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そういえばそんな人もいたよね

 「母上~」


 畑で胡瓜の収穫をしていると、城の方から小さな男の子、息子のマトフィグリオが駆け寄って来た。


 「どうしたの?とってもご機嫌な様だけど」


 息を切らしたリオに、もぎ立て胡瓜を渡して上げると喜んで齧り付いてくれる。可愛い。


 「えへへ~。郊外にね、大っきいお友達いっぱい出来たの~」

 「まあ、それは良かったね」


 息子が嬉しそうにニコニコ話してくれるので、私まで嬉しくなってニコニコする。


 「へえ、郊外か。どんな子なんだ?」

 「あ、父上!」

 「オル」


 私達が話していると、別の畝でナスを収穫していたオルがやって来たので親子でハモって呼ぶ。

 綺麗にハモったので、顔を合わせて笑い合う。


 「はは、仲が良くて何よりだ。

 それで?どんな子なのか教えてくれないのか?」

 「あ。うーんとね、マッチョなお兄ちゃんとね、小ちゃいお兄ちゃんとね、お髭モッサリのお兄ちゃんとね、頭ピカー!なお兄ちゃんとね、そらから」

 「待って待って。お友達よね?」

 「?そだよ」


 聞き伝えならない単語が出て来て慌てて止めたけれど、当たり前の顔で返されて笑顔が固まってしまう。


 「あー、あそこに行ったのか。

 楽しかったか?」

 「楽しかったー!」

 「そうかそうか」


 私には判らない話で盛り上がる2人に疎外感を感じる。

 オルよ、息子の頭を撫でるのは良いけど、私も撫でるけど、説明を求めたい。

 物言いたげな目でオルを見つめていると、ちゃんと気付いてくれた。


 「犯罪者収容地域だよ」

 「はい?」


 不穏な言葉で返されて唖然としてしまう。

 ちょっと待って、そんな危ない所に行って来たの?

 え?誰も止めなかったの?

 何でそんなに和やかに話してるの?


 「あれ?母さんに教わらなかった?

 犯罪を犯した人達が罪を償う為の地域の事」

 「教わってないよ!?」

 「そっかー。じゃあこれから行ってみる?」

 「そんなに気軽に行くとこかな!?」

 「大丈夫だよ」

 「あのね、母上。楽しかったよ?」


 久し振りにこの国が判りません。

 そして息子よ、楽しむ場所ではないのでわ?


 そうは言っても、行ってみない事にはどういう所か判らないから行くことにする。


 馬車に揺られる事暫し。

 林を抜けた先の郊外に長閑な田園風景が広がっていました。

 高い壁もありません。


 あれ?ここ本当に収容施設?


 馬車を降りて散策してみても、気の良いおじ様方が熱心に農作業をして、こちらに気付くと気持ちの良い笑顔で手を振ってくれる。


 「ねえオルどういう事」


 もう訳が判らない。

 釈然としないまま、おじ様達に手を振り返して聞く。

 けれどオルが答える前に、前方から細マッチョな男性がやって来た。


 「王子さん。ご無沙汰振りっす」


 ニカリと眩しく光る歯を見せつける様に笑う男性。

 何処かで見たことがある様な気がする。


 「姫さんもその節はすんませんした」


 ???

 会った事あったかな?見た事ある気はさっきからしてるけど。

 そもそも謝られるのが判らない。

 首を頻りに傾げていると、男性が困った様に眉を下げた。


 「そっすよね。あんなに簡単にやられた奴なんて覚えてねっすよね」

 「アン。以前、まだ此の国に来て間もない頃野盗と会ったろう」


 あ!あの時の!

 見た目もだけど、喋り方まで随分違うから判らなかった。

 ・・・ってそうじゃないでしょぉぉぉ!?


 「何で和やかにお話ししてるの!?」

 「ん?何か可笑しいかな」

 「いや、王子さん。姫さんのが正しい反応だと思うっすよ。

 姫さん、言いたい事はよーく判るっすけど。

 此の国にだから。で済む話でもあるっすよ」

 「どういう事??」


 遠い目で空の彼方を見る彼は、とても疲れ切って全てを諦め、そして全てを受け入れた顔をしている。


 「こんな柵も壁も無いようなトコに連れてこられて、何て緩い国なんだと思ったっすけど。

 何のことはない。ここの先住民達の魔の手から逃れる術なんてなかったっす」

 「ああ。犯罪者を送る場所は大抵人不足の所だからね。

 折角の働き手を逃す様な人達はいないよ」


 快活に笑っているけど、普通一般人が犯罪者、それも野盗くずれをやり込める事は有りませんから。

 ああ、でも確かにこの国だから。で済む話だわ。


 「でも、だからってその話し方やそれに、そもそも人が変わった様よ?」

 「そりゃ、目の前で包丁一丁で熊を仕留める少女を見れば恐ろしくて考えも変わるってもんすよ」


 死んだ目で言われました。

 きっと彼にも色々あったのだろう。


 「それに比べたら田んぼはいっすよ。

 愛情かけた分だけ美味しくなってくれるし。

 何より怖くない、裏切らない、蟠りがない、襲ってこない。

 自分、初めから田んぼやってれば良かったって心底思ったっす」


 ははは、と乾いた笑いをする彼に、私を殺そうとしていた過去さえ忘れて同情するのだった。




 「ところで、姫さんって実は男だったんすよね。なんで母って呼ばれてるっすか?」

 「この格好でいるから、かしら?

 他国では未だに明かしてないし」


 素朴な疑問に取り敢えず答えたけど、別にそう教育した訳では無いのにそう呼ぶんだよね。何故だろう。


 その答えは息子のみぞ知る。

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