさか、モルガンがさっき言ってた森の奥深くって・・・」


 テレサは先ほどのモルガンの言葉を思い出した。


 「おっ!テレサちゃんするどーい!モルガンおじちゃんは用意周到なのよ。この森の奥深く、誰も来ないこの場所にこの子をこっそり置いておいたって事」


 少し歩き、視界が開けるとあちこちが草にまみれた滑走路が現れ、その端にポツンと一機の小型のプロペラ機が置かれていた。


 「セスナのスカイホーク?なんだ、観光でもするの?」


 サンディはセスナを眺めて呟いた。


 「んっ!サンディも博識だね〜、このご時世セスナなんて金持ちの道楽でしか使われてないのにさ」


 「セスナは好きだからな。で、そいつでなにを?」


 サンディは改めてセイバーに聞き直した。


 「そこで作戦の第二段階、リチャードは今頃もう自身をアップデートさせた。それをどうやって倒そうか?」


 「マシンガンで蜂の巣にすりゃ良いんじゃねぇか?」


 ダニエルがセイバーの質問に答えた。


 「ぶっぶー!!ダニーだめー、あいつに鉛玉なんて効かないよー」


 「いででで!!」


 セイバーはダニエルの頬を指でぐりぐりした。割とパワーがあるせいかダニエルは少し涙目になっている。


 「んじゃどうすりゃ」


 「簡単、EMPを使う」


 「電磁パルス攻撃?確かにリチャードを機械として考えるなら有効な手段だけど、CIAのサーバーは電磁パルス攻撃にも耐えられる設計の筈よ?」


 テレサはセイバーの提案に指摘した。


 「普通のEMPならね。人間ってのは面白いもんでさ、次から次に対抗策を作るんだから・・・CIAはEMPに対抗出来るサーバーを持っている。なら、軍は何を作ったと思う?答え、そのサーバーすらショートさせる特殊な電磁パルス兵器を開発した。対流動機械サーバー専用EMP兵器をね」


 「なっ!!軍の連中そんなものを!?」


 「まだ試作だけどねー、これはもしも流動機械デバイスを用いた世界規模のテロが行われるような事があった際、クラウドのサーバーのみを破壊するように設計された新兵器なの。今、この世界には一個だけそれがある。それがある場所は国防総省・・・ペンタゴン。そして・・・」


 「っ!!元々の予定なら、CIA長官は今日ペンタゴンに向かう予定があった筈だ・・・」


 サディアは顎に手を置いて答えを導き出した。


 「そっ!正解サディアちゃん!私たちの作戦第二段階はペンタゴンに侵入してEMP兵器を奪取すること!」


 「しかし、あんな所どうやって・・・あそこは軍の中枢だぞ?そう簡単に潜入出来るわけ・・・いや、待てよ?潜入はしない?EMPの発動範囲内なら・・・」


 「ぱふぱふー!!サディアちゃん冴えてるー!!やるのは潜入じゃなくて突撃。何のためにたらふく兵器を積み込んだトラック持ってきてると思ってるの?わたしたちは二手に分かれてこのセスナを使って上から急襲とトラックによる突撃両方を同時に行う。そしてEMP兵器を奪取したその瞬間に兵器を起動させる。兵器の場所に関しては私の脳内地図に載ってるから大丈夫だよ」


 セイバーは作戦の第二段階の説明をした。あまりに派手な作戦の為少し周囲は固まった。


 「あ、ならセイバーちゃんは大丈夫なのか?あんたも一応は機械なんだろ?」


 ダニエルがセイバーへの影響を指摘した。


 「わたしは大丈夫、この身体耐EMPボディって言ってね、電磁パルスはおろか静電気も通さない作りになってるの。そもそもわたしの場合は大元のサーバーを叩かないと効果ないしね。そしてそのサーバーがどこにあるのかいつの時代かすら分からないときたもんだ。だから大丈夫だよ。ただし、問題はあと一つ」


 セイバーは真剣な眼差しでみんなに言い聞かせる。


 「ここからは作戦の第三段階、このEMP攻撃はリチャードのボディをしばらくショートさせる事しか出来ない。時間が経てばまた復活しちゃう」


 「そんな・・・」


 「そんな顔しないのテレサちゃん。モルガンおじちゃんに渡したUSBメモリ覚えてる?」


 セイバーの質問に一同は頷いた。


 「あれは未来の流動機械に関する200ペタバイトにも及ぶデータが入ってたんだけどね?その中にあるプログラムを入れておいたの。一見するとただの有益な情報にしか見えない情報だけど、ここにあるもう一つのUSB。そいつと合わさる事であら不思議、全てのデータを消去するプログラムに早変わりする」


 セイバーはモルガンに渡したUSBと似た物を取り出した。


 「今この現代で200ペタものデータを処理するのは骨が折れるわ、リチャードがそのままデータを取り込んだのなら」


 「今度はテレサちゃん大正解!リチャードはあのデータをそのままCIAのサーバーに転用した。もう既にあいつはウィルスに感染して潜伏期間に入った訳だね。後は発症させるだけ、EMPで動きを止めて、このデータを打ち込む。それが作戦の第三段階、このUSB実はパソコンにぶっ挿す以外にも流動機械にも直接突き刺してデータ送れるから、文字通りあいつにこいつを打ち込むのね」


 セイバーはUSBを注射器みたいに持ってみせた。


 「うっし!そうと決まればさっさと行こうぜ!!」


 「だね、ダニー」


 ダニエルは元気に立ち上がった。


 「あ?何だあの女・・・」

 「っ!!!?」




 パァァァンッッッ!!!!




 窓の外から一発の弾丸が撃ち込まれた。


 「ぐぅあっ!!っっつぅぅっ!!!!」


 ダニエルはその弾丸で肩を撃ち抜かれてしまっていた。


 「サディア!あの民家まで後退して!!そこでダニエルの止血を!!私とサンディが相手する!!」


 「了解!!」


 サディアはダニエルを抱えて民家の方へ下がった。


 「あの女何!?誰!!」


 サンディは物陰に隠れて襲撃してきた女をチラッと見てセイバーに質問した。


 「分からない、あの人はただの一般人。ケネディ国際空港に勤務してるグランドスタッフだよ?それに、サイの接近の気配はまだないし・・・ごめん、わたしも何が何だか・・・この疑問を整理するのに時間かかる」


 突然の襲撃とその正体にセイバーも困惑の表情を見せ、頭をトントンと叩いた。


 「っ!!おいおいあいつ何を持ってる!?」


 サディアが窓の外を確認すると女がRPG-7を担いでいた。


 「あの人!!ド素人!?後ろに木があるとこで撃ったら!!バックブラストが!!」


 テレサは自身が狙われるよりも女の後ろに巨大な木がある事を心配した。


 「テレサちゃん!そんな事心配する前に自分!とりあえず撃って止める!!」


 セイバーはピースメーカーを女に向けた。


 「ダメよセイバー!!あの人はただの一般人でしょ!?一般人は攻撃出来ない!!」


 それをテレサが止める。


 「そうだね。けど撃たれたら全員は庇いきれないよ?だから撃つ。どいてテレサ、あの人もう安全装置まで外しちゃったよ?撃つのは時間の問題・・・うん、だいじょーぶ!!計算完了、わたしを信じて」


 セイバーは真剣な眼差しでテレサに語りかけたが、突然けろっと表情を明るく直した。


 「・・・了解!!みんな伏せて!!」


 テレサたちは全員地面に伏せた。その瞬間、セイバーはピースメーカー弾丸6発を一気に撃つ。


 女がRPGのトリガーに手をかけたその瞬間、太めの木の枝が女めがけて落ちた。


 「きゃーっ!!」

  

 女は遊園地のジェットコースターでよく聞くような普通の叫び声を上げ木の枝の下敷きになった。


 「今!!取り押さえて!!」


 手からトリガーが離れたのを確認したテレサたちは一気に飛び出して女から木をどかして拘束した。


 「な、なに!?なんなの!?」


 「とぼけるな!!何故ここが分かった!!誰が差し向けた!?」


 サディアは拳銃を女に突きつけ尋問した。


 「え、えっ!?こ、ここ!?えっ!?ここ何処!?私車を運転してて・・・あっ!そう!!その前に確かあなた達を追ってるFBIの人がいて・・・それから・・・それから私は・・・何を?」


 女はひどく困惑している様子だ。


 「仕方ない、一旦落ち着いて。あなたはどうしてここに来たの?」


 テレサは優しく女に接した。


 「私は・・・」


 「っ!?上!!みんなどっかに隠れて!!」


 セイバーが周りに向かって叫んだ瞬間、屋根を突き抜けて何かが落ちてきた。


 「ご苦労、良い囮役だった」


 「「「「サイ!!」」」」


 降ってきたのはサイだ。天井に開いた空の先に一機の旅客機が飛んでいるのが見える。


 そんな事を見ている余裕はこの5人に無かった。サイは着地と同時にRPG-7を拾い上げていた。そしてそれをテレサめがけて引き金を引いた。


 「くっっそ!!!」


 部屋の中を凄まじい衝撃波が襲う。しかし、弾頭が炸裂したわけでは無かった。この衝撃波は発射した際のバックブラストだ。


 肝心な弾頭はセイバーが横から掴んでテレサの目の前で止めていた。


 「このー!危ないじゃないの!!」


 セイバーはRPGの弾頭の方向を回転させて手を離した。弾頭はサイに当たりサイは窓の外まで吹っ飛んでいった。


 「ふぅ、あっぶな〜・・・あいつ相当学習しちゃってるね。さっさと作戦第二段階始めよっか。サディアちゃん!!飛行機のエンジンかけて!!その子は前の輸送機みたいにハイテクじゃないから私の遠隔ジャックで動かせないの!!サンディとダニーで出来る限りトラックの武器を飛行機に載せて!!癪だけどトラックはもう使えない!!全員飛行機に乗せて行く!!そんで!テレサとわたしでサイのバカ食い止めるよ!!」


 セイバーは即座に作戦を変更し、行動に移した。それと同時に倒れていたサイがむくりと起き上がった。


 「えっ、えっ!?ぇえっ!?あの人どうなって!!」


 全員が動いた時、女は1人慌てふためいていた。


 「だーっ!!!あのやろー!一般人巻き込んだのも作戦かぁ!?とりあえずこっち!!」


 セイバーは女を引き寄せて壁に隠れさせた。そしてセイバーだけが飛び出してサイに向かう。そしてサイも徐々に駆け足になりセイバーに向かっていく。


 「ふんぬぅぅぅっ!!!!」


 セイバーとサイは取っ組み合いになった。しかし、体格差で勝るサイの方がパワーは上だ。セイバーは徐々に押されていく。


 「パワー、予想以上にアップグレードしてんの?」

 

 「あぁ、アップグレードしたよ」


 「っ!?」


 サイがつぶやいた瞬間、セイバーは思いっきり反対方向に吹っ飛んだ。


 「セイバーちゃんが押し負けた!?ガチで逃げるが勝ちだなおい!!サディア!!まだか!!?次は俺たちが奴を引きつける!!」


 ダニエルが腰のホルスターから拳銃を取り出した。しかし、


 「ダニエル!!あなたは任務に集中!!それに!!奴と戦いたいなら最低こいつくらい使いなさい!」


 テレサはショットガン、スパス12を持ち出して構えていた。


  


 ドォン!!ドォン!!ドォン!!


 


 心臓に響く銃声が鳴り響く。鳴るたびにサイは後ろへと少しずつ飛んでいく。


 テレサはセミオートで一気に撃ち尽くした。だが、チューブ内が空になったと同時にテレサはショットガンを肩に担ぐように持ち、腰に下げていたショットガンの弾を一気に流し込んだ。ほぼほぼ間髪入れずにテレサは再びサイに弾丸を撃ち込み続ける。


 「エンジン始動!!積み込めるのはこれくらいだ!!全員乗れ!!」


 サディアはセスナをゆっくり動かし始めた。サンディとダニエルはあたふたとセスナに乗り込む。


 「セイバー!!彼女はどうするの!?」


 テレサは女の方をチラッと見た。


 「置いていく!!彼女はもう用済みだから必要ない!!馬鹿な人間みたいに殺したりとか余計なことはしないよ!!あくまで奴の優先はわたしたちだからさ!!」


 「分かった!!聞いてた!?あなたはここでしばらく隠れてて!!誰もいなくなったらお家に帰るのよ!!いい!?」


 「は、はい!!」


 テレサは女にそう告げると最後の6発のショットシェルを装填する。そしてまたサイに撃ち込んだ。サイは更にのけ反る。


 カチカチ・・・


 完全に弾が切れた。テレサはのけぞっていたサイめがけてショットガンそのものをぶん投げた。それはサイの頭にクリーンヒットしてサイはバタンと倒れた。


 「よっし!!サディア!!今のうちに出して!!」


 「了解だ!!」


 同時にテレサとセイバーは加速し始めるセスナに向かって走り出した。そのすぐ後ろでサイは何の反動もつけずに起き上がりテレサたちに向かって走り始めた。


 「急げ急げ急げ急げぇっ!!」


 ダニエルが一生懸命手を振って早く乗り込むように促す。


 「あいつまさか・・・」

 ダダダダダダッッ!!!


 セイバーは何かを感じ一気に機内に乗り込んだ。


 「うおぅ、早・・・」


 「私の最高時速は300キロで走れる。そんな事よりダニー、アサルトライフルある?」


 セイバーは乗り込むや否やダニエルに武器をせがんだ。


 「M16なら」


 「それで良い!!早く貸して!!」


 セイバーはセスナから身を乗り出してM16を構えた。


 ズガガガガガガッッ!!!


 セイバーはフルオートでサイに向かって全弾撃つ。


 「リロード!!」


 「はい!!」


 ダニエルは即座にセイバーから銃を受け取ってもう一丁あった同じM16を渡す。


 「サディア!もっと加速して!!」


 「これ以上はテレサが!!」


 「いいから!!」

 

 サディアはスロットルを更に回す。テレサは足を更に早くさせた。その隙間を縫うように後ろに迫るサイに向かってセイバーは銃を撃つ。


 「サディア!!もっとスロットル!!もうフルスロットルでいい!!」


 「馬鹿か!?そんな事したら!!」

 

 「うるっさい!!良いから信じてやってよもー!!」


 セイバーはテレサを置いていくわけにはいかない為に中々フルで加速出来ないサディアに怒った。


 「っっ・・・了解!!」


 サディアはスロットルレバーをフルに倒した。


 「今!!テレサ飛んで!!!」


 テレサは言われた通りに飛んだ。それと同時にセイバーは機体から飛び出して尾翼に捕まった。セイバーはテレサの腕を掴んでそのまま客室内に放り込むように投げた。


 「うわぁぁっ!?」


 テレサは客室内でひっくり返っていた。


 「サディア!!離陸して!!」


 サディアは機首を上げて離陸した。しかしその時、サイも飛び上がって来た。


 「定員オーバーだよばーか。あっかんべー!!蜂の巣になってくたばってろ!!」


 サイは尾翼を掴もうとしてきたが、セイバーの持っていたM16が火を吹いて全弾サイに命中。サイは尾翼に触れずに下へと堕ちた。

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