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18人目 『絢さんは怪しい』



 本日のお客さん古賀絢さん。

 彼女は由美さんを引き戻さんとしてどうしたものかと相談所を訪れたのですが——、


「ねね、響子さん」


「あら、どうしたんですか。咲ちゃん」


「響子さんは由美さんみたいにヤンキーやってたの?」


「あらあら、私は違いますよ」


「そうね。響はヤンキーじゃなくて……その協力者みたいなものかしら。ともかく、ずぅっとこんな感じだったわよ」


 元々の咲ちゃんと梅ちゃんに加え、響子さん。それから絢さんに引き戻されようとしていた由美さん。新たに二人が参戦しました。


「いやーマジですごかったんだぜ? そこらの奴をちぎっては食べちぎっては食べ……」


「イチゴ狩りみたいなことしてたんだね、響子さん達」


「いや食べてどうするのよ。投げなさいよ」


「あらあら、梅ちゃんはピッチャーがお好きなんですか?」


「いや、どちらかというとセ……って何の話よ、何の」


 これだけ人が多いと、話が脱線するのも当然といえば当然で、何やら球技の話になっていきます。

 ですが、それに不満を持つ人もちゃんとこの場にはいて、


「……で、アネキはいつ戻ってくるんスか?」


 古賀絢さん。彼女はヤンキーらしく睨みをきかせ、


「…………はぁ?」


「はひっ」


 由美さんの凄みに思わず怯えた声を出すのでした。



ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆



「えーと、まあつまりよ」


 そんなこんなで、どうしたものかと気を揉んでいた梅ちゃんは、事の成り行きを簡単に説明していました。

 響子さんや由美さんもそれに頷いて、


「今まではやることがあったけど、今はないってわけ」


「さすがですね、梅ちゃん」


「やるじゃない、梅ちゃん」


「なるほどなるほど……」


「いやなんでさっちゃんまで頷いてんのよ」


 咲ちゃんまで頷いていました。

 梅ちゃんが照れる余裕すら与えてくれないようです。


 ともあれ、説明を終えたところで、


「ワタシは戻らないわよ」


「えぇっ!? 何でっスかアネキ!」


 きっぱりと断る由美さん。

 それに絢さんが不満の声をあげますが、彼女にもちゃんとした理由がありました。


「そりゃワタシも仕事があるし、そもそももうそういうのは卒業したのよ。ねえ響?」


「あら、そうなんですか?」


「なんで把握してないのよ、なんで」


 彼女が同意を求めた結果、響子さんはあらあらうふふとすっとぼけて見せましたが。

 とはいえそれもまた、由美さんとの仲の良さゆえのものなのかもしれません。


「あれ。でもでも、そうしたら絢さん達のやることが……あれ?」


「どうしたのよ、さっちゃん」


 しかしその傍らで、咲ちゃんは唐突にあれあれあれれとし始めました。

 咲ちゃんはどうやら何かを思いついたようで、


「ねえ、私思ったんだけど……」


 一同が視線を咲ちゃんに向けます。

 それを受けた彼女は、それぞれの顔を順に見つめていくと頷き、目をきらーんと光らせて言いました。


「…………絢さんが相談所に来るっていうのは?」


「いえ、ダメです」


 言ってすぐに、響子さんに断られましたが。



ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆



「うーん、私いい考えだと思ったんだけどなぁ」


「アタシが響子姉さんの下で働くなんて考えたこともなかったな、さすが右腕!」


「まあ確かにワタシも驚いたわ。この子が働けるかどうかはともかくとして、咲ちゃんってやっぱり可愛いわねぇ……ひっく」


「前後の言葉に繋がりないじゃない。水飲みなさいよ水」


 咲ちゃんの提案にそれぞれが思うことを告げます。

 感心する絢さんに、咲ちゃんの頭を撫で繰り回す由美さん、そして彼女を止める梅ちゃん。

 彼女らはしばらくその雰囲気に和むと、


「……で? 実際のところ、どうして断ったのよ。ワタシがオススメするしないはともかくとして、響なら受け入れそうだと思ったんだけど」


「あ、私も気になる」


「あらあら」


 最終的に行き着いたのはその疑問でした。

 絢さんが相談所の従業員になればやることが出来て、お悩みも解決に向かう……はずだったのですが。


 そんな疑問に響子さんは迷うことなく答えます。


「絢さん。由美さんが抜けてからもまだ組織に人はいるのでしょうか?」


「まあいるっスけど……みんな腑抜けちゃってて嫌なんスよ」


 しかしそれに対して絢さんは子どものように何度も何度も不満を口にして。

 そう、彼女は来てからずっと、変わらずこんな調子でした。

 元気だったヤンキーがしょぼくれたヤンキーに。これでは最初のかっこよさのかけらもありません。


 ですから響子さんはにこにこと微笑んで、


「それなら決まりですね。絢さんも組織の皆さんも、まずは働いてみましょう」


 不思議な提案をするのでした。



ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆



 しばらくして由美さんと絢さんが帰り、残ったのは三人だけです。

 そんな中、咲ちゃんはココアを飲んで一服しつつ、


「ねえねえ、響子さん。どうしてアルバイト探すことになったの?」


「そうですねえ……咲ちゃんと梅ちゃんはお仕事、楽しいですか?」


「楽しいよっ!」


 ココアをこぼしそうな勢いで答える咲ちゃん。

 続けて梅ちゃんも、


「もう、危ないわよ。……まあ、あたしも楽しいけど。でもそれとこれと何の関係があるの?」


 やや照れつつ答えました。

 えへへーと笑う咲ちゃんに手を繋がれながら。


 そんな光景にあらあらし、響子さんは言います。


「二人のように楽しいと思う何か、それを絢さんや他の子達も見つけられるように、ですよ。もちろん絢さんがここに来るのも悪くはないのだけれど……」


「それだとずるみたいになっちゃう……みたいな?」


「ええ、そうです。さすが咲ちゃん」


 ココアパワーが咲ちゃんの頭をフル回転させたようで、梅ちゃんですら言えなかった先の答えをすんなり答えてしまいました。


 そんなこんなで、


「じゃあじゃあ、次に絢さんが来る時は何か変わってるかな? ココアに興味持ってるとか!」


「いや、それ興味の範囲が狭すぎるわよ」


「あらあら」


 咲ちゃんと梅ちゃんは改めて相談所の仕事を楽しいと実感して、響子さんはあらあらとして。

 しょぼくれた顔などどこにもなく、元気なままなのでした。



七人目のお客さん


なまえ :古賀 絢

ねんれい:18歳

しょく :高校三年生

しゅみ :ツーリング、バイク、音楽鑑賞

すき  :激甘なもの、超かっこいいもの、由美さん、響子さん

きらい :腑抜けたりたるんでること

みため :ヤンキー。金髪

     身長はゆうさんと同じくらいで、響子さんほど高くはない。

     スカートが短かったり、タバコのような飴を舐めてるのでヤンキー。

     いつも睨みをきかせてるのでヤンキー。


ひとこと:アタシの夢? アネキみたいな超かっこいい女になることだな

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