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#2

「……どうしてお前さんがここにいるんだい? グレイ」

「ヤジマちゃんにはさっきも言ったけど、本当にただの通りすがりだよ。そうしたら、いかにも『人攫いをします』って物騒な空気醸し出してるお兄さん方がいたから、気になってちょっと寄り道してみただけさ」

「あんまり気色の悪い呼び方をしないでいただきたい、グレイ・リバース殿」

「悪かったよ、ミス・ヤジマ。だからそんなに怖い顔をしないでおくれ」


 あの後、ユエの呼び出しで駆け付けた他のポリスたちによって計四人の男が運び出され、現場には関係者三人が残って立ち話をしていた。バーニーズ・タンドの治安維持組織であるポリスに所属しているユエ・ヤジマ。同じく、ポリス所属でユエの上司であるティアナ・ジルク。それから、探偵事務所ローファード・ハウスの代表であるグレイ・リバースである。


 舌打ちを我慢するように悶えているユエを横目にため息をつきながら、ティアナは本題を切り出した。


「それで、ユエ。一応どうだったか聞いておこうか」

「はい。今回も第一の指示を受けた時点で襲われたため、目的の組織ではないかと」

「そうかい。まあ予想はしていたけれどもね……」


 ユエの報告に、ティアナは大して残念でもなさそうに息を吐き出したが、何か別の悩みがあるとでも言ったような感じで沈黙を紡いだ。すると、煙草の灰を道端に落として、グレイが口を開いた。


「なら、うちのリオードを貸そうか? あいつはこの街では希少な根っからのいいやつだから、きっと高級エビになるだろうよ。おたくの『目的』とやらもちっとは釣りやすくなるんじゃないか?」

「……お前さんから話を持ち掛けてくるなんて、胡散臭いったらありゃしないね」

「ひどいな、ばあさん! 知ってるか、これでも俺は一応社長って身分なんだぜ? 現場で経験を積んで、すくすく育つ機会を与えてやろうって話さ。それにほら、うちなら他にも若手が沢山! ……ミス・ヤジマが繰り返し囮役をするデメリットに悩んでいる今、悪い話じゃないだろ?」


 グレイの言葉に、ティアナは腕を組み直して考え込む。すると、ユエが少し眉間にしわを寄せて話に割り入ってきた。


「ティアナさん、私は反対です。ジムの手綱を握る気苦労はしれませんし、きっと囮捜査どころじゃなくなります。あのデオとかいう新入りは元『隣人殺し』ですよ? 彼を協力者にしたところで、穏便に解決できるとは言い切れない。それに、リオードの能力に関しては他二人と比べてほとんど一般人みたいなものじゃないですか。囮を越えて被害者になってしまう可能性が高い。……そんなの、危険すぎる」


 苦々しい表情を浮かべるユエに対し、グレイは灰色に曇った息を吐き出してから、少しだけ低く真面目な声色で返答した。


「おいおい、うちの子をなめてもらっちゃ困るなあ。第一、ただの一般人がこんな街で探偵なんかやってるわけないだろ? みんな訳ありなんだから、気を遣うだけ無駄だ」

「……今回ばっかりは同感だな。ユエ、一旦オフィスに戻るよ」

「ですが……!」


 踵を返そうとしていたティアナは、ユエの引き留めようとする声にこう答えた。


「なあに、心配しなくても大丈夫さ。彼の臓器を持っていかれる前に、私たちがさっさととっ捕まえればいいだけの話なんだからね」

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