エピソード5:酒飲みおじさんの闇鍋パーティ/ 9
そして、たっぷり30分後。一般的な闇鍋のルールに則り、順番に鍋の具材を取り皿に取って食べてみることになった。まず、1番死なれたら困る人間、嶺想寺から食べることになった。嶺想寺の菜箸が何かを掴んだ音がした。真っ暗闇の中に響いた音は、かちゃ……というもの。ルールはルールだ。掴んだ物は食べなくてはいけない。
嶺想寺が困ったように笑った。確か、金属って入れちゃいけなかったですよね?と。確か、そのはずだ。嶺想寺が「何か」を口にする。そして、これもルール。食べた物を全員に聞こえるように言う。嶺想寺の口から出た答えは「殻付きの貝でした」。そして、一言、付け加えられる。──スープの味がチョコレートでした。
「寄せ鍋」。そのはずなのに。和茶の牛乳が入っているのに。匂いの通り、スープはチョコレート味?あの肉を入れなくて大正解だ。あの肉は絶対に、闇には染まらせない。
「じゃあ、次は飯山、行け」
「……救急車を呼ぶ準備はしておいてくださいね」
和茶は箸を闇鍋の中に入れた。……何か、柔らかい物を掴んでしまった。正直に言うと気持ち悪かった。が、しかし、闇鍋のルール上、食べなくてはいけない。和茶は覚悟を決めて、箸で掴んだ物を口にした。もしゃ、もしゃ。弾力がある。甘い。何だろう、と思いつつ、それを食べ切る。和茶の予想だと……こんにゃくだ。
甘いこんにゃくなんて初めて食べた。甘いスープが染み込んでいたのだろう。しかし、闇鍋に寄せ鍋の具を入れるナイスマンは誰だろう。和茶の次は、一香が食べることになった。頼むから毒性のある物には当たってほしくない。一香が箸を闇鍋の中に入れる。また、かちゃ、という音がした。殻付きの、貝だろうか。和茶の心臓は煩い。
「一香、大丈夫か?」
「んー……殻付きのホタテっぽい」
「おいおい、誰だよ、魚介類なんてまともなもの入れたの」
まともなものを入れる人間がいなきゃ、参加者全員、食中毒でピーポーピーポーだ。デッド・ハイツ食中毒事件だ。万が一、何かあったら主犯は本間のせいにしてやる。和茶がそんなことを考えているうちに、本間が食べる番になった。本間は何か重たい物に当たったらしい。箸で持ち上がらない。いよいよ、アタリ、か?




