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39人目 『奥ゆか賑やか騒がし店内』



 そうして始まった、相談所とは何ぞやという相談。

 何だかややこしい相談です。


 そんな本日のお客さんは黒髪目隠れ美人さんの藤宮紫さんと、赤の短髪でとても熱い女性の小松里祭さん。

 静かで熱い、そんなコンビのお二人なのです。


「————わおん、わおん」


「なるほど!」


 紫さんに全力で説明をしている横で、胡麻たんに説明を受ける祭さん。

 当然ですが、彼女は何も分かっておらず。


「祭さん……あの、そちらのお犬さんと話すのも程々にして、咲さんたちの話を聞きませんか……?」


 そんな祭さんを心配して、紫さんが声をかけますが、


「大丈夫です、紫ちゃん! 相談がココアでパスタを解決するんですよね!」


「いや、もはや原型留めてないわよ。ちゃんと話し聞きなさいよ」


「ココアの相談……?」


「さっちゃんも本気にしない!」


 話を聞いているようでごちゃごちゃの祭さんに、ツッコミが大忙しな梅ちゃん。苦労が偲ばれます。


 さらにはおずおずと挙手する人が現れ、今度は何かと梅ちゃんが口を開こうとしますが、


「ココアのお代わり……いただいてもよろしいでしょうか……」


「あ、うん…………」


 紫さんにはツッコミが入らず、ほっと胸をなでおろすのでした。



ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆



「——っていう感じでね、犬の散歩をしたり、一日家庭教師をしたり、ココア作ってたりしてるんだ」


「あとはいちごパスタとかココアパスタとか作ったり、占いしたり……って、改めて相談所が何か考えさせられるわね……」


「なるほど、この相談所は色々なされているんですね……」


「————わおん」


 そうして、ざっくりではありますが相談所について語った咲ちゃんと梅ちゃん。

 それに対し、紫さんが同情し、胡麻たんが「分かってくれるか」と何度も頷いて——いるかのように頭を揺らして。


「しかし、楽しそう…………いえ、楽しいですね。この相談所は」


「前に紫さんは一日体験相談所したもんね。あの日は少し忙しかったけど……うん、楽しいよねぇ」


 だけど、大変なことばかりではないのです。

 二人が言うように、楽しいこともちゃんとあるのです。


「ココアスパゲティが美味しいって言ってもらえた時とか」


 咲ちゃんがパッと思い浮かぶのはココアのことですが。

 そんな咲ちゃんに梅ちゃんは「もう」と軽くため息を吐くと、


「他にもっとあるでしょ。ほら、お客さんの笑顔が見れて嬉しいとか、ありがとうって言ってもらえる瞬間とか……」


「あ、さくめちゃんがデレた」


「デレてないわよ!」


「なんかすごくデレてますね!」


「しつこい!」


 時々見せるデレの姿を今ここで。

 二人がかりでデレデレだと言われ、顔を赤くしてぷるぷると震えながら。


 そして、そんなこともあって、


「…………ふふっ」


 三人を見ていた紫さんが、思わず笑い声をこぼします。

 とても、幸せそうに。


「本当に……良いところ、なんですね」


「うん! 毎日が楽しくてね、楽しみなんだよ」


「なるほど……。それでは……」


 だから紫さんは、すぅっと息を吸って、


「——響子さん、という方はいつ頃来られるのでしょう?」



ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆



 そうして、相談を終えた店内には再びのティータイムが訪れます。

 三人によるココアの軍勢と、梅ちゃんのミルクティーのぶつかり合いです。


「紫ちゃん、残念でしたけど、また次がありますよ!」


「……そう、ですね。また訪れた際にお話をしてみようと思います……」


「あたしたちが話しておくっていうのはダメなわけ?」


「直接話してみたい、と思う自分がいまして……。バイトの志望ですから……」


 紫さんが以前咲ちゃんに誘われた、相談所のアルバイト。

 体験やお話を通して受けることを決意した紫さんでしたが、本日は響子さんがいないということで断念。


 しかし、今度来た時にはと咲ちゃんと握手をし、約束をします。


「あたしの時はさっちゃんが頼んだら、すぐにオーケーが帰ってきたけど……ま、紫さんがそういうのなら仕方ないわよね」


「あ、ついでに私もどうですか!?」


「たまにならいいわよ。毎日はきついけど」


「ツッコミ疲れだね……!」


 祭さんまで従業員さんになれるかどうかはともかくとして。

 咲ちゃんはすっとココアを口に運び、二度三度ごくごくと飲むと、


「……相談所も色々と————ぬいぐるみとか、占いグッズとか増えたけど、もっと増えるのかなぁ」


 なんてぼんやりと一言。


「あとさっちゃんの好きなココアもね。……ま、増えるでしょ。さっちゃんが作った折り紙とかも増え続けてるし」


「じゃあ私も何か持って来ましょう! 冷蔵庫とかどうでしょう!」


「でかい! あといらないわよ!」


 少しずつ増えていった小物も、置物も。

 今ではすっかりかなりのスペースを奪っているくらいの量になっているのです。そんなところへ冷蔵庫を置いたら、胡麻たんが涙目になります。


 とはいえ、増えたのはそれだけではありません。


「……あ、それではピアノやバイオリンといった楽器はどうでしょう……」


「いや、それも……案がいいかもしれないわね」


「さくめちゃん弾けるの?」


「……いや、弾けないけど」


「あ、私弾けますよ!」


 元気な声と、時々飛び交うツッコミの声。

 いつの間にやらそれは相談所に定着していたのですから。


「あ、でもそれも」


「……そうですね。まずは…………」


 咲ちゃんの思い出したかのような言葉に、紫さんがふふっと笑みをを浮かべて頷きます。


「まずは、従業員になってから、ですね」


 それから紫さんが相談所の従業員さんになるのは、ちょっとだけ後のお話です。

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