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27人目 『小松里祭さんは祭のごとき賑やか人』



「————わおん」


「おお! 何ですかこのわんちゃん!」


 空が曇っていても、相談所には元気な声が響きます。

 けれど今日は咲ちゃんとも梅ちゃんとも、響子さんとも違う声で、


「なんかもうあれですね! 危険が危ないくらい可愛いですね!」


「胡麻たんよ。あとそれ意味同じよ。危険重ねてどうすんのよ、大事件じゃない」


「胡麻たん人気だなぁ……」


 梅ちゃんに連続ツッコミをされ、咲ちゃんにぼんやりと見つめられた、なんかもうあれな女の子、本日のお客さん()松里(まつり)(まつり)さんです。


 燃え上がるような赤毛の短髪とTシャツという何ともラフなお方。

 身長はそこまで高くもなく、低くもなく。けれど彼女の周りは気温が二度くらい上がる……そんな情熱を身に纏う祭さんに、咲ちゃんは問います。


「……あ、祭さんは今日どういう相談で?」


 それに対して祭さんは、にっこにこの笑顔で元気よく一言。


「分かりません!」


 なんかもうあれでした。



ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆



 そんなこんなで始まりました、相談が分からないという相談。

 どういうことでしょうか。


「こちらココアパスタになります」


「ありがとうございます!」


「元気ね……」


 分からないことを分かろうとして頭を抱える梅ちゃんでしたが、他二人はとっても元気です。


 開発したばかりのココアパスタが注文されてカッと目を見開く咲ちゃん、そしてそれを気にせず受け止める祭さん。それから、


「それでは! いただきま——」


「————わおん、わおん」


 修行の旅に出ていたため、初めて見るココアパスタに興奮し、祭さんの元へ引き寄せられていく胡麻たん。

 これがココアパスタの魔力です。


「おお! 胡麻ちゃんたん! 君も一緒に食べますか!?」


「————わおん」


「胡麻ちゃんたんって……多いわよ、削りなさいよ。いやあの人もたんちゃんって言ってるけども」


「ちゃんたんも一緒に食べますか!?」


「胡麻!」


 祭さんは相談どころか食事すらまともに進まない、ツッコミどころ満載でなんかもうあれです。

 魔力が悪い方向へ働きました。


 ともあれ、さすがに冷めてしまっては咲ちゃんが泣いてしまうかもしれないので、祭さんは一ぱくり。二ぱくり。次々とパスタを口に運んでいきます。


「…………どう?」


「ココアです!」


「それは誰でも分かるわよ」


 開発したと言ってもまだまだ甘い。ココアだけに。

 そう考える咲ちゃんが祭さんに問いかけてみれば、なんともとんちんかんな回答。


「ほら、祭さん。美味しいとか、ココアココアしてるとか、あとは……スウィーティーとか、ココアの宝箱とか?」


「スウィーティーだけやけに発音良いわね」


 咲ちゃんが代わりに例を出してみると、


「スパゲティというと塩系のイメージがあったんですけども! け、ど、も! 甘いのが意外でした! ココアも甘すぎず、あえて苦味を残すことで飽きずに食べられます! はい!」


 今までの発言に比べると、割としっかりした評価が祭さんから返ってきました。

 親指を立ててにっこにこしているあたり、相当気に入ったようで。


「じゃ、じゃあココアリストに入れるかな……?」


「なんですかそれ!? でもなんかもうあれです! ココア愛がどわーんって伝わってきました! だから多分大丈夫です!」


「どわーんってどんな効果音よ!」


 咲ちゃんから謎の単語がこぼれたり、祭さんがどわーんされたり。

 てんやわんやして祭さんの食事が終わると、


「相談は何か思い出した?」


 ようやく本題に戻ってきました。

 祭さんは時間にして約二秒、ぐうと唸ったかと思えば、


「分かりません!」


 食事を摂っても何も変わりませんでした。


「相談が分からない相談ってどう解決するのよ……」


「じゃあ相談を作りましょう!」


「これあんたの悩みよ!」


「今日のさくめちゃんはよよ星人……」


 紫さんとは色んな意味で真逆な祭さん。今日も相談所は賑やかです。


 とはいえ、さすがにそれで流していてはお悩み相談の仕事が全うできず。

 なので咲ちゃんがぼんやりと宙を眺めて、


「…………あ」


 何か、思いついたようです。



ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆



「——というわけで、ココア占いをやるよ」


「何を占うんですか!」


「あんたのこと以外ないでしょ、これあんたの相談よ」


 相談所の定番になっているとかなっていないとか、その道十数年も経っていない月子さんが注目しているココア占い。


 咲ちゃんが少し冷ましたココアを用意し、それを祭さんがグイッと飲んだ結果を見るものですが、


「熱いです!」


「冷ましたつもりだったんだけど……」


 見た目も心も雰囲気も、全てが情熱的な祭さんでも食べたり飲んだりするのは難しいようです。

 ですから、数分の時間をおいてようやく一気に飲み干して、


「やっぱり熱いです!」


「はい、じゃあ結果見るわよー」


 熱い、ただそれを熱く主張する祭さん。とっても熱い女性です。


 彼女からカップを受け取りつつ、咲ちゃんがその底を見てみると、


「…………これは」


 息を呑んで、信じられないと言った表情を浮かべます。

 しかしココア占いの何たるかを理解している咲ちゃん以外はその理由が分からず、首を傾げて。


 ですから梅ちゃんは問いかけました。


「…………何が見えたの?」


「……鳥さんのマーク」


「ここにいるのお犬さんですよ!」


 珍しく真面目な口調で話す二人ですが、やっぱり祭さんはなんかもうあれです。


「で、その意味は?」


「あ、うん。えっとね——」


 そうして咲ちゃんがゆっくりと口を開いて、


「仕事とかで余裕がないから、気分を入れ替えたほうがいい。って感じ!」


 何とも当たっているのかいないか、よく分からない結果。


 ですが、驚くことに祭さんはその結果に何度か頷いて、


「あ、それでした! それの相談、お願いします!


「いや、どれよ!」


 ようやく相談が始まるのでした。

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