1人目 『日奈森ゆうさんはのんびり屋さん』
本日は2話投稿の予定ですー
良い子はお昼寝、ぽかぽか陽気な昼下がり。
そんな日には、のんびりと過ごしたくなるものです。
そのせいなのか、今日はとてものんびりとしたお客さんが来ています。
「え、ええっと、今響子さんはお買い物に行ってまして……!」
太陽のように輝く元気な女の子、咲ちゃん。
誰とでもフレンドリーな彼女も、お客さんにはこうやって敬語を使っています。
「あ、私日奈森ゆうと言いますー」
「へ?」
「どうしました?」
「あ、いえ……」
本日のお客さんは日奈森ゆうさん。
胸元まで伸びた暗い茶髪がふわふわとしていて、彼女の顔と同じくとてものんびりして見える女性です。
「なんと、響子さんは今お出かけ中なんですね」
「……あれ?」
残念。会話のテンポもとてものんびりしているみたいです。
彼女が入店してほんの数分だというのに、咲ちゃんの頭が既にパニック状態。
「んんっと、コーヒーか紅茶どっち飲む……みますか?」
「それではゆうはコーヒーでお願いす……します」
素が出てしまいそうになった咲ちゃんと、それを真似するゆうさん。
咲ちゃんの顔色がどんどん悪くなってきたように見えますが、大丈夫でしょうか。
「——よし、確かコーヒーは響子さんが作っておいてくれたのがあったから……」
しかしそれでもやる時はやる女の子です。
指差し確認をして、響子さんが朝方にコーヒーメーカーで作っていたコーヒーをカップに注ぎます。
……ちなみに、間違えて普段咲ちゃんが使っているカップに淹れてしまっていますが、現在目の前のことに手一杯な咲ちゃんですから、仕方ありませんね。
「お待たせしました」
ことっとゆうさんの前にカップを置く咲ちゃん。
ミルクや砂糖のことを全く聞いていませんでしたが、どうやらゆうさんは気にしないタイプなのか、
「ありがとうございますー」
にまっと笑ってそれを受け取りました。
それからゆっくりと口に含み、
「ぷはー。苦いですねー……」
「えっ」
しゅんとした表情を見せます。
どうやらゆうさんは気にするタイプだったようです。
「ご、ごめんなさいっ! 砂糖かミルク必要かな……ですか?」
「そうですねー。じゃあ頂いてもよろしいでしょうかー」
「すぐ入れるねっ!」
ゆうさんの言動とミスの連発で、ついに敬語まで忘れてしまった咲ちゃん。
「え、ええっと、砂糖がミルクでどこがあれで……?」
何とかキッチンへ向かいますが、頭が真っ白になっているみたいで、今にも泣き出してしまいそう。
「————」
そんな時でした。
訪問者を知らせる玄関の鈴がシャラシャラと鳴ります。
そしてそこから現れたのは……、
「——あらあら? お客さんですか?」
エコバッグを両手に抱えた響子さんでした。
「…………きょ」
「ほう?」
「響子さーんっ!!」
救世主の帰還に耐えきれなくなった咲ちゃんは、涙目うるうる飛び込み気味に響子さんに抱きつきます。
「あら……?」
当然響子さんは突然のことでエコバッグを落としてしまいますが、それでも涙でびしょびしょの咲ちゃんを放ってはおきませんでした。
「咲ちゃん。どうかしたんですか?」
「えっどね、あのね、話が混ざってもわもわしてっ。それでミスがね」
「……あのー、遊佐さんはひょっとして私のせいで泣いていらっしゃるのでしょうかー?」
先ほどまでのほわほわした雰囲気は何処へ行ったのでしょう。
不安げな表情を浮かべるゆうさんの問いかけに、響子さんの胸に顔を埋めながら首を振る咲ちゃん。
いきなり混沌な状況な響子さんですが、
「いえ、何分彼女はまだ働きたてですので、様々な要因が重なっただけだと思われます。ですから、お客さんが気にする必要はありませんよ」
にこっと笑って場を収めます。
もっともその場合は、
「そうですかー。あ、ゆうは日奈森ゆうと言いますー」
再び状況が混沌と化してしまうのですが。
「日奈森ゆうさん、ですね。私は維澄響子、と言います。不束者ですがよろしくお願いしますね」
「あ、ゆうは普段紅茶を飲んでいるのですが、コーヒーを飲む時はどうしても砂糖とミルクが必要でしてー」
「あらあら?」
「え?」
「…………ぐすっ」
本日のお客さんは響子さんに負けず劣らずマイペースなのんびり屋、日奈森ゆうさん。
助手になりたての咲ちゃんは、ミスが連発したこともあり、耐えきれなくなって泣き出してしまいましたが、一体大丈夫なのでしょうか……?
2人目の従業員
なまえ :遊佐 咲
ねんれい:15歳
たちば :助手
しゅみ :散歩、外で遊ぶ、スパを作る
すき :甘いもの全般、ココアパウンドケーキ、響子さん
きらい :怖いもの、難しいこと
みため :元気。茶色のポニテ。保護欲を掻き立てられる。
童顔で小柄だけど大きい。トランジスターグラマー。
ひとこと:えへへ、助手ですっ私!