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4 死人に口なし
先に買ったのは叔母様だった。
「幽霊だって鎖国くらいするわ」
不自由しているという話だったが、どうやら杞憂だったようだ。
「最近ではオーストドッグの散歩が日課になってるの」
前言撤回。叔母様は異次元に旅立たれていたらしい。
無臭石鹸を投げつけ、不思議な踊りを一分間。
もうすぐ雪が降るというところでサヨナラ売買。
「これでもう起き上がってこないだろう」
濁った眼を潰して、唐辛子を塗りたくる。悪魔で予防線だ。
右手の違和感と左目の邪気眼を叔母様に押し付け、僕らは逃げ出した。
きっともう、ここには戻ってこない。
曇り空が泣きだした。