おまけ③ 『梅ちゃんは接客が上手え』
二人目の助手、改め従業員が加わったお悩み相談所。
本日はそんな期待の新人梅ちゃんがお客さんとお話をしている模様です。
「あんた若いのに偉いねえ……」
「え、あ、はい。まだ働きたてだけど……」
「うちの孫なんてねぇ、学校以外は家でぐうたら。あんたを見習って欲しいもんじゃ」
「は、はあ……」
世間話を繰り出すお婆ちゃんに対して、何だかぎこちない返事を返す梅ちゃん。
しかしそれでもお婆ちゃんは大喜びで話を続けます。
「この前なんて、お金が足りないから振り込んでって言ってきたというのに、お礼の一つもなくてな」
「…………ん?」
「しかもその額が何とうん十万! わしゃあびっくりしてしまったぞ」
「いやあんたそれ詐欺よ!」
思わぬところで被害者の声を聞き、声を荒げます。
しかしお婆ちゃんは焦っておらず、
「詐欺? 黒いドラマのことか?」
「いや合ってるといえば合ってるけども! そっちじゃないわよっ! どうせ——ばあちゃんオレオレ、オレだよ。とか何とか最初に言ってきたんでしょ!?」
「どうじゃったかなぁ……。あ、そうじゃそうじゃ。オレオだよオレオと言っておったかのう」
「おつかいか! 自分で買ってきなさいよ!」
なんと、詐欺師は変化球の使い手だったようです。
割と常識人だと自負している梅ちゃんは、いつの間にか席を立ってツッコミを入れるくらいには緊張を忘れて、お婆ちゃんの話に向き合っていました。
「————」
「————っ!!」
そして、それを店の奥から見つめる咲ちゃんと響子さん。
「んぐ……さくめちゃんってお客さんの相手上手いんだね」
咲ちゃんはココアを飲みつつ、お皿いっぱいのココアパウンドケーキと対面していました。
「あ、咲ちゃん。食べながら喋ってはいけませんよ」
ココア島に在住していそうな咲ちゃんに対して、コーヒー片手にあらあらしている響子さん。
「ふぇあっ、ごめんなさい」
「よんろくさんのダブルプレーです」
「ダブルプレー?」
「スリーアウトチェンジです。ところで咲ちゃん、パウンドケーキの味はどうかしら?」
特に依頼もない今日、二人は梅ちゃんの初陣を見守りつつ、以前交わした約束を叶えていました。
今度のお客さんの対応がちゃんと出来たらココアパウンドケーキを作る……というものでしたが、梅ちゃんを相手に無事クエストクリアしたのですから。
「もっちろん、美味しいよっ!」
「ふふっ、それは良かった」
「あとでさくめちゃんにも分けてあげようかな……あぁ、でもそうしたら私の分がっ! でもでも、これ美味しいし頑張ってるから分けてあげたい……うぅ」
「心配しなくとも、ちゃんと梅ちゃんの分も作っていますよ。ごほうび、ということなので咲ちゃんの方が大きいのだけれど……」
そう言い、甘い香りが漂う室内の端っこ、トースターを指差します。
「わぁぁ、ありがとう響子さん! さくめちゃんには何だか申し訳ないけど、私は私のをお腹いーっぱい食べちゃうね」
「ええ。もし足りなかったらおかわりも作りますからね」
さらっとカロリーが恐ろしいことになりそうなことを言ってのける二人ですが、気にしてはいけません。
甘いものは別腹です。咲ちゃんは足や腕、お腹といった部位にはお肉がつかない子なのです。
ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆
「…………で、あんた達はあたしがあのお婆ちゃんと話している間、ケーキパーティーしてたと」
「さくめちゃん、これ本当に美味しいんだよぉ」
ココア成分を体に取り込み、今にも溶けてしまいそうな笑顔を向ける咲ちゃん。
どこぞのゆうさんのようにのんびりしてしまっているようです。
「……分かったからその顔やめなさい、さっちゃん。色々と不安になるから」
「あらあら」
「あんたもあらあらしてないで働きなさいったら。一応、依頼も受けておいたから」
ふーと長くため息を吐く梅ちゃん。その手には何やら色々と書き込まれたノートがありますが——、
「ほぇぇ……何それぇ」
「やめなさいってば。……さっきのお婆ちゃんが依頼してくれたのよ。幼稚園児の孫娘の送迎と、孫のバイト先見つけ」
なんと梅ちゃん、有能でした。
開幕こそぎこちない会話を見せていましたが、ツッコミで素に戻ってからはテキパキと会話、仕事をこなしていたようです。
そんな梅ちゃんに響子さんはにこにこと笑んで挙手をしました。
「あら、じゃあ私はお孫さんのバイト先見つけをやろうかしら」
「ツテはあるの?」
「ええ。そのお孫さんに会ってみないと判断がつけられないけど……」
「そう。じゃあ送迎はあたしとさっちゃんで……ってこら! 寝るなさっちゃん!」
「…………」
「起きなさいったらー!」
ココアにやられた咲ちゃんをゆさゆさと揺らして起こそうとする梅ちゃんですが、残念なことに全く効果はなく、次に起きたのは数時間後の夕方。
こうして、華やかな初陣を飾った梅ちゃんが初日にして仕事の管理、割り振り役に就任することになったのは、この日の夜のことでした。




