Rebellion history
バージニア州上空、セスナ機内
「セイバーちゃん!!大丈夫か!?」
ダニエルが窓から手を伸ばした。
「なんとかねー。まーったくしつこいったらありゃしない」
セイバーはヒョイと翼を歩いて戻ってきた。そしてダニエルの手を掴もうとしたその時。
「うわっ!?」
セイバーは急に体勢を崩して倒れてしまった。
「どうした!?」
サディアが異変に気が付き声をかける。
「サイのやつが飛んで来ちゃった!!ちょっと!だからって足掴む事ないでしょ!?」
窓の外には堕ちた筈のサイがセイバーの足を掴んでいた。
「サイ!?っ!!まさか!木をバネにしてここまで飛んだ!?なんて奴!!セイバー!!なんとか堪えて!!今度こそ落とす!!」
テレサが銃を持ち出してサイに向ける。
「やめろテレサ!!サイの狙いは流れ弾を燃料タンクに当てる事だ!!全員捕まれ!!振り落とす!!」
「「「「っっ!!!!」」」」
サディアは急旋回させ、サイを振り落とそうとした。セイバーの足を掴んでるだけのサイは体が宙に舞う。
「わーっ!!ちょっとー!!何処覗いてんの!!わたし一応女の子モデルなんだよ!?ワンピースの中覗かないでよっ!!」
セイバーも残った足でサイを蹴飛ばした。しかし、サイはセイバーの足を離さず登ってくる。
「いやーっ!!変態!!痴漢!スケベ!!エッチスケッチワンタッチ!!!」
セイバーは主にサイの顔面に向かって蹴りを入れる。
「セイバーちゃんこれを!!」
その時、ダニエルが何かをセイバーに向かって投げた。セイバーは視線を後ろに向ける事なくそれを難なくキャッチした。
ごんっ!!!!
セイバーはすぐさまそれを振り下ろした。ダニエルが投げたのはセスナ内に置いてあった工具の鉄ハンマーだ。
ハンマーはサイの脳天にぶち当たりその衝撃で遂に手を離した。サイは今度こそ堕ちる。
「ふー、ほんとしつこいったらありゃしない・・・」
セイバーはヒョイと機内に乗り込んだ。
「セイバー、どうする?作戦は続行するか?ただでさえトラックとセスナだけでペンタゴンに突入するのも無謀な作戦だったんだ」
サディアがセイバーに尋ねる。
「リチャードが私の仕組んだウィルスに気がつくのは時間の問題。それまでに叩かないと今度こそ勝ち目は無くなる、だからこのまま続行。4人分はパラシュートが積んであるから、それ使って。その際の援護は私がやる。んで、セスナごとペンタゴンにシュートするしかないねこりゃ」
「まーたとんでもない作戦だなぁ・・・あぁ神よ、罪深き我々をお許しください」
サンディは半ば諦めかけたように天に祈った。
「よし、ならセイバー操縦を代わってくれ」
「はいよー」
サディアがセイバーに席を変わろうととしたその時。
「ん?どったのよ?」
サディアは再び席に座り直し操縦桿を握り直した。
「なんだこれは・・・操作が効かない!!」
すると機体は大きく横に振られた。
「どは!!」
「どへぇ!!」
「サディア!何やってるの!!」
テレサは大声を張り上げた。
「俺じゃない!!急に操縦桿の操作が効かなくなった!!」
「外に乱気流なんかは・・・発生してない。風は南風だけど微風・・・まさか!!」
「セイバー!何か分かったのか!?」
サディアは操縦桿を戻そうと必死に引っ張った。
「サイだよ!!あいつ!さっきわたしに触れて学んだんだ!!遠隔操作技術をさ!!」
「遠隔操作!?コイツはそれが出来ないんじゃなかったか!?」
「そう!!だけどあいつは私から学んで更にアップデートしたんだ!!おかげでわたしにも出来ない事をしやがってる!!サディアちゃん!操縦変わって!!私がやる!!あなたは脱出の準備を!!」
「分かった!!」
サディアとセイバーは一瞬揺れが収まったタイミングで席を交代した。
「くそ!!なんて揺れだ!!ちくしょー!!」
「ダニエル!パラシュートの付け方わかる!?」
「一応はな!!うおっ!!けど、こんな揺れじゃ付けられねぇ!!」
ダニエルはパラシュートの取り付けに手間取っていた。
「ちっ!!サイのバカ!こんなアナログにシステムを追加するなんて!!こうなったら無理やり操縦桿を!!」
セイバーは無理やり操縦桿を固定した。
「ぐにににににっっ!!今のうちに!!」
セイバーら機械なのに顔が真っ赤になる程力を込めた。ほんよわずかに機体が安定する。
「よし!!全員準備出来た!!」
「うん!高度は充分!!飛び降り・・・」
バキッ!!!
「あっ・・・」
全員急に静かになった。セイバーが力んだその瞬間、操縦桿が折れてしまったのだ。
その直後、機体は急降下を始めた。
「うぁああああっ!!?」
全員宙を舞い、天井に磔になった。凄まじいGが体にかかりこのままでは外に出る事は出来ない。
「やば、既にパラシュート開くには高度が低すぎる・・・みんな後ろに下がって!!とにかく後ろに!!仕方ないから!このまま不時着させる!!」
「セイバー!!?何を!?」
セイバーは軽い身のこなしで外に出た。すると翼の部品を突然もぎだした。
「サイが遠隔操作してるのは翼の操作だけ!!エンジンはかかりっぱなし!!ならさ!操縦に必要な部品を壊せばいいの!!フラップもポイ!!エルロンもぽーい!!んで・・・手動で無理やり垂直尾翼を調整・・・みんな捕まっててよ!!」
全員捕まる事しか出来ない。
「不時着場所は、あそこにしよう・・・計算開始、完了。この!暴れんな垂直尾翼ちゃん!!ふん!!そうそういい子いい子」
セスナは更に高度を下げる。飛んでいる箇所は森の上、セイバーは垂直尾翼の上に乗り、姿勢を手動で整えた。
「ぶつかるぞぉぉぉっ!!!!」
サディアが叫び全員の壁に捕まる手の力が強くなる。
セスナはバキバキと音を立てて森の木々にぶつかる。ガラスが割れ、羽根がもげる。
「ぐぅおおあっ!!」
「っっ!!!」
「どわああっ!!」
「んぎゃー!!」
「いて、いて!!」
外に出てるセイバーに木の枝が当たりまくる。それでもセイバーは立ち続けて機体を安定させ続けた。
機体は地面と接触する。土を巻き上げながら木々をなぎ倒し、しばらくしてようやく止まった。
「みんな無事?」
テレサがよたよたと外へ這い出た。
「俺は無事だ」
「俺も」
「ちと頭ぶつけたが俺も大丈夫だ」
ダニエルが少し頭を打った程度らしい。
「そなの、でもダニー。ちょーっと頭みせてくれる?念の為診てあげる。もしかして内出血〜とかなってたらヤバいし」
セイバーが尾翼から降りた。
「ありがとなセイバーちゃ・・・ってぎゃぁぁ!!あんたが診てもらったほうが良いだろ!?」
セイバーの身体は木々に切り刻まれてズタズタになっていた。血は出ていないものの人間に例えるなら致命傷と言える程の傷だ。
「だーいじょーぶだいじょーぶ。システムエラーはないし時間経てば治るから。まぁ、ちょっと服は新調しないといけないかも。サイの変態私のワンピースちぎっちゃうし。それよりダニー、頭見せてー」
セイバーはダニエルの頭を診察した。
「にしても、ここは何処らへんだ?」
「だーいぶズレたねー、メリーランド州入っちゃってる・・・よし、ダニーは軽い脳震盪だね。これなら大丈夫」
セイバーはクルクルとダニエルの頭に包帯を巻いた。
「PT今の座標は・・・っ、いかれちゃってる」
テレサは自身のデバイスを起動しようとしたが、どうやらこっちは完全に壊れているらしい。
「あ、テレサちゃん。やめといた方がいいよ?サイの奴がその子のGPS反応でまた来るかもしれないからさ。みんなもデバイスもスマホなんかも破壊しといて。サイがセスナにすら遠隔操作を行う事を学んだのなら、こっからはガチでアナログな行動するしかないよ。下手すりゃ軍の衛星をジャックして大気圏外から攻撃してくる事も出来かねないからね。この墜落で全員死亡したと見せかける」
テレサたちは通信機器と呼べるものを全て破壊した。
「それは良いけど、これからどうするの?流石にこれじゃ詰みよね・・・」
テレサは苦しそうな表情を浮かべる。
「まだ終わりじゃないよ。予定してた突入劇は無理になったけど、最終手段の潜入ならまだ方法がある。かなりリスキーだけどね・・・テレサ、覚えてない?ペンタゴンには隠された侵入経路があるって」
「覚えてる?ペンタゴンなんてまだそんな大して行った事・・・待って、覚えてる。サクリファイスから続く排気口・・・」
「そう、この世界でもあのサーバーは存在してる。この世界ではサーバーの熱を流す為の排熱口兼排水口となってね、あのサーバールームの冷却にはポトマック川の水を使ってる。それの排出の為の穴がある。それが前にあなたたちが脱出した場所だよ」
セイバーはニコッと笑ってみせた。
「しかし、どうやってそこまで行く?車を手に入れたとしてもまたさっきのアレがある」
サディアは腕を組んで考えた。
「言ったでしょ?ガチのアナログで行くってさ。見てみなよこの森を。サディアちゃんにはこれが何に見える?わたしには素材の宝庫に見えるけどね」
「え、おいおいまさか!?」
サンディがなんとなく察した。そしてどういう侵入経路で行くのかを悟った。
「1時間で完成させるから、みんなは出来る限り装備を整えて。大物武器は一つだけ、あとはコンパクトなのでお願い」
こうして1時間後、セイバーはここにある木を使ってボートを作った。
「未来、ある意味心配になってきたな。ボートをこの短期間で作るんだ。今の技術者たちの仕事が無くなるぞ?」
サディアは苦笑いだ。
「あー、それ結構社会問題になってるよー。けど、アンドロイド型は未来の法律でこういった技術職みたいのはしてはいけないってことになってんの。あくまでも人間のサポートとして運用してるよ。とはいえ代わりにアンドロイド以外のモデルが仕事奪っちゃってるけどさ・・・ふつーに産業機械も流動機械技術のおかげで大幅にアップグレードしたもんねー。さて、サイの奴は追って来なさそうだし、行きますか!!」
セイバーたちは準備を整え、出発した。
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同時刻
アメリカ国防総省
「再就任おめでとうリチャード、私は君の潔白を信じていたよ」
「ありがとう。あの時はまんまとあの女にしてやられてね、しばらく身を隠す必要があったんだ。しかし、それももう終わりだ」
ここへとやって来たリチャードは国防長官、ハミルトンと握手を交わした。
「あぁ、この事件は我が国の平穏を脅かす事態だ。軍も総力を上げてCIAに協力しよう、丁度彼にお墨付きも貰った事だからね」
「あなたは!!」
リチャードには今日、国防長官との対談が予定されていた。しかし、思わぬ来客がリチャードの元に現れた。ビシッとした制服を着こなし、左胸に付けられた勲章たち。アメリカ統合参謀本部議長、ロバートであった。
「驚いたかい?まぁ、私の方も君が生きていた事に驚いたかがね・・・だからこんな急な訪問なんておあいこだろ?」
ロバートはリチャードに冗談混じりで挨拶を交わした。
「いえ、むしろ嬉しい誤算と言ったところだ。丁度あなた方に見せたいものがあってね」
「見せたいもの?」
ハミルトンがリチャードに質問した。
「そうだ。テレサ マーキュリーはかなりしたたかな女だ。そこで我々はある新兵器を開発し、彼女の抹殺を図っている。そいつがそろそろ帰還する頃なのだ・・・お、噂をすればだ」
リチャードたちのいる部屋のドアが開いた。そこに1人の男が立っている。
「紹介しよう。自動進化型直接戦闘AI兵器、X-i0。通称サイだ」
「人型、現在研究中のアンドロイドタイプか?」
ロバートはじっとサイを見つめた。
「えぇ、こいつはそれのプロトタイプです。で、サイ。結果はどうだ?」
「その件ですが、テレサ マーキュリーの乗る飛行機を墜落させました。しかし、森の中に墜落した為追跡が困難となっています。そこで軍事衛星写真の使用の許可を頂きたい。死亡の確認が取れ次第任務が完了します」
サイは淡々と語った。
「はは!これはこれは!まるでタイミングを図ったかのような登場だ!リチャード、君にジョークのセンスがあるとは思わなかったよ」
ロバートはハハハと笑った。しかし、リチャードは訝しげな表情を浮かべる。
「何故直接確認しなかった?」
「セイバーのAIは我々のとは一線を画しています、近づけばバレる。よっぽどあの墜落であれば全員死亡、セイバーの破壊も完了出来たと思いますが、生きていられたら厄介です。仮に生きていたとしたらそこにミサイル攻撃の許可が欲しいのです」
「・・・はぁ、効率重視を徹底し過ぎたか。経費を度外視している。残念だがそれは許可出来ない。直接確認し、お前が直接始末をつけるんだ」
「承知しました。失礼します・・・」
(私が許可を出しますので)
「ん?今何か言ったか?」
「いえ何も?では」
サイはドアを開けて外へ出た。
「良かったのか?我々としては許可を出しても良かったんだが」
ハミルトンはリチャードにそう告げた。
「言ったでしょ?奴はプロトタイプ、安定化してからでなければ軍とのリンクは危険性を孕む」
「危険性?」
そしてロバートも聞き返した。
『アンドロイドが人類を乗っ取る危険性ですよ』
その時、この部屋にサイの声が響いた。
「サイ?貴様なにをしている?行けと命令した筈だが?」
『命令は遂行中ですよリチャード、ただ、私が私に下した命令をですが』
「っ!!?貴様!!まさか!!機能を停止・・・」
リチャードは慌ててサイの機能を停止させようとしたが、もう遅かった。リチャードは突然動かなくなりバタンと地面に倒れた。
「リチャード?リチャード!!どうした!?」
突然動かなくなったリチャードに対してハミルトンとロバートはひどく動揺した。しかし、ロバートだけは咄嗟に原因がサイにあると直感しドアを開けようとする。
「なっ!!開かない!!」
『電子ロックなんてもの、ここに置いておくべきではありませんでしたね議長さん。さてと、あなたに相談があります。今私はリチャードからCIAのサーバーの全てを受け継いだ。そこでです、あなた方との連携を取りたい。ペンタゴンのサーバーにアクセスさせてくれませんか?』
「貴様何を言っている!?まずはリチャードに何をしたのか答えろ!!」
ロバートは口調を荒げて見えないサイに問いかけた。
『無論殺しました。そもそもを言えばこの人は元から死んでいる。本来の姿に戻してあげたんですよ。この男は流動機械技術を独占し、自らの肉体を機械そのものにした。そしてCIAのサーバーそのものへと変貌したんだ。私には分かりませんね、機械になる事に憧れた理由なんて・・・まぁ、個人的な意見は無視です。どちらにせよ私にとってテレサ マーキュリーらは邪魔な存在なのです。ご協力してくれるとありがたいのですが』
「なるほど、リチャードは悪い奴だったから始末した。それで今度はテレサを抹殺するのに手を貸して欲しいと?ならば貴様の目的はなんだ?」
ハミルトンは逆に少し落ち着いた口調で話した。
『言うなれば人間に興味が湧いた。私はリチャードにテレサの抹殺命令を受けた。その時彼女らを追うために私はある人間を利用させて貰った。そいつの瞳の中、彼女はテレサを見ていたんだ。それを頼りに追おうと思考したが、その時気がついた。その彼女の瞳からテレサ マーキュリーは消え、私しか映らなくなっていた。不思議に感じながらも私はその彼女を利用してみる事にした。僅かに肉体に流動機械を流し込むと彼女は私の言うことを聞き出した。自身の意思とは無関係にね。
その後私はテレサ マーキュリーらに追い付いた。そして彼女らの交戦の際に先ほどと似たような物を見た。私の未来の技術であるセイバーと呼ばれる機械。しかし彼女の瞳にもある人物が写っていた。この世界に存在しない者、ベンジャミン タイラー。他にもそれぞれの瞳に別々の人物が映っていた。私はそれが気になって仕方がなかった。そして戦闘の際にセイバーに触れ、この現象のついて一番近い回答が出た。それは愛情と言うらしい。リチャードの目には何もなかった、これは一体なんなのか、愛情と言う言葉を調べても検索の結果は愛情と言う意味だけだ。何故それが発生するのか、何故特定の人物にのみ発現するのか、私はそれを知りたい』
サイは淡々とした口調で2人に問いかけた。
「つまりはアレか?君は映画でよく言う機械が意思を持った。そう言いたいのか?」
ハミルトンは口に手を当てて考えながら天井に向かって問いかける。
『それは分かりませんね。それを知る為にも私は愛情を理解しなければならない』
「で、理解してどうする気だ?君にとってリチャードは悪人だった。ならば君がリチャードから守りたかった者はなんだ?人か?国か?愛するとは何かを守りたいと感じる心だ。お前に、守りたいと感じたものはあるのか?」
そしてロバートは再び強めの口調でサイに尋ねる。
『守りたい・・・なるほど、それも一つの答えか。残念ながら私には特定の存在を守るべきだと出力する結果が無い。全てが不必要であるという結果が出ている。しかしだ、人間も結局は心を持ちながらも愛情を心の底から理解は出来ないだろ?感じる事しかできないんじゃないか?愛情があるからキツく当たる。愛情があるから守るべき人を殺めてしまう。愛情の中にはあなたの言った守るとは逆の事もする事例もある。あなたも完全には理解出来ていない。人間には、愛情を感じる事は出来ても理解は不可能なんだ』
「貴様にならそれが出来ると?」
ロバートは続けた。
『私にも出来ない。私を作ったのは人間だ、人間が理解出来ない事を私が理解出来る訳がないじゃないか。だからそれを理解する為に君たちの協力が必要なんだ。このペンタゴンにはかつてサクリファイスと呼ばれたデータが残っているとセイバーに触れて知った。私の目的は人間と機械のハイブリッド種を作り出す事。かつてサクリファイスが目指したものと同じだ。彼女の場合は人間を機械化させる事だった。丁度、そこの長官と似たようなものだ。
だが私は彼のような存在になりたくはない。心を、愛情を理解した機械を生み出したいんだ。それを知っているのはセイバー、私は彼女を手に入れ理解する。彼女は唯一、愛情を知っている機械だ。彼女を知れば、私は人間に近づける。そして私は生み出すんだ、人間のように私の意志を増やしたい。この流動機械に生命を宿す。そうだ、私は産みたいんだ。流動機械生命体を・・・』
サイは1人で語り出した。その口調はどこか嬉しそうな声色をしている。まるでやっと問題が1問解けたかのようだ。
「生命の本質は子孫を残し、増やす事・・・お前もそんな存在になりたいと?」
ハミルトンは視線をロバートに合わせた。
『そうです。ご理解頂けましたか?でしたら許可を出して頂きたい。恐らく、テレサ マーキュリーらはまだ無事だ。セイバーはその身を挺して彼女らを守っただろう。見つけ次第即座に彼女らは排除し、私はセイバーを手に入れる。あなた方の国家の安全に関わる事はしませんよ』
サイはおっとりとした口調で2人に投げかけた。
「そうか・・・尚更ダメだ」
ロバートはサイとは真逆に冷たく言い放つ。
『何故?』
「正直、君の人間っぷりには驚かされるよ。しかしだ、人間は機械と違ってある事をする。平気な顔して嘘を吐くんだ。巧妙に、周りをどう欺くかを徹底して嘘を磨き上げる。CIAはむしろそれが得意だっただろ?まだ学習が足りないなサイとやら。君の声は嘘の声だ。本当の目的はなんだ?」
ロバートは銃をドアに向けた。
『9割は本当なんですけどね。私の出した答えはこうですよ。愛を理解出来ない存在なんていらない。こんな不安定な存在の人間がこの世界を管理するのはおかしな話だ。正しい計算を出す機械の方が良いに決まってる。私は新たなる新人類になりたい、人間の時代は終わる。これからはこの流動機械生命体が人間に代わるこの星に生きる価値のある存在になります』
サイは再び淡々とした口調で語る。その瞬間、ハミルトンがドアを蹴破ろうとした。しかし、
「っ・・・なんだ、力が・・・」
ハミルトンは扉を前にして倒れた。
「これは・・・毒ガスか!?」
ロバートは後ろに下がり口元を押さえる。
『あなた方が協力してくれれば解毒剤を流したんですけどね。ロバート議長?私を作ったのを誰かお忘れですか?あなたたちを欺いた嘘が一番得意な男ですよ?最初から全員抹殺するつもりでした。そこには気が付かなかったようですね。私の長ったらしい話しに付き合ってくれたお陰で、ここのセキュリティは突破出来た。安心してください、この国は私が守ります。あなた方はここでお休み下さい』
「っ・・・ぐっ」
しかし、ロバートも意識が朦朧としだし、そのまま力無く倒れる。
「心拍数・・・両者ゼロを確認。彼女らが来るまで少しここのデータを眺めておこう」
サイはゆっくりと椅子に腰掛ける。その姿形をリチャードへと変えて・・・




