25話 暗闇の影-3-
エルバーに僕は魔術で雷を放つ。
しかし、エルバーはそれを黒いオーラで防御する。
僕の知る限り、黒い防御魔術など、普通の魔術ではない。
女神様の加護が消え失せ、魔教に堕ちた者が使う技だとされていた……
「堕ちたかエルバー‼」
僕は再び詠唱する。
「その怒りで悪しきに罰を、ライトニングブレイク‼」
僕は痛みを覚悟してもう一度エルバーに向けて魔術を放つ。
そんな僕を見降ろしたエルバーはニヤリと笑い、僕に向かって腕を振り下ろした。
次の瞬間、詠唱魔術レベルの風の刃が僕に一直線に向かってくる。
僕は驚く、そんなことがあるはずがない……簡易魔術ではこれほどの威力と魔力は出ないはずだ。
「ヴェルフ様‼」
魔術師の一人が、僕とエルバーの間に入り、地の壁であっけにとられていた僕を守る。
伝承でしかないが、これは……
魔法?
魔族の使う魔術の様な物であり、起源を共にした力……
勇者ブレイブ、魔術師スタック、治癒術師ミーレット、騎士オルザック……
彼らが戦った存在が目の前にいると言うのだろうか?
「エルバー、お前は一体どこで力を得た?」
僕の問いにエルバーは気味悪く笑う。
「ヴェルフ、君はなかなか見どころがある、もし良ければそのお方に合わせてあげよう、きっと君も素晴らしい力を手にすることができるはずだ!」
僕は、エルバーの誘いをはねのける。
「冗談はよせ!お前も、お前に力を与えたやつも倒してやる!覚悟しろ‼」
僕は、エルバーに向かって牽制用の雷の簡易魔術を数度放つ。
どうしても、黒い防御魔術、いや今は防御魔法というべきだろうか?
その力で攻撃が弾かれてしまう。
「魔術師は魔法陣を構成しろ!時間は僕が稼ぐ‼」
動ける魔術師6人が、魔法陣を再び展開し始める。
「そんなことしていいと思っているのかな?僕は時間を与えないよ?」
エルバーが魔術師達を攻撃しようとするが、僕は簡易魔術で面制圧をする。
防御魔法、確かに鉄壁ではあるが……展開している時に反撃がない。
じっくり時間を稼がせてもらう。
簡易魔術で面制圧をしながら、僕は魔術を詠唱し始める。
「その怒りで悪しきに罰を、ライトニングブレイク‼」
僕は、落雷の魔術を自らの指に込め、簡易魔術から詠唱によって高出力の魔術に切り替えて放つ。
体が魔術の反動で悲鳴を上げた。
一瞬めまいがして僕は膝をつき、意識が飛びそうになる。
これではダメだ、僕は必死に顔を上げ、黒い防御魔法を見据えた。
ここが正念場なのだ、意識を手放すわけにはいかない‼
僕の放つ収束した雷の向こうに、黒い防御魔法が見える。
その黒い防御魔法に一筋の亀裂が走るのが見えた。
「ヴェルフ様、魔法陣の準備ができました‼」
魔術師団の一人が僕に告げる。
「わかった、僕に魔法陣をそのままつないでくれ‼」
魔術師達はその合図とともに僕の足元に魔法陣を魔力で編み上げる。
「これで最後だ‼」
僕の放つ魔術に魔法陣の力が加わる。
威力が数倍になった雷の魔術がエルバーを襲う。
「こんなところで……これだけの力を手に入れたのに、真実を知ることができたのに‼」
エルバーは口惜そうにそう言って、ヴェルフリッツの魔術の光に飲み込まれた。
僕は、その場へと倒れ込む、でも今度は守ることができたのだ。
僕の意識はゆっくりと落ちていく。
黒の首領を思い出す。
僕はいつかやつを倒せるだろうか……
ゼクとウェルサ、そして相対するノードラは、激しい打ち合いをしていた。
ノードラは地属性の魔法と、拳で激しく打ち合う。
ゼクは大剣で重い攻撃と堅実にノードラの攻撃を受け流しジワジワとノードラを攻め。
ウェルサは戦場を縦横無尽に駆け回り、ノードラの背後から奇襲を続ける。
そんな中、戦況が動く。
ヴェルフリッツが、エルバーを撃破したのだ。
「ここまでの様でさ……」
ノードラはそう言って、肉薄していたゼクを弾き返す。
「逃がしはしませんぜ」
ゼクが追撃をしようとしたが、ノードラは地の魔法で背の高い高台を作り、そこから跳躍、魔力の霧の中へと消えて行った。
ゼクがノードラを追撃しようとしたが、ヴェルサが制止する。
「深追いはダメだよ」
ゼクは悔しそうに顔を歪めた。
疲弊した先行部隊の後から後発部隊がすぐにたどりつく。
激しい戦闘が後発部隊にも遠くからでも伝わったらしい。
後発部隊に魔物達は討伐され、魔力溜は終息へとむかった。
ウェストヘイル北方の廃墟にて。
「サーフェ様、エルバーがやられましたでさ」
ノードラは悔しそうに、サーフェにひざまずき報告する。
「そう……あの子は適正が高かったのに、残念だわ、でもアナタの仲間はもう少しで覚醒するわ」
サーフェはラギュースの頭をなでながら言う。
「我らの繁栄を願って……私達とあなた達はこのような形で分かり合えるのですから」
サーフェはそう言って立ち上がり、ノードラもラギュースを担ぐ。
3人はその場から姿を消したのであった。




