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20話 決闘の意義

 次の日、僕は決闘の準備をし、屋敷の訓練所で彼ら3人を待っていた。

 訓練所は、それなりの広さで闘技場としても使うことが出来る。


 だが、ラギュース、ノードラ、エルバーの3人は15分経っても姿を現さない。


 立会人にウェルサとレーヌまで来ている……

 僕はともかく、主まで待たせるとは何事なのだろうか?


 そんなことを考えていると、ラギュースを先頭にようやく3人が姿を現した。


「いや、遅くなってしまって申し訳ない」

 ラギュースはそう言うと、僕と反対の訓練所の定位置に着く……


 だが、一つおかしいことがある。


 その後ろに2人、ノードラとエルバーまで定位置で待機していた。


「決闘のルールは1対1だ、ノードラ、エルバー闘技場から降りな」

 ウェルサの声が響く。


 そう、決闘は1対1が原則だ。


 しかし、次の瞬間……


 僕に向かって3人が動きだした。


 決闘の合図すら行われておらず、明らかな反則行為だ。


 3人はそれぞれ得意な属性の簡易魔術を3方向から発射してきた。


 ラギュースは火、ノードラが風、エルバーが地と言ったところだ。


 僕は、3人の攻撃を魔術によって作った光の盾で防ぐ。


 3人の制圧射撃は続く。


「レーヌ様のお気に入りかどうか知らないですが、お前みたいな素性の知れないやつが俺らの上なんて、許せないじゃないですか!消えてしまえ‼」

 ラギュースはそう言い放つ。


 僕は全ての攻撃を受ける……

 これはお灸をすえる必要があるようだ。


 僕は雷の簡易魔術を発動する。

 彼らを死なせない程度に魔力を調整してある一撃がラギュース達3人を襲った。


 正確で、精密な一撃。


 ただ一撃だけで十分だった。


 彼らはけいれんし、地面に突っ伏している。


 僕は大きな声でこの場にいる全ての者に向かって言葉を発した。

「レーヌ様、これは賊の所業です。勇者の末裔からこの国を守る西方守護の元に(ぞく)は必要ありません。彼らの追放を僕は申し出ます」


 ラギュースはバタバタと手を必死に動かしていたが、別の場所に使用人達によって運ばれて行く。


 レーヌとウェルサが僕の元に向かって歩いてくる。


「ヴェルフ、申し訳ありません。私が彼らを制すことが出来ないために起こったことです」

 レーヌは僕に申し訳なさそうに言う。


 確かにレーヌの立場は彼らを制する立場にある。


 だが厳粛(げんしゅく)な決闘の場であのような不正があってはならないこともたしかだが……


 決闘自体は貴族ならば1回や2回貴族なら起こりうることだ。


 おごり高ぶった貴族はどこの国にもいる。


 それを決闘で粛清されようが、そう言うやからが勝利して力を示そうが、要は有用性を決闘で示せばよいだけである。


 おごり高ぶっていても、その価値があれば貴族ならば認められるのだ。


 しかし、おごり高ぶった上に3対1で決闘に負けた彼らに居場所などない。


 彼らの悪行でレーヌが謝る事ではないのである。


「レーヌ様、彼らのルール違反など気にすることではありません。彼らは追放されて処罰を受けるのですから、力も示せず、貴族に連なる者として厳粛(げんしゅく)な決闘のルールすら守れない彼らは必要ありません。命を取られないだけでも、この上ない温情です我らと共に戦う資格のない者が追放された、それだけです」

 僕の言葉にレーヌは考えているような顔をしたが、すぐに顔を上げ、背筋を伸ばす。


「ヴェルフ、ごめんなさい。私は荒事が苦手なのです。少し私は取り乱してしまっていました。決闘など、父の背中に隠れて見ていた程度なので、お父様に言われたのです。今日は自分で決闘を取り仕切ってみてはどうか?と」

 なるほど、決闘の見届け人として初めてだった様だ……


「レーヌ様、ウェストヘイルの貴族は兵士から魔術兵まで西方を守るためにあるのです。あなたの役目、家臣の私がそばに控えているのです。全てを背負うことはできませんが支えさせてください」

 僕はレーヌを本当に守りたいのだ、しかし元はと言えばこれも僕の役目だったはず……


「ヴェルフ、取り乱してしまって申し訳ありません。私はまだまだですね……もっと強くならなくてはなりませんね」

 レーヌはそう言うと訓練所にいる全員に向かって指示を出す。


「この決闘は、レーヌ・バーイヤーによって見届けられました、ラギュース、ノードラ、エルバー3名を除名し追放処分とします」

 レーヌの高らかな宣言によってこの決闘に幕は下りた。


 僕としては当たり前のことをしただけだ。


 しかし翌日、僕の決闘の話は多くの屋敷や兵舎の人に知れ渡り、畏敬の念をもって彼らから僕は接されることとなった。


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