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21人目 『友梨ちゃんは愛らしく』



 そんなこんなで、翌日のことです。


「こ、ここがゲームセンターですの……っ!?」


 瞳をキラキラと輝かせ、あちらこちらへ視線を向けるのは藍澤友梨ちゃん。

 ゲームセンターが初めてだという彼女は、咲ちゃん達と共に一般常識研修の真っ最中なのですが、


「あれ! あれは何ですの?」


「あれってどれよ……ああ、ゾンビをボコボコにするやつね」


 ココアを前にした咲ちゃんのごとく、興奮し歓喜の声を上げます。

 そして、それに感化される女の子も少なからずおり、


「友梨ちゃん! 早く行こ! 私あれやりたい、あれ!」


「そうですわね、あれをやりに行きましょう!」


 年齢差など忘れ、小学生のお嬢様とはしゃぐ高校生の咲ちゃん。

 体型はともかく、身長もさほど変わらない二人は息を揃えて駆け出して行きます。あれのために。


「ちょっ! 走ったら危ないわよ! 気をつけなさいったら!」


「ふふ。さくめさんはぁ、保護者さんみたいですねぇ」


 そんな咲ちゃん達を後ろから追いかけるのは、保護者の梅ちゃんと真姫ちゃんです。


 しかし、子ども二人の早さにはついていけず、ついに離された梅ちゃんはため息をつきつつ、


「姫ちゃん。悪いわね、子ども二人に付き合わせて」


「いえいえ、私は楽しいからいいんですよぉ」


 ゆっくりとしたペースで歩み始めました。


 子ども二人から離された梅ちゃん達は年相応で、道端に寝そべっている女子高校生と何ら変わらぬ様子。

 ゲームセンターに来たならばやはり、とプリクラを求め、


「…………姫ちゃん」


「はぁい」


「……ぬいぐるみ、取ってきてもいいかしら」


「いいですよぉ、私も付き合いますからぁ」


 求めることはありませんでした。

 結局それぞれにやりたいことをやる、そんな方向性で。



ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆



 しばらくして四人が合流し、一通りのことをやって帰宅したのは、太陽が真っ赤に燃ゆる夕方のことでした。


「————わおんわおんっ!」


「あー、それはダメよ。私のあずきちゃんよ。手出したら許さないわよ」


 各自得たものは多くありますが、その中でもひときわ目立つのが梅ちゃんでした。

 小さなぬいぐるみから大きなぬいぐるみ。動物から悪魔までありとあらゆる……とまではいきませんが、多くの戦利品を手にほくほくとしています。


「そういえば梅ちゃんってぬいぐるみ好きだったね」


「そうなんですかぁ。ああ、だから今日あんなに……」


「わたくしも少し頂いてしまいましたわ。……いえ、かなり大きなクマのぬいぐるみを」


 口々に梅ちゃんのことを述べていく三人。彼女らもまた、お菓子やプリクラ、ぬいぐるみなどなど様々なものを抱えていて。


 それらをまとめ、みんなが椅子に腰を下ろすと、


「それじゃ私お茶入れてくるね!」


 咲ちゃんがキッチンへぱたぱたと駆けていきます。とても元気が良く、まるでまだ先程の余韻が残っているかの様に。


 梅ちゃんはそんな彼女の背中を目だけで追いつつ、


「……元気ね」


 ため息交じりの独り言。

 腰を下ろしたことで、誰もの体に疲れが押し寄せているのです。それはあずきちゃんと命名された、お気に入りのぬいぐるみを手にする梅ちゃんであっても。


 だからなのでしょうか、


「おや……わたくし達はどうしてゲームセンターへ足を運んだのでしょうか?」


「そういえばそうですねぇ、私忘れてしまいましたぁ」


 大変です。記憶喪失が発生してしまいました。


 しかし、心配する必要はありません。こんな場面だからこそ役立つ、噂のツンデレツッコミガールがいます。

 紗倉梅ちゃん、彼女はゆっくりと口を開いて——、


「……あたしも覚えてないわ」


 共感をしました。

 残念です。ツッコミも今日ばかりは不調なようです。


 今日は目的などなくみんなで遊びに行った。三人はそうまとめようとしますが、


「おまたせっ! それじゃ一般常識研修振り返ろっか!」


 ただ一人。咲ちゃんだけが覚えていたのでした。



ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆



「友梨ちゃん、ゲームセンターどんな感じだった?」


 問いかけるのは、ココアを口に含む咲ちゃん。


 彼女は最初から最後まで、友梨ちゃん同様テンション高めでお送りしていましたが、他の三人に比べると疲れがあんまりない模様。

 ココアパワーなのでしょうか。


「そうですわね……楽しい、ところでしたわ。本当に」


「何か学べた?」


「ええ。わたくしもそうですが、誰かと共に一つのことで盛り上がれる。それが大変素晴らしいものなのだと実感致しましたの」


「うんうん。誰かと一緒に遊べるって、楽しいもんね」


 感慨深く語る友梨ちゃんに、えへへーと笑う咲ちゃん。

 彼女達がいい雰囲気になったところで、


「……でも、消費が半端じゃないわね」


「さくめさんもたくさん使ってましたもんねぇ」


 親御さんこと梅ちゃんと真姫ちゃんが現実を見ていました。

 体重ではありませんが、ある部分が軽くなったかと思えば、別の部分では重くなっているのです。


 そんな梅ちゃんですが、


「……まあ、でも」


「でも?」


「あたしも含めて楽しめた。それでいいわよね」


 咲ちゃんと友梨ちゃん二人を見て、そう呟くのでした。


「……そうですね。私もそう思いますぅ」


 それに、真姫ちゃんも共感して。



ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆



 そんなこんなで夜は訪れ、高校生三人組は悠里ちゃんをお家まで送っていました。


「友梨ちゃん、そういえば昨日のお花って誰にあげるものだったの?」


「ああ、あれはお父様に贈るものでしたの。誕生日が近かったので、早めにと」


「じゃあ、今日はさくめさんからもらったぬいぐるみもプレゼントするんでしょうかぁ」


「いえ、これは…………」


 一般常識を勉強中のお嬢様友梨ちゃん。

 彼女はプレゼントを贈るくらいには親子仲も良いようです。


 しかし真姫ちゃんの質問には言葉が詰まり、いくらか悩むと、


「これは……私のものですわ。梅さんからいただいたものですもの。毎日抱いて寝ますの」


 頬を染めて、恥じらいながら主張します。

 クマのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめながら。


「それだけ喜んでもらえたなら、あげた甲斐があるわね」


「さくめちゃんはお姉ちゃんだね」


「んな——っ!」


 ゲームセンターで夢中になって、幾つものぬいぐるみを狩った梅ちゃん。それの一部をプレゼントした彼女もまた、恥じらいながら喜んで。


「一般常識、ですかぁ……」


「学べて良かったよね、一般常識」


 友達が出来たり、遊んだり。そんな日々には楽しさがつきものです。

 咲ちゃん達にとってはもう、一般常識となっていることでしたが。

八人目のお客さん


なまえ :藍澤 友梨

ねんれい:11歳

しょく :小等部五年

しゅみ :お習い事、お話をすること

すき  :お甘いもの。お友達

きらい :お一人でいること

みため :お嬢様。お白金の長髪。お赤いフリフリのお服装。

     お身長は咲ちゃんより少しだけ低い。


ひとこと:ご機嫌麗しゅう、ですわ。

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