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14人目 『王子様のデート計画』



 先日は初デートのために、ということで、咲ちゃん達はお弁当の計画を練りました。


「でね、さくめちゃんと真姫ちゃん、三人でお弁当作ってたんだ」


「それは楽しそうですね。私も参加したかったのだけれど……仕方ありませんね」


 翌日の練習も上手くいったようで、ほくほく顔の咲ちゃん。

 それに対しどこか寂しげな表情を響子さんが見せたので、


「あ、じゃあ今度お弁当パーティーとかどうかな? 響子さんのお弁当……ああっ、でもココアフルコースも久々に見たいし、どうしよう響子さん!?」


「咲ちゃん、落ち着いてください」


 お忙しい咲ちゃんに、響子さんがそっとココアを用意します。


「……ねえねえ響子さん、今思ったんだけど」


「どうしたんですか、咲ちゃん」


 差し出されたココアをあつつと飲みつつ、頭が冴えたらしい咲ちゃんは言います。


「前もこんなことあった気がするんだ」


「デジャヴ、ですね。でも咲ちゃんはいつもココアを飲んでいますから、あながちそうとも言えず——」


「んんっと、そうじゃなくて……なんて言うんだろう」


「そうですねぇ、お腹が減った、でしょうか?」


 頭を抱える咲ちゃんに対し、響子さんはもうお昼時だと口にします。

 ココアばかり飲んでいるからといってお腹は空くものです。

 なので響子さんの言葉に納得しかけ——、


「確かに言われてみれば……じゃなくて、ええっと」


 違いました。


 しかしそんな咲ちゃんの疑問に答えてくれる、かっこいいお姉さんがいます。

 それは、


「——こんにちはー」


 白金色に染められたポニーテールを揺らすギャル。

 彼女は目を丸くする咲ちゃんを見て、


「また相談しに来たよ、さっきー☆」


 ギャルピースを決めるのでした。


 本日のお客さんは、森崎めぐさんです。



ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆ ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆



「あれれ、さっきー。今日めうめうはー?」


 かっこいいギャルお姉さんこと森崎めぐさん。


 彼女は以前にも相談所を訪れたことがあります。

 その際には真姫ちゃんから告白されたのでどうしたものかと悩んでいたのですが、響子さんの意見もあってしばらくはお互いを知る、という形に落ち着きました。


 今回は初めてのデートもするということで、順調に見えるのですが、一体何のお悩みなのでしょうか。


「さくめちゃんなら、えっと……どこ行ったんだっけ、響子さん」


「山へ芝刈りに行きましたよ」


「じゃあ依頼人さんは川に洗濯へ行ったんだね」


「えっ、何その昔話」


 これでは梅ちゃんがおじいさんになってしまいますが、どうやら芝刈りは本当のようです。

 その事実にめぐさんも思わず動揺しますが、


「それで、今回はどのようなお悩みを抱えていらっしゃったのでしょうか?」


 優しげな雰囲気を醸し出しつつ、響子さんが彼女に問いかけます。

 対してめぐさんはというと、


「それが……えっと、今度うちらデート行くんだよね。あ、まきちとね」


「あらあら」


 どこかで耳にしたようなお話です。


「あれ、それって———」


「咲ちゃん、しー、ですよ」


 事態に気がついた咲ちゃんは思わず口に出してしまいそうになりますが、寸前で響子さんが止め、なんとか誤魔化します。


「んー? どったの?」


「いえ、何でもありません」


「いやでも、しーって」


「いえ、何でもありません」


「え、あぁ……うん」


 なんとか誤魔化します。


「ええっと、デートするのは知っ……分かったけど、おべ……何で悩んでるの?」


 咲ちゃんはなんとか誤魔化せていないように見えますが、問題ありません。


「あー、えっとね」


 いつか口に出してしまいそうな咲ちゃんの問いかけに、めぐさんは照れるように頰をかいて、言います。


「————デートプランって、どう立てたらいいのかな?」


「あら……」


 真姫ちゃんの話では、デートプランはめぐさんが決めておいてくれるとのことで、それを元に三人でお弁当を作成しました。

 めぐさんは体を動かすことやカラオケが好きですから、軽いものを中心として作ろう、と。


 ですがここに来て判明したのは、めぐさんがプランに困っているという重大な事実。

 ココアで頭の冴えた咲ちゃんは珍しく事態の危険を察して、


「響子さん、どうしよう」


 ひそひそと言葉を交わします。


「大丈夫です。任せてください」


 響子さんもひそひそと応じ、ひそひそ空間が生まれます。

 そんな空間を見つめてめぐさんは首を傾げますが、


「めぐさん。以前咲ちゃん達からお聞きしたのだけれど、体を動かしたりするのがお好きだとか?」


「……え、ああ、うん。ボーリングやダーツも好きだし、夏なんかだとよく泳ぎに行くかな」


 響子さんが何かを仕掛けるようで、めぐさんはそれに気づかず返答します。


「真姫ちゃんの方はどうでしょうか?」


「んー……まきちは嫌い、ってわけじゃないけど好きって感じでもないんだよねー。うちに付き合ってはくれるんだけどさ」


「あらあら、そうなんですか」


「そーそー。だからさ、ボーリングとかをデートの計画に入れるの難しいなーって思っちゃって」


 何やら計画とずれて行きそうな不穏な空気。

 そんな中で、咲ちゃんが言いました、


「あれれ、でも真姫ちゃんって、めぐさんのやることなら何でも喜んでついて行くんじゃないかな?」


「————」


 予め同じようなことを言おうとしていたのでしょうか、咲ちゃんの発言に響子さんが驚きつつ、


「そうですねぇ……、真姫ちゃんはめぐさんのことが好きですからね」


 補足するように、改めて理由を述べます。


「それは嬉しいけど……うーん。何だか申し訳ないなーって感じがするんだよね」


 しかしそれでも、めぐさんはまだ納得がいかない模様。

 なので響子さんは、


「じゃあ、真姫ちゃんが好きなものを加える、というのはどうでしょうか。真姫ちゃんの好きなものは……何だったでしょうか?」


「前にお菓子作りって言ってたよ。うちも学校でもらったし。さっきーも確か前にもらったっしょ?」


「うんっ、しっとりほわわーってしてて美味しかった!」


「では、甘いお菓子が食べられるお店なんて良いかもしれませんね」


 クッキーの味を思い出してほわわとする咲ちゃんの隣で、ぽんと手をつく響子さん。

 その言葉にめぐさんも目を輝かせて、


「それいいかも! 二人ともおすすめの店とか教えてくんない? うちもたまに行くけどさ、せっかくだから二人に聞きたいなっ」


 ノリノリでそれを決定、メモ帳を取り出します。


「そうですねぇ。私のオススメは————」


「あ、そこ私も知ってるっ! この前さくめちゃんと————」


「へー、いいじゃん! ————」


 そんなこんなで計画は着々と、楽しく決められて行くのでした。


 真姫ちゃんもめぐさんも、それぞれが相手のことを想い立てた計画。

 咲ちゃん達がそれら両方ともに深く関わっていることを、二人が知らないままに。

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