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おまけ17 『王子様とお姫様と、占い師さん』



 今にも雨が降りそうな、灰色の空。

 そんな中でも変わらないものと、変わらない人はいるのです。


「どうも、占い師です」


「あ、ココア占い師だよ」


 向かい合った占い師と占い師。

 彼女たちの瞳には占いへかける情熱の炎がこもっており、


「……えっとー、二人はどういう関係なワケ?」


「ふふ、占い師ですよぉ、めぐさん」


 そんな二人に戸惑い、あるいは慣れた調子で笑うめぐさんと真姫ちゃん。

 相談所への慣れの差がはっきりと現れていました。


「……遊佐ちゃん。今日という今日は決着を決めますよ」


「……うん。私もココア飲んだり、あと飲んだりして備えてたから……負けないような気がする!」


「あ、あらあら」


 全然現れていませんでした。

 響子さんのあらあらとは違い、一体この二人は何を言っているのだろう、そんなあらあらを真姫ちゃんが見せつつ。


 そうして占い師二人組は、真姫ちゃんとめぐさんをやや置いてけぼりにしながらも、


「さあ占いの時です、遊佐ちゃん。この星井ルナこと星井月子との!」


 なんだかよくわからない、占い勝負を始めるのでした。



ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆



「う、占いパワー?」


「ええ、そうです。占いをする時に必要なエネルギーでして、私や咲ちゃんはもちろん、響子ちゃんにも……」


「そう、なんだ……。まきちは分かった?」


「そうですねぇ、私は少しだけなら。あ、前に咲さんたちが話していたんですよぉ」


「え、じゃあうちだけなの? 分かってないのって」


 唐突な占い勝負を終えて、次に始まったのは占い解説。

 なんだかよくわからない顔をしているのはめぐさんだけですが、真姫ちゃんはやや相談所に馴染みすぎてしまったのです。だから理解出来るのも、不思議ではなくて。


「自分がおかしいんじゃないかって思うやつだよね、これ……」


 梅ちゃんというツッコミがいない以上、頭を悩まされるのはめぐさんだけ。

 大丈夫でしょうか。


「お待たせ、お茶入れてきたよー」


 そんな中、にこにこ笑顔で飲み物を持ってくる咲ちゃん。

 占い談義が熱を帯びてきたところだったので、彼女を見て、めぐさんがほっと息を吐いたのは内緒です。


 月子さんにはコーヒーを、真姫ちゃんにはミルクティーを、めぐさんにはフラペチーノを渡したところで、咲ちゃんもようやくココアとご対面です。


「この一杯のために生きてるって感じがする……」


「咲さん、一杯じゃ寂しくないですかぁ? もっと飲んだ方が幸せですよぉ」


「確かに……!」


「……いや、多分ツッコむのはそこじゃないと思うな、うち」


 二人きりの時はめぐさんにデレデレな真姫ちゃんも、今この時はゆるゆると。

 変わった一面を見た、というのがめぐさんの率直な感想なんだそう。口には出しませんが。


「それで、えーと。今日二人はどういう相談?」


 ともあれ、困ったり困らされたりをしつつも咲ちゃんは仕事をしっかりこなすのです。

 本日のお客さんであるめぐさんと真姫ちゃんに向かってそうたずねると、


「うちらは遊びに来たっていうのもあるけど……ね、まきち?」


「そうですねぇ、めぐさん。ふふっ」


 何やら意味深な視線を交わし、企むように笑います。

 一体どういうことだろう、なんて咲ちゃんが小首を傾げると、めぐさんはこほんと咳をして、言いました。


「せっかくだし……占いとかどうかなーって。ダメ?」


 どうやら隣の真姫ちゃんも、同じ考えのようで。


「…………ほう?」


 元祖占い師月子さんが、それにピクリと眉を動かして。



ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆



「この水晶を使って占うわけですが……何を占いましょう?」


 そんなこんなで始まった水晶占い。本日の占い師は星井ルナこと星井月子さんでお送りしています。


 問いかけられためぐさんは、ちらりと真姫ちゃんに視線をやると、


「んー、まきちは何か占って欲しいことある?」


「私とめぐさんの仲でしょうか」


「分かりました!」


「あ、分かっちゃうんだ……」


 やっぱりめぐさん大好きな真姫ちゃんに複雑な思いを抱き、続けて月子さんに困惑しつつ。


「それじゃ、月子さん。お願いしま——」


「あ、ルナです」


「え、でも」


「ルナです」


 誰もルナとは呼ばないものの、星井ルナを自称する月子さんに改めてお願いをし、とうとう占いが始まりました。誰もルナと呼んでいませんが。


「むむ、む……」


 月子さんは水晶玉にむむっと念を送り、何かを読み取るように手をかざします。占い電波を受信できているかはともかく。


「月子さん、何か見えた?」


「んんん……もう少しです、遊佐ちゃん。この甘いような不思議な、そうでもないような辛いような…………」


 なんともよくわからない、アバウトな言葉が漏れており、それにめぐさんが「大丈夫かな」と心配して呟きつつ。

 そうして出たのは、


「————今後も良好、ですね」


「……なるほど」


 喜ぶべきなのか、そうでないのか。

 コメントのしづらい占い結果が、カッと目を見開いた月子さんの口から飛び出しました。二人はなるほどした後何も言えないでいますが。


「二人とも、どうだった?」


「あ、えーと……。アバウト過ぎない?」


「そうですねえ、私も……」


「え、ダメでしたか!?」


 咲ちゃんが訪ねてみれば、アバウトさに困ったような笑いを浮かべる二人。元祖占い師さんの敗北の瞬間です。


「い、いえまだです! 咲ちゃん、ここで決着をつけましょう!」


 と思いきや、占い師の意地があるのでしょう。先ほど見せた勝負をもう一度、咲ちゃんに対して申し込みます。


 咲ちゃんもまたそれに頷いて、


「そんなに占っても結果は変わらないような気がするけど……やろっか、月子さん!」


 二人揃って、元気良く。


 そんな彼女たちにめぐさんと真姫ちゃんが顔を見合わせて、笑って。

 それから数時間の間、二人の仲が占われたそうです。

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