2/31
2 攻防さえもままならず
足をやられた。
寝ぼけ眼のままで水を飲みにキッチンへと向かったら、黒い悪魔を踏み潰してしまったのだ。
不幸としか言いようがない。
近年まれに見る天才。罵詈雑言の山嵐。
川下に生まれたからといって、こんな仕打ちはあんまりや。
私は戸棚に隠していたむっつり饅頭をつかみ取り、にっくきあいつに投げつけた。
が、やつはそれを華麗にスルー。スルースキルの発現には言動の抑制が必要不可欠。
「テカリを利用されたか……」
呟きを一つ。
羽音が二つ。
奴ら、増えやがった……!